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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者:
第4章 リストシア

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 レストランのドアの内側では、車が停まった段階で声がかけられていて慌ただしく迎える準備をしていた。

 魔導車を走らせることが出来る人は少ない。

 大魔導士それも世界でも数えるくらいしかいないのだ。

 たとえ見慣れない魔導車であったとしても、丁寧におもてなしをしなくてはならない。

 支配人は席の手配や通路の確認を急がせた。

 そこに追加の情報が入った。

 魔導車にはヒシ家の紋が入っているという。

 ヒシ家は、この世界の大魔導士たちの中でもトップの有力者だ。

 御大かそれとも息子のケイ閣下だろうか。

 支配人は背筋を伸ばして、接客の心づもりを始めた。

 

 「閣下、ご来店いただき…」

 「よい、今日はゆっくりと過ごしに来た。かしこまった挨拶は不要だ。」

 「はっ…かしこまりました。お席にご案内いたします。」



 飾りの多い燕尾服のような服を着た男性は、ひげを伸ばしくるりと巻いていた。

 それを見て、楓花は笑ってはいけないと言い聞かせる。

 漫画に出てきそうで面白いけれど、面白いなんて思ったらだめ。あの人は大真面目なのだろうから、笑ってはだめだと自分に言い聞かせる。

 

 豪華な造りのレストランだった。

 案内されたのは個室で、飾り棚は装飾がされている。

 テーブルの脚も椅子も細かな彫りが施されていて美しかった。

 

 楓花は初めて食べるこの世界の外食にわくわくしていた。

 どんな料理があるのかと妄想が膨らむ。建物がこれほどに立派なのであれば、料理も凝ったものだろう。

 

 席に着くとメニューが運ばれてきた。

 革張りの立派な装丁のメニュー表を開いた。

 中には写真のない文字だけが羅列されていた。

 

 オーク肉やウサギ肉の料理、ブラックベアー肉の料理まで様々に並んでいたけれど、ブラックベアーの料理は飛びぬけて高額だった。

 

 「まぁ、ブラックベアーって…」


 お高いのね…そう言おうと思ったのだけど、敬一郎が反応した。


 「楓花さん、せっかくですからブラックベアーにしましょう。ハーブで焼いた料理ですが、おいしいですよ。」

 「いえ…そんな…いいのですか?」

 「もちろんです。」

 「では、お言葉に甘えます。」


 敬一郎さんが、手慣れた様子で注文をしていた。

 しばらくして運ばれてきたのは、熱いお湯と何かの実だった。


 「楓花さん、これはリリカの実と言ってカボスのようなものです。ここでは、これを絞ってお湯で割って飲みます。」

 「へぇ…」

 「私が作ってもよろしいですか?」

 「はい、お願いします。」


 敬一郎さんは、指を動かした。

 手で絞るのではなく、指先を宙で動かしたのだ。

 リリカの実が浮き上がり、半分に割れてカップに果汁を落とした。それが別の皿に乗ると今度はポットが浮き上がりカップへとお湯を注ぐ。


 「え…すごいですね…」

 「ここでは、こういうことができます。」


 敬一郎さんが、得意気に笑うのでついかわいいと思ってしまう。

 敬一郎は、2つのカップに分けると、その1つに口を付けた。

 先に飲むのは毒見?それは、私がしなくてはいけないのでは?

 そう思っていると、楓花の前にカップがふわふわと飛んできて着地した。


 「飲んでみてください。このリリカは甘味が強いようで飲みやすいです。」

 「いただきます。」


 楓花はカップを持ち上げると柑橘系の香りがしてくる。

 少し酸味のあるお湯を飲んだ。

  

 「香りがよくてさっぱりしますね。」

 「お口に合ったようでよかった。これはこの町の名産品です。」

 「こういうのもいいですね。少し欲しいかも…。」

 「それでしたら、後で町を見てみましょう。」


 町の事を聞いているうちに、料理が運ばれてきた。

 ここの料理は、1度に出すスタイルのようだ。

 野菜の茹でた物と卵スープ、それからお肉のステーキだ。肉には香草らしきものがたくさんのっていた。それから丸いパンだ。少し灰色がかっていた。


 「これがここのパンですが、独特の香りがあるので苦手かもしれません。無理せずに食べられる物を食べてください。」

 「ありがとうございます。いただきます。」


 最初に茹で野菜を食べた。

 野菜のえぐみが強いようだが、掛けてあるリリカのドレッシングでごまかされていて食べやすくなっていた。

 スープは、普通の卵スープだった。ブイヨンが使われていて美味しい。

 ブラックベアーのお肉は香草の良い香りが強い脂を中和してくれていて食べやすい。しっかりとした味付けでとても食べ進んだ。


 「この味付けおいしいですね。」

 「それはよかった。ハーブの香りは大丈夫ですか?」

 「はい、美味しいです。ブラックベアーの脂の力強い感じが、かなり中和されている気がします。」

 「そうです。ブラックベアーはおいしいですが、脂の強さが少々強すぎる。ここのハーブの配合は素晴らしいと思っていたので、楓花さんのお口に合って安心しました。」

 

 次にパンを食べてみると、なんだか牧草地を歩いているような香りがした。

 パンも固くしっかりとしていた。膨らみ方が弱いようだ。こちらこそハーブを入れて焼いたら食べやすいのかもしれない。何が合うかな?ローズマリーとかバジルあたりだろうか?


 楓花が食べ終えると、敬一郎はまたリリカを絞ったお湯を入れてくれた。


読んでくださりありがとうございます。

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