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「楓花さん、来客なので少し席を外します。今、菓子を用意しますから、そのままお待ちください。」
「わかりました。」
敬一郎が部屋を出ると、楓花は緊張を解いた。
いや、敬一郎がいなくなっても、執事長はいるのだけれどね。
でもさすがにあんな圧は発していない。
メイドと騎士が部屋に入ってきた。
「すいません、お茶をいただけます?」
「はい、すぐにご用意いたします。」
楓花はお茶をもらうと、出された菓子を数個食べた。
それから、バックから出した本を読み始めた。
周囲を気にしないで時間をつぶすには、本を読むのが一番だった。
その頃の敬一郎は、別室に到着した者たちから、かなり詳細に聞き出し始めた。
しばらくして、楓花はメイドに連れていかれた部屋に、セイヤとクリスフォートがいて驚いた。
「あら、セイヤさんにクリスフォートさん、天龍の皆さんまで…こんにちは。」
「フーカ様、お久しぶりです。こちらにいらしたとは…」
「ごめんなさい。私のせいでこんなところに連れて来られたのね。」
天龍の5人も後ろにいたが、存在感が薄くなっていた。セイヤさんたちもなんだかひどく疲れた顔をしている。
「天龍のみなさんもごめんなさい。呼び出されたのね。」
「いえ、フーカさんが謝ることではない…」
「コホン」
敬一郎が咳払いをすると、皆が黙った。
「楓花さん、彼らには今まで通りお薬を下して構わないですよ。」
「本当に!?」
「はい、ただし初級だけです。他はいけません。」
「わかりました。」
「それから、天龍の方たちとも今まで通りで構いません。」
「よかった…。」
「ですが…」
「はい?」
「他については、後程お話ししましょう。」
「わかりました。」
「では、皆さん。楓花さんは我がヒシ家の大切な方です。今まで通りで構いませんが、情報が広がらないように最大の配慮を頼みますよ。」
「は!!」
楓花は、これから帰るという彼らに土産を持たせて見送った。
グリフォン隊に送ってもらった天龍の5人は、家に到着すると崩れ落ちた。
「ヒシ家の方だとは思っていたけど、閣下の奥様か何かじゃないのか…。」
「いや、そこまでではないと思うよ。距離感があった。」
「だが、貴族だろう?距離感のある夫婦なんていくらでもいるだろう?」
「そうだけどさ…」
3人の会話にハナとテンは興味がなかった。
2人は帰り際に渡された籠を開けたくて仕方がなかった。
だけど、これを開けるのはルーシーかケントだ。自分たちが開けるわけにはいかない。
「ねぇ、ルーシー早く開けようよ。」
ハナがルーシーの服を引っ張って強請る。
ルーシーは、ケントたちと目を合わせて笑った。
「そうね、何が入っているかな?」
「わぁ!サンドイッチ!」
ハナが大好きなサンドイッチが籠いっぱいに入っていた。
「いろいろある!見たことのないのもいっぱい!」
「沢山あるから、焦らないでも大丈夫よ。」
みんなで手を伸ばし、2つ3つと取っていく。
湯を沸かして、一緒に入っていたティーバックの紅茶を淹れた。
「うまい!この薄いのは肉だ!」
「こっちは鳥っぽいぞ。甘辛くてうまい。」
「卵サンドが一番おいしい!」
ワイワイと騒ぎながら、サンドイッチを食べた。
楓花さんはいつも何かの食べ物を持ってきてくれる。一緒にいる時にも作ってくれていた。貴族だとは思ったけれど、やはりだった。あんな大貴族の方か…それに、お城にいるからかいつもとは違い、きちんとした装いをしていた。豪華なレースのブラウスを着慣れている様子だった。
ケントは改めて認識してしまっていた。
楓花は、お風呂上りに敬一郎を待っていた。
夜に2人で話しがあるという。
ガードの確認のことだろう。
ノックの音がして、メイドが出た。
「楓花様、旦那様がお見えです。」
「入ってもらって…」
楓花は、椅子に座っていた。昨日と同じナイトドレスだがいいだろう。一応ショールもかけている。
「こんばんは、それでガードってどうやって確認をしますか?」
「剣を抜いて斬りかかるのもよいですが…危険ですので、鑑定をさせてください。」
「はぁ」
「ガードは腕輪だったとおっしゃっていましたね。」
「はい、金色のバックルでした。腕に嵌めて鏡で見ようと思ったらもう消えていて…」
「その…消えた物はそれだけですか?」
「いえ、ええっと…眼鏡もそうです。」
「眼鏡?」
「はい、黒縁の大きな眼鏡もかけたら消えました。」
「それでどうなりました?」
「近視なのに、こちらでは眼鏡なしでも見えるようになりました。それと物が何かと考えれば情報が見えるようになりました。」
「なるほど…鑑定ですね。」
敬一郎は、手に持っている鑑定ルーペを見た。
そんなものがあるなら、なぜ自分には残さなかったのかと少々考えてしまう。
「楓花さん、それでは情報を読み取らせてもらいます。」
「どうぞ。あっ体重とかスリーサイズはだめです。」
楓花さんにルーペを向けていても読み取れなかった。
敬一郎が、楓花に声をかけて許可を得ると、情報を映し始めた。
なんというガードの効力なのか。
橘楓花:年齢40歳、身長157cm体重非表示、BWH非表示
才能:分析・検査、神薬師、
スキル:癒しの手、弓手、ガードの腕輪S、鑑定眼鏡S、アイテムバック
称号:異界を通じる者、グリフォン女王の主
分析・検査は大和の仕事だからよいが、神薬師?それはこちらでのというのだろう。
それに、癒やし手と弓手…ガードの腕輪より先にあるということは、既に持っていたスキルだ。大和でもスキルがあるのか?
ガードと鑑定眼鏡がSというのは、どこまでできるのか?
「ガードSだそうです。どのくらいのものなのか…」
「へぇ…そうですか。」
ガードS:発動者の希望がない場合は、周囲の状況に応じて体表50㎝から1cmまでに展開する。本人が認めた場合には、0.0001㎜まで狭められる。
「0.0001mm!?」
0.0001㎜で展開した場合、触れ合う感覚はほぼそのままである。危険物および危険行為は完全に防御する。毒などが体内に入った場合には、速やかにガードで包みこみ体外排出を急ぐ。ただし、敵対行為や発動者に危険が及ぶ時には、自動的に安全な距離をとる。
「あの…0.0001㎜って何?」
「楓花さんが望めば、普段は1㎝から50㎝で展開しているガードが0.0001㎜まで狭めることができるそうです。」
「それって随分薄いのね~うすうすでさえ0.01㎜じゃない?」
うすうすって…おいおい…おっさんか?
そうですね~って私も思ったが、これは同意していいのか?
少々気まずい…。
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