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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者:
第3章 ヒシフォート

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14


 鳥小屋に戸はなく、出入り自由なようだ。

 グリフォンたちの前を通り見ていたが、気になった頭のグリフォンの前で楓花は足を止めた。


 「これは、最近主を亡くしまして。餌も食べないのです。」

 「そうなの?かわいそうに…餌をあげてもいいですか?」

 「どうぞ」


 その子は他の子と違って毛に艶がなく、元気もない。目に光がないので怖くなかった。

 楓花が1歩近づく、その子はこちらに気がついているが逃げる素振りはない。


 楓花は、バックの中からブラックベアーの心臓を取り出した。内臓肉なら食べるだろうか?

 袋を開けて口元へと差し出した。

 グリフォンは匂いを嗅ぐ仕草のあと、嘴で器用に心臓だけを摘み、上へ向いて口へ入れた。

 なるほどそう食べるのか。

 食べ終えたグリフォンは楓花を見た。

 視線を向けられた楓花だったが、不思議と怖くはなかった。


 「美味しかったの?心臓はもうないわ。肝も食べる?」


 楓花は声をかけながら、ブラックベアーの肝を取り出した。結構大きかったので楓花には重かったのだけれど、思いの他軽々と取り出せた。心臓と同じように差し出すと、グリフォンが食べた。

 食べ終えたグリフォンが近寄ってくると、頭を楓花の前へと差し出してきた。

 一瞬、周囲がざわついた。


 「楓花さん、天冠…その頭のとさかの根本を撫でてやってください。」

 「え?こう?」


 楓花はおそるおそる撫でてみる。以外にも毛は柔らかくふわふわとしていた。

 グリフォンは、楓花の体に頭を擦り付ける。


 「くすぐったいよっ」

 「楓花さん、この子に新しい名を与えてください。」

 「名前?」

 

 グリフォンは薄いピンク色をしていた。満開の桜のような薄いピンク色だ。


 「桜とか?」

 「サクラって名前はどう?」

 

 グリフォンの天冠が光り、光の輪が二人を包み上から下へと通して消えた。

 目の前に小さな笛が浮いている。


 「この笛は何?」

 「サクラが楓花さんを主と認めたのです。」

 「え?主?そんなの困るわ。私、お世話できないもの。」

 「それはご安心ください。こちらで世話をします。その笛は持っていてください。グリフォンは1000㎞くらいなら音は聞こえるそうですから、呼んでやってください。」

 「1000㎞も?」

 「はい、その日の風向きにもよりますが…そういわれています。」

 「わかりました。」

 「グリフォンは獰猛な部分もありますので、主以外とは触れ合いませんから気を付けてくださいね。」


 楓花は、サクラを撫でた。

 もふもふしていて気持ちがよい。


 

 敬一郎はものすごく緊張して連れてきていた。

 魔導士であるけれど、威圧感が足りない楓花だからグリフォン隊の一員というのは、立場の助けになるはずだ。

 一番おとなしい子を楓花に与えようと思ったものの、不安があった。

 グリフォンは獰猛で、気に入らなければ食べられてしまう。


 楓花が、この子の前で足を止めたのには驚いた。

 グリフォン隊のグリフォンの中でも最も獰猛で気性が荒い。

 餌をやってもいいかと言い始めたときには、少々戸惑っていた。だが、この子も襲う様子がなかったので許可を出した。

 まさかまた主を認めてくれるとは予想外だった。

 このサクラの主は御大だった。

 御大が亡くなり、こちらでは2年が過ぎていた。その間、まったく餌を食べていない。もう数日の命だと思っていた。

 それに…前と同じ名前だ。

 この子を見て、そう思うのも理解できるが…不思議な縁があるのだろう。


 

 

 「フーカ様、こちらをグリフォンの首にかけて貰えますか?」

 「これは?グリフォン隊の印です。これがあれば、フーカ様をお守りしやすくなります。」

 「そうなの?首にかければいいのね。」


 サクラともふもふしている楓花に、リハルドがピンク色の布を差し出した。盆の上に載っているそれを楓花は受け取る。

 騎士が持ってきてくれた足場を使い、首から下げた。すると不思議なことに背中には鞍が現れた。

 

 「鞍は見えますか?」

 「はい。」

 「飛ばなくていいので、一度乗ってみてください。」

 「ええっ!?」

 

 楓花は敬一郎の手を借りて鞍に座った。不思議なことに、立っているのに近い姿勢でも乗っていて安定した。


 「大丈夫そうですね。サクラとは会話ができるので、飛ぶときも会話をしてください。」

 「わかりました。」

 

 楓花は、すぐに鞍から降りた。

  

 「では、またね。サクラ。餌は食べてね。」


 楓花は、サクラともふもふしてから先ほどの部屋へ戻った。


 

 「さて、それでは…薬についての確認です。昨日使った2種類はわかりましたが、もう1種類は何ですか?」

 「軟膏です。例えば…あかぎれを治したり…」

 「あかぎれ?使っても?」

 「はい、どうぞ。」


 敬一郎が手袋を外した。

 結構荒れていた。


 「どうしたんです?」

 「これは…酸に触れてしまったのですよ。」

 「それだとあかぎれではないです。こちらを使ってください。」


 楓花は、中級軟膏を渡した。

 敬一郎がそれをひと掬い塗ると、みるみるうちに通常の肌に戻った。


 「なっ!?」

 「こちらは中級軟膏です。」

 「これらを売っているのですか?」

 「基本的に売っているのは初級です。」

 「なるほど…ですが、お持ちのポーションを使っていては、長くは続かないですよ。」

 「それなら大丈夫です。材料さえあれば作れるので…。」

 「!?」

 「材料を揃えるのは大変ですけどね…。」

 「作れるのですか…」

 「はい」

 「はぁ…なるほど…」

 「ですから、継続的にできますので心配はいらない…」

 「尚更心配になります!」

 「ええ!?どうして?」

 「いいですか?今、公に初級以上のポーションを作れるのは、王家所属の薬師と気難しくて人の田舎に籠っているのと2人だけです。」

 「たった2人!?」

 「そうです。王家所属の薬師は、まだ若く初級をマスターしたところで、師を失っています。ですから、公にまともに薬師となるのは1人だけです。」

 「まぁ…それなら、私もいれば少しは安心では?」

 「そうじゃない。供給としては安心かもしれませんが、あなたが狙われる。どこかに閉じ込められてポーションを作らされ続けるかもしれませんよ。」

 「それは嫌です。」

 「ですよね、ですから…今から関係者に口止めをしましょう。その上で表には、私を出してください。ヒシフォートクラレンスのケイがいると分かれば、例え王家でも手出しはできません。」

 「そうなの?それならぜひお願いします。」

 

 そこまで言ってから、でもそれでもし敬一郎が、利益を握るならどうしようかとも思う。様子を見て、ひどいようなら考えればいいか。



 「出かける時には必ずマントをつけてください。それと…そうか、この指輪を差し上げます。」

 「指輪?」

 「これはガードの指輪です。これがあればあなたを守れる。」

 「それなら大丈夫です。腕輪を付けたので…その消えましたが…。」

 「そうですか、では…申し訳ないが今夜確認させてもらってもいいか?」

 「夜?はぁ…いいですけど…?」

 

 「閣下、到着しました。」

 「わかった。」

 

 敬一郎は、立ち上がった。


読んでくださりありがとうございます。

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