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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者:
第3章 ヒシフォート

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 旦那様には強く否定されてしまった。

 だが、先ほどメイドから聞き出した内容を聞けば、考えも変わるだろう。


 「旦那様、メイドからの報告です。お客様は、美しいレースの下着を身に着け、ナイトドレスなる物を着て眠っていらっしゃるそうです。これは、旦那様をお待ちなのではありませんか?」

 「あのなぁ…。それはたぶん普通だ。あの人にとってレースの下着とか肌着とかは、どんなに豪華でも当たり前の事だろう。」

 「まさか…そんな事はありませんでしょう。」

 「いや、それがある。レースとか華やかな花柄とか…そんな物は何の合図にもならん。」

 「ですが、ドレスにあれほどのショールを身に着けていらっしゃった。しかも、旦那様に素手をお預けに…」

 「それも、気にしたらだめだ。あの人には、言葉での許可以外は、ただの勘違いにしかならん。」

 「そうでしょうか?」

 「それに、あの人は普段素手で過ごしているからな。驚かないように。」

 「はぁ…そうなのですか…。」

 「文化の違いだ。間違えないように。」


 「わかりました。それでは、薬についてはいかがなさるおつもりですか?リハルドと試したあの薬の効果は見たことのないほどでした。特にあの消毒薬なる物は、膿んだ患部を治せる薬など、聞いたこともございません。このままにしているのは危険です。」

 「そうだな。わかっている。楓花さんの行動に制限はかけたくないが、あれを放置することもできない。」






 翌朝、楓花は目を覚ますと着替えをする。

 レースの身ごろの淡いブルーのブラウスに紺色のスラックスだ。万が一のために、仕事着を入れてあってよかったと思ってしまう。もちろんウエストポーチもつけていた。

 手袋もいるのだろうか?

 楓花の持っている手袋は、日焼け防止用のものしかない。


 「ねぇ…手袋はした方がいいのですか?」


 部屋に入ってきたメイドに尋ねる。


 「そうですね。貴族は日常的に着けているものではあります。」

 「あなた貴族よね?なぜメイドを?」

 「私は…5女でして…子爵家といいましても、末子になると嫁ぐにも持参金の用意が出来ませんから、働きに出るのです。」

 「そういうものなの?」

 「はい…お恥ずかしいですが…」

 「あなたが、恥ずかしがることないでしょう。立派に働いていて素敵だわ。」

 「いえ、そんな…」


 会話をしながら、髪を高い場所で結んだ。


 「なんでもおひとりで出来るのですね…。」

 「ええ、まぁ…どうして?」


 楓花は髪を捩じり、髪留めでシニヨンを留めた。


 「そのような女性には会ったことがなくて…」

 「そうなの?では、貴方もどなたかに着替えを手伝ってもらっているの?」

 「はい。」

 「へぇ…」


 そうなのか、メイドさんでも着せ合いっこなのか。

 着にくい服の作りなのかもしれない。

 昔のフランスの華やかな頃のドレスは、背中を縫い留める物や、紐を掛けて編み上げる物があった。あのようなタイプだと一人では着替えられないだろう。


 メイドさんや騎士の方の髪を見ると、皆さんリボンで結んでいる。

 だけど、サテンのようなリボンでは滑りやすくてほどけてくるだろう。あれが好きなのか、それともゴム紐のような物がないのか…。


 「手を出してくださる?」

 「はい」


 楓花は出された手に予備のゴム紐を乗せた。お出かけ用の小さな花飾りがついている。

 

 「差し上げるわ。私、知らない事が多いので教えてくれて助かるの。」

 「そんな、それだけの事ですよ。よろしいのですか?」

 「ええ、もちろんです。これはかわいいから貴方に似合うと思うの。」


 楓花は、手袋をつけるとメイドの案内で食堂へと向かった。

 

 

 「ケイさん、おはようございます。」

 「楓花さん、おはようございます。眠れましたか?」

 「はい、おかげ様でぐっすりでした。」

 「それはよかった。後ほど昨日の部屋でいろいろと教えてください。」

 「はい、わかることであれば…。」

 「今日は執事長を同席させようと思うが、よろしいですか?」

 「構わないですよ。」


 食卓へ着くと、手袋を外して食事を始めた。


 「ケイさん、この辺りを治めていらっしゃるの?」

 「そうなりますね。この領はヒシフォートクラレンスでこの街がヒシフォートです。ヒシ家でこの辺りを治めて200年ほどになります。」

 「まぁ、歴史があるのね…。」

 「そうですねぇ…」

 「名物はありますか?美味しい物がいろいろとあるのでは?」

 「名物ですか…例えば、その果物…マンゴリンと言いまして、とげとげとしているのですが、収穫して熟成させた物は刺さることもなくなるので簡単に剥いて食べられます。」

 「マンゴリン…ですね。楽しみです。」

 「あとは…そうですね…ウサギ肉でしょうか。野生ですが、数年に一度は大量発生し村を壊滅させることもあります。」

 「まぁ、怖いわね。」

 「楓花さんが、そういいますか?」

 「あれは…たまたまだもの。私が単体なら無理ですよ。」

 「きっと大丈夫ですよ。あとはそうですね…虹湖のトラウトもかなり美味しいのですが…なかなか…。」

 「虹湖のトラウトですか?それは美味しいですね~風景も美しいですし、養殖できるといいですよね。」

 「養殖ですか?ここはそれなりに山に囲まれていますが…。」

 「富士宮でも虹鱒は養殖しているので、できると思いますけど…。」

 「富士宮ですか…。」

 「はい、お水が良ければ…。」

 「ふむ…考えてみましょう。」




 メイドは、楓花の食事中も後ろに控えていた。

 興味津々なため、耳もそばだてて聞いていた。

 お家の歴史に興味あるなんて、楓花様は前向きに考えていらっしゃるわ。なのに、旦那様がそっけない。

 領地の名物を聞くなんてやはり興味がおありに…でも財産目当てかしら?楓花様のご様子では、お金はいくらあっても足りないよね。

 あれ?

 話しがなんだかおかしな方に…旦那様なんてことを言うの!

 女性に向かってウサギの大群が来ても平気だなんて、なんて恐ろしいことを!

 ああ…でも待って…ようしょく?

 出来る?出来ないって何か事業のお話し?なぜ食事中にそんな込み入ったお話しに?

 メイドは聞こえてくる会話を聞いて、全てを拡大解釈して理解していく。食事中の何気ない会話には聞こえていなかった。そして、後ろに控えている執事や騎士たちもまた、似たようなものだった。





読んでくださりありがとうございます。

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