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見慣れない容器を目の前にした敬一郎たちは、楓花に尋ねた。
「失礼、鑑定してもいいでしょうか?」
「どうぞ。」
『中級消毒薬:吹きかけたところの傷を治す。膿んでいる傷もゆっくり治せる。飲むのは毒である。』
『中級癒し薬:飲むと軽い症状を治す。1本飲むと傷を最大6時間かけて修復する。』
とんでもない効果だ。
聞いた事のない薬だった。
「これはどうしたのですか?」
「私が作りました。作るというか加工しました。混ぜて作ったのよ。」
「これを?」
「はい…ダメでした?」
「いえ、ダメというか…」
敬一郎は、聞いたこともないポーションの使い方に戸惑っていた。
そのまま使うものであり、他の物と混ぜてしまっては、効果がどうなるのか分かったものではない。それを混ぜる?どこからそんな発想を?
しかも、ポーションそのものよりも治療の幅が広い。特に消毒薬は、ポーションの欠点を補い完璧なものにしていた。目や粘膜には使えないが、これはこの世界では、革命的ではないのか?
「閣下、報告を続けてもよろしいでしょうか?」
「ああ、そうだな。」
「襲撃者たちは結界に阻まれたために、外に押し出されるまでは襲撃者だと気が付かなかったようです。いつもの護衛だったそうです。」
「ほぅ…」
「そうですか…」
「楓花さん、結界の条件はありますか?」
「ええ、私の許可があること。ただし…。」
「ただし?」
「許可があっても、私に害意があれば弾かれます。」
「なるほど…。何か言っていたか?」
「はい。その…魔導士は、使えるから捕獲推奨との伝令文書を持っていました。渡される前に押さえられました。」
「なるほど…」
「こちらになります。」
敬一郎はそれを受け取り、目を走らせると目にぐっと力が入った。
禄な内容ではなさそうだ。
薬を作らせる道具として使えるとか、料理をさせればよいとか書いていたのかな?その程度ならまぁ普通にやってしまいそうだけど…自由がないのは嫌だ。
「わかった。」
敬一郎はその紙をリハルドへ返した。
それから、敬一郎の視線がメイドへ向けられた。
「お部屋の準備は整っております。」
「そうか、それはよい。楓花さん、お疲れでしょうから部屋を用意しました。まだ話さなくてはならないことが山積みですので、今日のところはお休みください。」
「えっと…そんな申し訳ないです。私帰ります。」
「だめです。明日の朝、お話ししましょう。」
「わかりました。」
敬一郎の迫力にのまざるを得なかった。
「楓花さん、こちらのお薬は、いただいてもよろしいでしょうか?」
「あっはい、どうぞ。」
楓花は、メイドに案内されて客室へと向かった。
客室の前には、女性騎士が立ち警戒をしている。ベランダはないが、窓の外側にも廊下があり警備が立っていた。
広い…うちのリビングダイニングよりも広いわね…。
広い部屋の奥には、大きな天蓋付きのベッドが一台ある。その横にドアがあり、水回りがあった。
ベッドから離れたところにカウチとソファーがあった。窓際には丸テーブルとイスも置かれている。
着替えとかはバックにあるけれど…。
とにかくお風呂に入ろうかな…。
こういう部屋で寝るなら、少しは気楽にいてもいいかな?
楓花は、着替えを取り出し、タオルを掛けた。
「失礼します。お風呂のお手伝いに参りました。」
メイドが部屋に入ってきて驚いた。
「お手伝い?使い方を教えてくれればそれでいいわ。」
「いえ、ですが…失礼しました。それではご案内いたします。お風呂にお湯をご用意しております。こちらの樽に水がございますので、お風呂のお湯と水を合わせて、ちょうどよい温度にしてからお使いください。」
「体を洗い、御髪を洗いましたら湯も冷めております。まだ熱いようでしたら、水を足してご使用ください。」
「なるほど、そういう使い方なのね。わかりました。それでは、呼ぶまでは部屋に入らないでほしいの。」
「かしこまりました。」
楓花は、メイドが外へ出るのを待ってキャンピングカーを取り出した。
キャビンに入りシャワーを浴びる。すっきりさっぱりした状態でバスタオルを巻いて出てきた。お風呂はまだそれなりに熱いようで、体を洗う分程度のお湯を抜かないとならないようだ。バックの中から、バケツを取り出し5杯ほどの湯を抜いた。抜いた湯はバケツのままバックに収納した。
そこに水を足して少し熱めで浸かる。
う~ん…ひさびさのお風呂は気持ちいい。
お風呂のお湯はどこかから運んできているようだ。大変な作業だと思ってしまう。何をするにも人の手が必要というのは、現代では考えられない。
まぁ…戦前生まれの祖母は、そういう暮らしだったようだけれど…。
自分では、着替えひとつできない暮らしなんてねぇ…。
祖父母にとっては、着替えも何も人に手伝ってもらうものらしかった。当然家事の一切はできなかった。それらはお手伝いさんが、手伝ってやるものらしい。
遅くに生まれた母と叔母は、親の元で育ったらしいけれど、その兄たちは幼い頃は、外で育てられたという。幼子は、家から出して育てるのが昔の暮らしだったらしい。
お金が無くなった祖父母を引き取り、世話をしていた母は逞しい。
差別用語や人の気持ちを考えない発言を、聞き流していた。
いつだったか、祖母を批判したところ「あれでもまだ優しい方。叔母さん方は何倍も上をいっていた。」と言っていた。恐ろしいことだ。
この家の人たちもそういう生活だろうか?
メイドさんたちは、辛くはないのだろうか?
楓花は、ほどほどで考えるのをやめるとお風呂から上がった。
顔にローションと乳液をつけてからボディローションを身体に塗った。夏場なので、身体にクリームまで必要ないだろう。
下着を履き、ブラカップ付きのナイトドレスを着た。腰には一応ウエストポーチをつける。知らない場所なので、念のためだ。
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