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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者:
第3章 ヒシフォート

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7


 猫耳メイドは、敬一郎がマントを脱ぐのを手伝い、壁際のポールに引っ掛けるとワゴンを押して一礼して部屋を出て行った。


 「では、お掛けください。お疲れでしょう。」

 「はい…」

 

 楓花は、マントを脱いで勧められたカウチに座ると、敬一郎は向かい側の一人掛けに座った。

 敬一郎は、ボールの水で手を洗ってからポットを持ち上げ、カップに注いでくれる。


 「楓花さんは、いつからこちらに?」

 「いつって…28だったかな?GWだから遊びに行こうと思って車を出したら、なぜかこちらに来ていて。最初の4日間は焦ったし…どうしようかと思ったのですけど、家への空間移動?ボタンを見つけたので帰ることができて安心しました。時間の流れが違うので戸惑いますけれど、得した気分でもありますね。」

 「なるほど…前向きですね。お茶をどうぞ、お菓子も大和のものですからお口に合うと思います。」

 「ありがとうございます。」


 楓花はお茶を飲み、チョコレートを一つ手にした。

 大きい丸いチョコレートだ。美しい艶があり、これは最近話に聞く有名チョコパティシエの手によるものだろう。

 口に入れて少し舐めていると、甘酸っぱいレモンの味とそのあとに濃厚な味が広がった。


 「美味しいですね…初めて食べました。」

 「そうですか?それはよかった。」

 「それで…ここって異世界ですか?」

 「はい。大和でいうところの異世界になります。パラレルワールドのようなもので、地球とよく似ています。鉱石類の組成は同じです。」

 「へぇ…」

 「ただし、違う要素として、この世界には魔石があります。それと魔法もあります。魔術師は、魔法を使える。」

 「なるほど、私…こちらに来てからあちこちで魔導士と言われるのですが、魔導士って何ですか?」

 「魔導士は、魔導を追求し使いこなす者です。魔導というのは、地球でいうところの科学や化学です。それに魔法を組み合わせて道具を作ることもできます。その魔法鞄などが最もたる物になります。」

 「なるほど…」

 「この世界では、魔法があるためか科学も化学も進歩していない。生活も17世紀18世紀のようなものです。」

 「それって江戸時代?中世ってことですか?」

 「その認識で構いません。よくある魔法と剣の世界です。」

 「そうですか…。」

 「楓花さん剣を携えていますが、何か危険な目に合いましたか?」

 「えっと…湖で釣りをしていると獣がガードを叩くので、壊されそうで怖いですからね。それにこの間は、野原で薬草を摘んでいたら大量のウサギに襲われました。」

 「ん?ちょっと待ってください。ヒルストンから野角うさぎ大量発生の知らせがありました。あれは貴方が?」

 「ヒルストンのセイヤさんからですか?それなら私です。157羽も狩ってしまって怖かったです。」


 楓花の言葉に、怖いのはどっちだと敬一郎は思った。

 大和で育った者にとって生き物の命を狩るというのは、かなりハードルが高い。それを平然とできるなんて…。


 「勘違いしないでくださいね。シリアルキラーではありませんよ。大学では、動物の解体も習いましたし実習もありました。それに山育ちで身内には狩猟免許持ちもいますから、命をいただくことにある程度の慣れがあります。」

 「そうでしたか。」


 それにしても…いくらガードがあっても、それほどの数を仕留めるのも解体するのも容易ではない。この人が黙々とそれをこなしたのか?


 「狩ったのは私ですが、解体は苦手なので解体用のナイフを使いました。とても便利ですよね。指示するだけできれいに解体してくれますし、仕分けバケツがあれば書き込んだものが入っているし、魔法って便利です。」

 

 ウキウキと話している楓花だったが、聞いている敬一郎は頭が痛くなっていた。

 この人に家と車を譲る手続きをしたのは自分だ。御大からは、もし道を見つけてこちらに来ても困らないようにしてあるとも聞いていたが、それはなんだ?

 解体ナイフ?

 そんな道具は聞いたことがない。

 どちらにいても困らならいように家と金の手配をしたのではないのか?

 

 「それに、ペットボトルのお水で洗っただけで傷は治りますし、それで治らなくてもポーションを使えば治りますし、こちらの人々の治癒力ってすごいですよ。」

 「ちょっと待ってください。」

 

 なんだそれは?

 ペットボトルの水はただの水だ。異世界に来たからって組成は同じだ。H²Oに変わりはない。薬師の作るポーションは存在するが、ポーションを作れる者は限られていて国内には10数人しかいない。

薬を作れる魔導士は3人だけだ。そのうちの1人が先日亡くなった御大だ。

 残り2人いるが、1人は中級まで作れるが、かなりの偏屈でそうそう作らないらしい。

 もう1人は、御大の弟子だった男だが彼は20年経ってやっと初級を作れるようになった。それでも出来上がりに斑があると聞いている。

 薬師の作るポーションは初級ポーションほどの効果もない。ただ、ポーションと呼ばれるものだ。そのため、出回っているポーションのほとんどは効果が薄く。初級以上はないに等しい。


 「水がですか?」

 「はい、ちょっと待ってくださいね。これをどうぞ。」

 

 楓花が斜め掛けバックから水のペットボトルを渡してきた。栓はされていて未開封で間違いない。

 敬一郎に鑑定の力はないため、アイテムバックから鑑定レンズを取り出した。形状としては虫眼鏡だ。


 「癒しの水になっていますね。」

 「そうなの、不思議よね。」

 「少々お待ちください。」


 敬一郎は、自分のアイテムバックから水のペットボトルを取り出した。鑑定しても「水」と出る。


 「これを持ってください。」

 「はぁ…」

 「お返しいただけますか?」

 「はい、どうぞ。」


 敬一郎は受け取るが、やはり水である。

 楓花が持っていたからでは無さそうだ。


 「水ですね。」

 「それはそうですよ。」




読んでくださりありがとうございます。

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