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治療が落ち着いてきたころ、秘書さんがやってきた。
「魔導士様、助けていただきありがとうございます。それと…賊を捕まえました。獣の襲撃は、人為的な物でした。警備にも…賊が混ざっておりましたが、魔導士様のガードに弾かれた事で主犯も捕らえました。」
「まぁ…。」
治療をしている間に、そんな大捕り物があったのか。
「秘書さん、貴方…大怪我だわ。これを飲んで。」
楓花は、秘書さんに高級ポーションを飲ませると頭に中級消毒薬を吹きかけた。頭が、大きく切れていて血を流しているし、肩や二の腕の肉の一部が無くなっていた。
秘書はポーションを飲むと、その場に座り込んでしまった。
貧血だろう。
「皆さま、治療も終わりました。今皆さんの馬車をガード内に入れましたから、安心してお休みください。」
「待ってください。誰か伝令に走れる者はいないか?騎士団を呼ばなくては!」
「行けます!」
手を挙げた4人に秘書さんは指示を出していた。
このまま出発するつもりだろう。
「ちょっと待って、そのままではお腹が空いてしまうから、これを食べてこれを飲んでから行ってらっしゃい。」
楓花は、その場で保存食の高エネルギークッキーの封を開けて1人ずつに渡した。これは喉が詰まるので、水の入ったペットボトルを開けて渡した。
「遠慮せずに食べていってね。飲みにくいからその水も飲むのよ。」
「はい!!」
彼らは、食べ終えるとペットボトルをどうしようかと戸惑っていた。楓花はそれに湯冷ましを入れて水筒替わりに渡した。彼らはそれを受け取ると、一番近い領都へと向かって馬を走らせていく。
高エネルギー食と癒し水のお陰で、疲れ知らずになっていた。
商隊の人たちはガード内に安心して眠り始めた。
ここ数日、まともに眠ることが出来ていなかった。交代で警戒しながらの旅はいつにも増してきついものだったのだ。
楓花は、朝食どころではなさそうなので、キャンピングカーに戻った。ガード範囲を狭めた。とりあえず15mにしたが、10mで収まってくれた。
キャビンへ移動してロールパンに切れ目を入れて焼いた肉を挟んだ。それとスクランブルエッグをマヨネーズで和えた物を挟んだロールパンも作った。それらを籠へ入れるとガードの外へ出て、警備に当たっている冒険者へ渡した。
「お疲れ様です。目を離せないと思うので、こちらを召し上がってください。他の方には別の物を用意するので、食べてしまって大丈夫です。」
「あの…魔導士様」
「はい?」
「そのありがとうございます。あなたの手当のお陰で、兄は助かりました。」
「そうでしたか、お役に立ててよかったわ。お仕事頑張ってくださいね。」
キャビンに戻った楓花は、彼らが目覚めたら何を食べさせようかと悩む。
怪我して治ったところだから…ポトフにしよう。お腹から温まるものがいいだろう。
鍋でウサギ肉を炒め、玉葱も一緒に炒めてから水を入れて煮込む。大根と人参も入れチキンブイヨンをいれて煮込む。
パンは出したくないから…マカロニ?
あっ…じゃがいもがあるから、ニョッキにしようかな?
楓花は、芋をふかしてから潰し、小麦粉と練ってから棒状にした。それを包丁で切ってから、ポトフの鍋に入れていく。
40人いたのだった。いや賊がいたし伝令に4人出て行ったから、30人くらいかな?
だとしても…これでは足りないかな?やっぱり、マカロニも入れておこうか。
楓花は、シェルマカロニも2袋入れた。
その結果、なかなかの具沢山になってしまった。
まぁ…足りないよりはいいよね?
窓から外を見ると、起き上がる人も出てきた。
楓花は、バックを掛けて剣も携えてから外へ出た。倉庫からテーブルとイスを取り出し、長机も2台取り出した。
鍋を持って外へ出ると、会頭さんも起き上がった。
秘書さんと何か話をしているようだ。
よし、皆さんなんとか持ち直したようなので食事をしてもらおう。
「皆さん、食事にしましょう。カップを持ってきてください。これは、皆さんが元気になった私からのお祝いです。」
シールを配ってくれた女性を見つけたので、声を掛けた。
「会頭さんと秘書さんへこれを持って行ってくださる?」
「はい!」
彼女にカップを2つ乗せたトレーを預けた。
それから、来た人たちのカップに配膳していった。
ワイワイとニョッキ入りのポトフを食べてくれていた。
皆の表情は明るくて、今朝の騒動は嘘のようだ。
よかった。
トラブルがあったにせよ。助けることが出来た。
急に空が暗くなり、大きな鳥が舞い降りてきた。
その鳥の背から、馬で駆けていった人たちも降りてきた。どうやら無事に助けを求めることが出来たらしい。
かなり大きな鳥で3mは超えている。もしかしたら4mあるかもしれない。嘴は鋭く、頭には王冠のようなものが付いていた。首に赤ちゃんの涎掛けのような物を付けていて、刺繍が入っていた。どこかで見たような色と縫い取りだった。
「ヒシフォート・グリフォン第1騎士団だ!賊はこれか?代表は誰だ?」
警備の人たちが、降りてきた人たちとやり取りをして賊を引き渡していた。
会頭が立ち上がり、ゆっくりと騎士団へと近づいていく。
「バウム・クーヘンと申します。我が商隊に賊が紛れておりまして、こちらの魔導士様に助けていただきました。」
「魔導士?」
楓花は、面倒事は嫌だなあと思いつつ前へ出た。
下手に逃げない方が良さそうだ。
「私です。」
楓花は、ガードギリギリまで出るとフードを外した。
騎士はなぜか声を潜めて聞いてくる。
「私は、リハルドと申します。御名を伺ってもよろしいか?」
「私は、橘楓花です。」
「フーカ様!?失礼いたしました!」
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