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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者:
第3章 ヒシフォート

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2


 卵スープに騒めきが起きたので、楓花は焦った。

 もしかして、卵に忌避感情があるの?


「あれ?宗教的な制約とかおありですか?」

「いえ、そういった問題はありません。高級食材に驚いている次第です。」

「そうなの?」

「こちらお食事の代金でございます。足りるとよいのですが…」


 クーヘン商会会頭は、麻袋を手渡した。

 楓花はそれを受け取り、中を開けてみる。

 金貨が何枚も入っていた。今日の食事代としては多すぎ…あっ食材を渡すと約束したのだった。かなり期待されているってこと?う~ん・・・困ったな。生肉ならいくらでもあるけど、そんな物は腐るから困るよね?

 まぁ、薬もつければいいかな?


 「お預かりします。食べている間に、お渡しする食材もご用意しますね。生肉をお渡ししたら保存するものがあったりしますか?」

 「保存箱がございますので、ある程度は入ります。」

 「そうですか、それなら安心ですね。」





 バウム・クーヘンは、かなり戸惑っていた。

 魔導士というのは気難しいもので、どんなに下手に出ても機嫌を損ねやすい。

 目の前のご婦人は、嫌な顔もせずに初めて会った者たちに笑顔で接してくれた。

 だが、魔導士のローブを着ているし、魔導車の周囲にはガードの魔法が展開されていて、かなりの大魔導士に間違いなかった。

 対価を支払うという口約束で、高級な料理を作り始めた。それもかなりの手際で、いつもやっていると思わせるような速さだ。

 肉を焼く手つきは流れるようだった。連れてきた料理人に作らせても1時間では1品しか作れない。

 しかも、見たことのない機能美を備えた道具たちだった。



 料理を終えた魔導士は、火に水をかけようとしたのでつい「少々お待ちを」と声をかけてしまった。

 まずい、機嫌を損ねたか?と思ったが、魔導士はただ不思議そうにバウムを見ていた。

 大丈夫かもしれない、図々しいが要望してみよう。


 「火を消すおつもりなら、火種を分けてはもらえませんか?」

 「火?…いいですよ。」


 魔導士は、火のついた黒い物を地面においてくれたので、それを下男が火箸で摘まんで集めた枝の中へと入れた。

 夏とはいえ夜は冷える。

 火がなければ、獣に寄り付かれて襲われてしまう。

 今朝、食料を放棄することになったのも、朝方に火の番が居眠りをして火を絶やしてしまったからだった。

 火を熾すのは一苦労で、種火を失った彼らにとって、この火は新たな希望だった。


 「旦那様、お食事の準備ができております。」


 秘書に声を掛けられ、馬車へと戻った。馬車の小さなテーブルにスープカップが乗っていた。座ってハンカチーフを膝の上に広げると、料理を乗せた皿が乗せられた。


 見たことのない葉っぱと野菜を切った物、ウサギ肉を焼いた物が3つに白い粒粒としたもの、そして見たことのない真っ白で四角いパンだった。

 スープカップに口をつけると、滋味深い味が広がる。


 「スープにこれほどの卵を入れるとは…それになんという奥深い味だろうか。」


 今日初めての食事だった。

 身体にスープがしみこむような気さえしてくる。

 さて、どれから食べようか?

 バウムは、見慣れない白いものを掬って口へ入れた。粒粒しているので、掬いにくいかとも思ったが、意外にも崩れることなく運ぶことができた。

 しかも、濃厚なこの味はバターか。バターライスと言っていたので間違いない。なんと贅沢な味だろう。しかも噛んでいると甘くなる不思議さだ。

 次にウサギ肉をナイフで切って食べる。噛むと肉汁が溢れてくるパーフェクトな焼き加減だった。しかもいい香りがついていて、ほのかにぴりっとするのは…コショウか!?

 なんと!これは魔導士様が、自分で食べるために作っておいた、秘伝の食べ物だろう。なんとおいしいのか。

 一緒にある葉っぱとオニオンをスライスしたような物も、とてもよく合っていた。

 見たことのないパンは柔らかく、中央の白い部分は溶けてしまうようにすら感じてしまう。

 最初は1口ずつ味わっていたバウムだったが、次第に夢中になって食べていた。その斜め向かい側にいる秘書も、いつもとは違い主の様子を気にすることなく、食べることに夢中だった。


 外では、警戒に当たっている者たち以外は幸せそうな顔で寛いでいた。




 一方、楓花は頭を悩ませていた。

 金貨は8枚もあった。あの食事を強気に一人当たり大銀貨1枚としても金貨4枚だけれど、そんなに高いはずもない。だって大銀貨1枚って1万円だ。そんなに高いはずはない。

まぁ、こんな何もない地域だし、周辺には岩しかないからと考えても高すぎだろう。

 金貨4枚分というか6枚分の食材ってつまり60万円?

 そんなにないし、渡せない。いくら大和と行き来できるといっても、それはちょっと問題だろう。


 楓花は、クーヘン会頭に渡す食材について、ウサギ肉をメインに考える。

 ウサギ肉の売値は㎏当たり銀貨3枚だ。保存庫とかいうものがあって肉は保管できるといっていた。それなら、肉を10kgずつ袋に入れてそれで大銀貨3枚だから10個の100㎏で金貨3枚分だ。

 それと米か小麦粉でどうだろう?小麦粉があれば最悪、水で練ってすいとんを作って食べられるだろうし、パンも焼ける。強力粉か中力粉があったはず。

 それと、野菜だろうなぁ…玉ねぎとジャガイモは1箱ずつなら渡せる。

 でも、人参はそれほどないからダメだし、葉物も日持ちしないから当然渡せない。

 40人か…1食に小麦80gとして3.2㎏で1食分だ。

 中力粉は1㎏10袋しかないから6つまでしか渡せない。薄力粉はたくさんあるけれど、お菓子を作るわけじゃないし…すいとんくらいならいいかな?いいよね?

 薄力粉は注文を間違えて業務用の10㎏袋が10個もあった。

 家に置くにも邪魔なので、キャンピングカーに入れていた。



 バウムは、洗った鍋を返すタイミングで馬車から降りたところ、ガード外側の青いシートの上にいろいろな物が出ていて驚いた。

 魔導士がいろいろと運んでいた。

 返すために鍋や皿を洗わせていた。洗うといっても川の水で流しただけだ。

 バウムは共を連れてガードギリギリまで近づいた。



 「魔導士様、大変おいしくいただきました。こちらお借りしていたお鍋とお皿です。この銀色のお皿の軽いことと言ったら驚きました。」

 「はぁ、ありがとうございます。洗ってくれたのね。」

 「はい、当然でございます。その…それで、こちらは?」

 「こちらが、お譲りできる食材です。確認してください。お肉は沢山なので無理でしたら返してください。」

 「はぁ…」

 「こちらウサギ肉10㎏入り袋が10個とこちらは小麦粉の10㎏袋です。それと、じゃがいも1箱と玉ねぎ1箱で全てです。」

 「小麦粉10㎏?袋を開けてもよろしいでしょうか?」

 「もちろんです。どうぞ。」


 バウムは、震える手で初めてみる紙袋を開けた。

 バウムの知っている小麦粉とは、グレーがかった薄茶色である。袋の中にある真っ白で美しい粉状の小麦粉に腰を抜かしそうになった。小麦粉の袋を倒すわけには、行かないのでなんとか耐えた。あの溶けるほど柔らかいパンはこの真っ白な小麦で作ったのかと納得してしまう。





読んでくださりありがとうございます。

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