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クリスフォートさんが、薬を手にした。鑑定持ちのようだ。
途中から手が震えている。
「あの…本当にこれを使ってくださるのですか?」
「はい、使い方を教えるのでお売りしますよ。大量には、無理ですけれど…。」
「それはもちろんです。ありがとうございます!これほどの物を使った治癒など、領都であってもなかなか受けることはできません。」
「そうなの?ヒールがあるのでは?」
「ありますが、ヒールではここまでの効果はありません。それにポーションも一般的には初級以下です。中級をこれほどの量も種類も見たのは初めてです。」
クリスフォートはそう言ったものの、これほどの量どころか、今まで初級ポーションでさえ1本しか見たことがなかった。あとは、ポーションという名の効果の薄い物だった。
これほどの種類、軟膏や水薬、消毒薬なるものは初めてみたのだ。どのくらいどうやって使うのかも見当が付かなかった。
この種類を使いこなせるようにならなくてはならないのなら、だれが適切だろうか?
クリスフォートは、ギルド職員の中から頭の回転が速く、手先が器用で人当たりのよい男女を1人ずつ選んだ。2人共、足が悪いので動き回ることは苦手だが、座り仕事であればできる。
「フーカ様、ルルとハイドです。二人とも足が悪いですが、手先が器用で真面目です。頭も悪くはない。」
「楓花です。お二人にお薬の使い方を教えますね。」
「ハイドです。よろしくお願いします。」
「ルルです。お願いします。」
「お二人の足はどうして?」
「私は倒れた棚に押しつぶされてしまって…。」
「まぁ…」
「私は、冒険者だったのですが…獣にやられまして…。」
「そうでしたか…」
よく見ると、ルルの足は曲がってついてしまっているようで足の長さが左右で異なっていた。ハイドは義足だ。義足は木製で足首とかはついていない。ストレートに棒がついているだけだった。
それについてあまり追及しない方がよさそうだ。
「薬の使い方ですが、難しくはありません。傷口を湯冷まし…一度沸騰して冷ました物でよく洗います。沸かしていない水を加えてはなりません、沸かしたものを冷まして使います。」
「はい、わかりました。」
「傷を洗ったら、膿が出ていたり赤く感染状態になっていたりであるなら消毒します。そうでないのであれば、癒し水を掛けます。熱が出ているなら、癒し水を飲ませます。」
「はい」
2人は、楓花の説明をメモしていた。
「傷口に触れる時には、素手はよくありません。手袋で触れてください。」
「手袋?」
「はい、箱で置いていきますので、1人ずつ交換してください。」
「はぁ…」
「これは、治療する側が病気にならないために必要です。一度では教えきれないから、少しずつ覚えてください。」
「わかりました。」
「もしご家族やご本人が出来るようならこちらはそこに触れずにご本人に傷を洗ってもらうのもありです。」
「はぁ…」
「では、薬の効果は覚えましたね?」
「はい。」
「ハイドさん。こちらは?」
「軟膏です。傷を洗い、切り傷よりも全体に荒れている部分に使います。」
「そうです。ではルルさんこちらは?」
「それは消毒薬です。膿んでいる傷に使います。」
「そうです。では、ハイドさん、こちらは?」
「水薬です。熱や全身症状、腹痛など内部の症状に飲ませます。その他に傷口にかけて傷を防ぐ手助けもします。」
「そうです。お見事です。」
「フーカ様、患者も集まってきました。よろしいですか?」
「はい、もちろんです。」
楓花たちは、1階の一角に用意された治療スペースへ向かった。
用意された鍋では湯が沸いていたので、お玉を入れて少し煮込んで煮沸消毒した。それから、火からおろしてもらう。
冷まさないと傷を洗えない。
衝立で仕切られたスペースには、長椅子が3脚置かれていた。
それとは別に背もたれのある椅子が3脚と丸椅子が3脚あった。
「フーカ様、こちらへおかけください。」
「ありがとう。」
椅子に座って待っていると、家族に付き添われた少年がやってきた。
足を引きずっていた。
「私は楓花です。お名前を聞いてもいいですか?」
「シンです。」
「シンさんですね。それで…どうしましたか?」
「角ウサギに足をやられて…」
「まぁ、それは痛かったですねぇ…」
「うん、とっても…それになんか変で…。」
包帯を外すと緑色の膿が出ていた。これはよろしくない。
湯はまだ少し熱いので、包帯を外した状態で少し待ってもらう。その間にも、沸いて少し置いた鍋が火から降ろされ、次の鍋がかけられていく。
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