21
ヒルストンの冒険者ギルド。
急遽開設した治療所では、セイヤとリアが治療に当たっていた。
次にやってきた患者は、足をかなり酷く切っていて膿んできていた。
「ちょいと膿んできているな…」
「こんくらいどうってことないだろ?」
「いや、これは消毒薬を使ったほうがいい。沁みて痛いが我慢しろ。」
「そりゃあこええな。だけど、足を切らずに済むなら頼む。」
「かけるぞ。歯を食いしばれ。」
「わかった。ぐぁっ…」
セイヤは傷口を洗ってから、全体にかかるように消毒薬を吹きかけた。
本人は痛みに耐えるのに必死だが、吹きかけた傷は赤みが引き普通の傷になった。それを見て、また周囲がどよめく。
「おい、見てみろ。赤みが引いた。痛みはどうだ?」
「痛みはあるが、これ…治るのか?」
「癒し水はこれからだ、いくぞ」
「ああ、たのむ。」
「かけたぞ。」
「痛くはないな…なんだろう…治っていく気がする。」
「かなりよくはなっているが、数日は綺麗に洗った包帯を巻いてしっかりくっつくのを待ったほうがいい。完全に治るには2日はかかる。無理はするな。」
「わかった。ありがとう。これで足を切らずに済む。」
30数人の治癒を行い、全員が回復傾向になった。中には骨が折れている者もいて、2人にはポーションを瓶ごと飲ませた。
「ギルマス、3人どうしてもやってみてほしいと残っている者がいるが、かなり膿んでいて高熱が出ている。切ったほうがいいと思う。」
クリスが困っているらしい。
だが、もしかしたら治るかもしれないとも思う。
「やるだけやってほしいってのは…お前たちか?」
「はい、うちの人の腕を切らずに治してやりたい。ギルマス助けてくれないかい?」
「うちの人は足を怪我したのさ。足がなくなったら動けなくなるだろう?なんとかしてはもらえないだろうか?」
「うちのは腹が痛いって言って…どうにか治せないか?」
「今ある薬では対応できんと思う。腹はなおせないぞ。」
「そこをなんとか…」
「腕や足は試してもいい。だが、腹の中は無理だ。」
「ダメ元でいい。金貨4枚をもってきた、ポーションを1瓶売ってくれないか?効かなくても文句は言わないから!!頼む!」
「そこまで言うなら1瓶持っていけ。」
「ありがとう。ギルマスありがとう。」
1人はポーションの瓶を手に帰っていく。
その背中を見送り、残った2人を見た。
見るからにもう限界のようだ。
リアに指示を出して、患者の家族と一緒に傷口をぬるま湯で洗った。
「ギルマス、洗い終わりました。」
「ああ、ありがとう。」
傷口は真っ赤になっていて歪に腫れていた。とても治るような傷には見えない。消毒薬を手にして、吹きかけていく。そのたびに患者が悲鳴を上げて飛び跳ねるのを家族に抑えてもらった。1本丸ごと使ったころ、赤みがひき始めた。まだまだ腫れてはいるけれど、先ほどまでとは様子が違う。
これは治るかもしれない。
赤みと腫れがひいたところに癒し水を垂らした。まだ膿んでいるのが収まったわけではないが、かなり改善傾向になった。
「えぇ…治ってきている!」
「あんた!切らなくてもいいかもしれないよ!」
2家族が大騒ぎだ。
2人には、癒し水を1本ずつ飲んでもらう。膿んでいる範囲が広い場合、ばい菌とやらが全身に回ると、楓花が熱弁していったのだ。
「今日は、洗った包帯で巻いて帰れ。明日の夕方、また来るように。もう一度消毒する。」
「わかった。ありがとう。」
「料金は、金貨4枚だ。明日は、もう少し安くて済むはずだ。」
「それでいいのか?本当なら切り落とすような状態だぞ?命を助けたのに等しい。」
「今日は金貨4枚でいい。明日も必ず来ること。中途半端な治療では逆戻りしてしまうからな。」
「わかっている。もうだめだと分かっていた…切り落とすしかないと…でも切って痛い思いをしても、助かるかはわからない。それを…それを…・」
「あんた、治るよ。治る。明日も来よう。」
「ああ、わかっている。明日も治療を…」
2家族も明日の約束をして帰っていった。
彼らのあの反応は当然だった。切り落とすにも金貨が3枚かかる。それで命が助かる補償はない。領都へ行くには金貨9枚はかかるが、こちらも治る補償はなく、膿んでいたらまず治らない。そんな中で回復の兆しがあるのは、天の思し召しといっていいだろう。
薬は3種類40個ずつあったのだが、軟膏を3つ、消毒薬を10個、癒し水を12本とポーションを3本とも使ってしまった。
翌日、噂を聞きつけた人たちがやってきた。
膿み始めた傷がある者たちが、殺到したのだ。
彼らの治療をし、午後からやってきた昨日の2人の傷を見た。
まだ、少し膿んではいるけれど、昨日とはまるで違っていた。今日も傷口をぬるま湯で洗い、傷口に消毒液を吹きかけた。
中級と言っていたけれど、ここまでの効果があるものだろうか?
今まで使ったことのあるポーションは、下級か初級ばかりだったから比較はできないが、これほどの差があるとは驚きだった。
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