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楓花は、この世界のポーションボトルではなく、大和の容器ならば日持ちはしないと予想していた。
日持ちをさせないので、早めに使ってもらうしかない。けれど、それでいい気がする。
大和に行って戻ってきただけで、半日が過ぎていた。向こうでの1.5時間は異世界の4.5時間だ。なかなかのロスタイムだ。
今更だけれど、ポーション容器の木箱を開けてみた。
万能ポーション30mlがボトル入り1箱と空容器が4箱、高級ポーション50mlがボトル入り1箱と空容器が4箱、中級ポーション100mlはボトル入り2箱と空容器が8箱もあった。そして初級ポーション150mlはボトル入り2箱と空容器が8箱もあった。
中級であっても鑑定してみると、治療薬というには、桁違いの能力があり、これに頼るのはよくない。
自然治癒を無視しているし、医学的にもありえない。
これを広めてしまうのは、危険だと感じてしまう。
もう少し、緩やかに治療できるものがあるといい。
初級ポーションは、そのままでもよさそう。
高級ポーションや中級ポーション、それぞれを水、消毒用エタノール、ワセリンに混ぜ込んだ。今回用意したワセリンはボトルタイプで混ぜるための使い捨てのヘラも用意していた。
使い捨てのヘラは、ゼリーやヨーグルトを箱買いするとついてくるプラスチックスプーンだ。
それらをアルコール消毒してから使った。各ポーションを1割だけ混ぜた。軟膏用5ml容器にワセリンと混ぜた物、水と混ぜた物を20mlの液体用容器、アルコールを混ぜた物を20mlのプッシュ式の液体容器へと詰めたプッシュ式容器は5つしかないので、残りは元の容器のままだ。
中級を混ぜた物に黒丸、高級を混ぜた物に二重丸を書いた。
「さてと…見てみますか…。」
楓花は呟いた。
「これは何?効果は?毒性は?」
『中級ワセリン:薄く塗るとその傷を治す。毒性はない。』
『中級消毒薬:吹きかけたところの傷を治す。膿んでいる傷もゆっくり治せる。飲むのは毒である。』
『中級癒し薬:飲むと軽い症状を治す。1本飲むと傷を最大6時間かけて修復する。』
万能薬と違って骨折は治せないのね。消毒薬は、ゆっくりでも治せるならそれでいいような気がする。十分に効果が強い。
次は高級ポーションを混ぜた物を見てみよう。
『高級ワセリン:薄く塗るとその傷を治す。毒性はない。』
『高級消毒薬:吹きかけたところの傷を治す。膿んでいる傷も治せる。飲むのは毒である。』
『高級癒し薬:飲むと軽い症状を治す。1本飲むと骨折は24時間、傷は最大6時間かけて修復する。』
中級とそれほど説明は変わらないけれど、高級では骨折が治るのね。それなら十分な効果…万能薬で感覚がマヒしそうだけれど、大和にいても骨折は時間がかかるものだもの、24時間で治るなんてすばらしい。
「使用期限はどのくらいあるの?」
『中級ワセリン:1年』
『中級消毒薬:1年』
『中級癒し薬:60日』
『高級ワセリン:1年』
『高級消毒薬:1年』
『高級癒し薬:60日』
なるほど…癒し薬で2か月、塗り薬と消毒薬は1年なのね…。
特別な容器でなくても、これほど持つことに驚く。
高級は、ちょっと効果が強すぎる。外に出すのは、やめておこう。
いざという時、私が人に使う程度にしよう。
中級なら許容範囲?
こうなると初級も作ってみたい。弱すぎるかもしれないけれど、有効かもしれない。作ってみれば同じように作れたかの比較検討はできそう。
これを販売しつつ、中級ポーションを作れるようになれたらこちらでも生活はできる?
いや、肉を売るだけでも十分に生活はできるけれど、できれば血生臭いのは避けたい。
ポーションの作り方を書いた本は見つけていたので、車に積んである。
必要な材料は、中級でオークの爪100g、癒し草1kg、ライトフラワー500g、露草500g、清水2Lだ。
高級でブラックベアーの爪100g、癒し草1kg、宵草の花1kg、緋の花のめしべ20g、清草500g、竜の肝30g、清水1Lとなっていた。
清水は、水道水でいいようだ。
調合道具の箱を開けてみる。
秤、ビーカーやフラスコ、試験管などが大量にあり、漏斗や支える器具などが入っていた。薬研や乳鉢、振動を与える機械や小型の遠心分離機もあった。
そして、茶筒のような容器が大量に入っていて乾燥した草や動物の爪、牙などポーションの材料らしきものたちだった。
その他に袋に入った花や草もある。鮮度がいいのでこの袋は時間停止がかかっているようだ。草や花は、同じ物を見つけた時に、採取できるようスマホのカメラで写した。
楓花は、使わない物を片付け、テーブルの上に本に書いている通りの材料を取り出した。
中級ポーションなので、オークの爪100g、癒し草1kg、ライトフラワー500g、露草500g、それと清水という名の水道水2Lだ。
道具は、薬研と漉すための漏斗と支え、フラスコに温度計。それと鍋とヘラだ。ヘラは竹製で先が平になっていた。
材料を薬研でつぶし、鍋に入れて順番に煮込んでいく。十分に煮てから液体のみを濾してさらに煮詰める。この煮詰める温度は細かく指定されていて、その通りにやっていく。
高校や大学で経験した科学実験に似ていて楽しい。
楓花は、大学では臨床栄養学科で学んでいたので、人体については多少の知識があり、化学についても明るかった。
薬学と悩んで栄養学科にしたのは、単純に学費と生活費の問題があったからだった。
親からは短大か専門学校、6年の生活費は出せないと言われたのだ。
そもそも、優秀な母を持った祖父は、トラウマなのかわからないけれど、女に学はいらないという主義だった。その割に、女学校卒の祖母と結婚したのは謎だけど…。そんな祖父と戦って、学費は奨学金を借りることを条件に、大学だけは行かせてもらった。
そんな昔の感傷を抱きながら、作業をしていく。
煮詰めているポーションを確認し、ヘラでかき回す。
温度を確認しながら、この水銀計はデジタルの中心温度計にしようと思った。
規定まで煮詰めると、ポーション専用容器へ詰めた。
中級ポーションが30本出来上がった。
材料の合計が4.1㎏だった。それを煮詰めて3㎏出来上がっていたことになる。
手間がかかっているし、材料も特殊なのかな?
作っていない高級ポーションの竜の肝は、ここにあるけれど新しく入手するのは、名前から考えても難しそうだ。
こういう薬はいくらぐらいで売るのがベストだろう?
誰に聞くのがベストかな?
セイヤさんの顔が浮かんだ。
あの傷跡も治せるなら治したいし、行ってみようか。
楓花は、作った中級ポーションでも軟膏と消毒薬、癒し水を作ろうと思った。
自分で作った中級ポーションを使い、軟膏と癒し水も作った。
「ふぅ…夕焼けか…そろそろご飯でも作るかな?」
『ピーーーーー!敵対行為を受けました。多数あり。』
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