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1日遅れ、大変お待たせしました。
楓花は、平日は仕事をしていた。
朝8時から16時までの常勤パートだ。
結婚を機に退職して引っ越しをした楓花は、事故で夫を亡くしてしまった。
気持ちの整理もつかずに、そのままパート勤務を続けていた。事故の保険金や生命保険を受け取ったものの、人生を全うするには到底十分な金額ではなくアパート住まいでは家賃を支払うだけでも精一杯だった。
だけど、実家が遠い楓花には、ずっとここにいると決められなかった。保険金から家を買うこともできず、ただ毎日を過ごしていた。働かなければ食べていけない。パート勤務でも続けるしかなかった。
そんな日々を過ごした3年後、交通事故で亡くなった夫の加害者から、家や土地などの遺産を受け取った。天涯孤独だったらしく弁護士を通して受けとったのは3か月ほど前だった。車庫には、軽のキャンピングカーがあり、書棚には本がぎっしり入っていた。
それ以来、週末になるとキャンピングカーで遊びに出かけることを楽しみにしていた。
オートキャンプ場は安上がりに泊まれるため、雨予報でなければ出かけるようになっていた。
そして、GWの10連休を楽しもうとした楓花は、なぜか異世界にいてパニックになった。とりあえず、ナビに案内してもらい静かな場所で、現状把握のために、車の装備を確認したり、中にある物を使ってみたりした。
腕輪を見つけてガードの力を手に入れ、眼鏡をかけて鑑定の力を手に入れていた。
この軽キャンピングカーは、異世界では次元が違うらしく車内は広い。
自分の世界に戻る方法はわからない。でも、十分な食べ物と生活物資はある。安全に寝る場所もある。あまり悩むと、絶望しそうなので、場所はちがうけれど、当初の目的通りに釣りを楽しんだ。
湖の近くで、天龍という冒険者チームと出会い町へ行った。そうやって不安を抱えながら異世界で4日を過ごした。
そして、ふとしたきっかけで家へ帰る方法を見つけた。
家へ着いてみると、出かけた夕方から翌日を終えるころだった。どうやら異世界の3日は大和の1日程度らしい。
そして、スマホは大和時間を表示している。ナビでは大和時間と異世界時間を表示できた。これで、日にちの感覚はある程度掴めた。
楓花が検証した結果、異世界へ行くには庭側のシャッターから出るだけだとわかった。このシャッターは、元々あったのかもしれないが、存在に気が付いたのは帰ってきてからだ。シャッターの隣にある出入口は庭に出られるので使っていた。
家で休んで朝を迎えた楓花は、いろいろな検証のためにもう一度異世界へ渡り、新しくヒルストンという町へ行き、新しい出会いもあった。
それからアートンに行くと、アーサーとルーシーが大怪我をしていて万能ポーションを使った。
その効果は絶大だったが、その場で完治はできなかったので試しに作った薬を置いてきた。
アートンを出た楓花は、検証するために人影のない野原へと車を止め、ガードを5m、
ステルスに設定した。誰にも存在が気づかれない場所を確保したのだ。
楓花は、人がいないことを確認してから運転席から出た。
運転席の後ろのドアを開け、倉庫から調合道具とポーション容器の木箱4つを取り出しキャビンへ入った。
キャビンのソファーに木箱を置くと、内扉から運転席へ入り、コーヒーの入ったマグを手にキャビンへ戻り木箱を置いた反対側のソファーに座った。
「ふ~…」
チョコレートでも食べようかな。
いや、クッキー缶もあったよね?楓花はスーパーで売っているクッキー缶を取り出すと、黙々と食べ始めた。
テレビの受信はできないけれど、ネット経由で見られるのは不思議だ。
スマホで動画サイトを開き、最新らしきニュースをテレビにキャストした。
ニュースを見ながらの朝食は、幼い頃からの習慣だった。
落ち着く…。
ヒルストンの人たち、みんなとても細かった。
楓花は標準体重なのだが、見た目はなんとなくぽっちゃりとしている気がしていた。最近筋トレやウォーキングをしているけれど、足りてはいないだろう。もう少し運動しようかな…それはいいけど、彼らが細いのは細すぎる。参考にしてはいけないと思いなおした。
水をかけただけで、傷が治る理由はわからない。冷蔵庫や棚にある時にはただの水なのに、手に取ってテーブルに持ってくると癒し水になっていた。
テーブルの上には、試しに作った万能軟膏と万能消毒薬、万能癒し水がある。アーサーさんやルーシーさんには必要分だけを置いてきたけれど…。
万能薬を使った薬も、少量で治るなら1滴ずつかけられる容器かスプレー出来た方がいいのではと思いつく。楓花は今いる野原を空間移動の位置登録をした。
楓花は、謎のやる気をだし、空間移動で自宅に戻った。
大和で、容器を作っている工場を訪ねてみる。連休中だから心配だったけれど、工場長の奥さんが対応してくれた。
「個人的に容器が欲しいの?」
「はい、小さい軟膏用と液体用が欲しくて。」
「買ってくれる分には、いいけど箱となると50個入り24袋よ?大丈夫?」
「ええ、そのくらいなら大丈夫だと思います。」
「あと…消毒薬を入れるようなプッシュボトルってあります?」
「あるけど、小さいのはないね。売れないから…そうだ、たしか…試作品があったはず。あっこれだ。」
「試作品?」
「試しに作って、ほらスプレー状にはなるけど、小さいなら香水容器のような物のほうがいいみたいでね。商談にならなかったの。」
見せられたのは、内容量10mlなのに20mlの容器と変わらない大きさの容器だった。よくある消毒薬のミニチュア版だ。
「かわいいですね。」
「そうでしょう?でも、空気を入れないとスプレーできないから、どうしても大きくなってしまってね。」
「それは…そうなりますよね。」
「だから、これ以上小さくはならないの。その割にはってね。」
「ちなみにこれを作るといくらになりますか?」
「ラインを動かすとそれなりに作らないとならないから、10箱分1万2千本が最低ラインで1本当たり30円くらいね。」
「それは、高いですね。軟膏や液体が10円くらいだから3倍?」
「そうなの、そこがネックで大手が携帯用を考えて辞めた理由よね。」
「なるほど、こちらはいただいてもいいですか?」
「ええ、いいわよ。スプレー容器も売ってはいるけれど、これが50円ね。」
「こちらは、100均で見かけますね。」
「ええ、上の部分が高いけれど、下のボトルは15円くらいね。」
「それだと、下だけ作ってもらうこともできる?」
「それはできるけど…。」
「ありがとうございます。持ち帰って検討します。」
プラスチックの5ml軟膏容器と20ml液体容器を買って戻った。
工場で買ったので、1箱ずつと大量だ。
卸値だったので1個10円と格安だったが1200個ずつ2箱なので、2万4千円にもなってしまった。ちょっと大人買いしすぎたと反省する。
スプレーボトルは高くて手が出すもないけれど対応策はありそうだ。消毒液容器のミニチュアのような物をサンプルとして5つ貰った。そして、ドラックストアーで白色ワセリンと消毒用エタノール、そして水のペットボトルを買って異世界の野原へと戻った。
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