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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者:
第2章 イルルジオーネ

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13



 翌朝、楓花は、食事を終えてから天龍のチームハウスを訪ねた。


 「楓花さんが、また助けてくれたのね。」

 「たまたまですよ。間に合ってよかったです。傷を見せてもらってもいいですか?」


 2階に上がると、ルーシーさんとアーサーさんはベッドの上で起き上がっていた。背中には、クッションのようなものが入っている。

 ルーシーさんの足は、一部穴が開いたようになっていて、そこから膿が流れ出ていた。それをペットボトルの水を使って、洗い流す。それから、万能消毒薬を吹きかけると赤みが薄れていく。


 「すごい…」

 「痛みはありますか?」

 「いえ、昨日まであんなに苦しくて痛かったのに、ウソみたいに楽です。」

 「それならよかった。今日は、できるだけベッドの上で休んでいてくださいね。」


 「では、アーサーさんはいかがですか?」

 「俺も信じられないくらい体が楽だ。両手はあきらめるものだと思っていたけれど、これなら…治ってくれるかもしれない。」

 「傷を見せてくださいね。」

 「お願いします。」


 アーサーの腕は、包帯をしているけれど、膿がしみだしてきていて、大変な状態だった。

 体が楽というのは、幻想で痛みを感じていないだけなのかもしれない。楓花は慎重に包帯を外し、ガーゼを外した。

 腫れは、引いていた。大きいままだったのは、包帯が膿で固まっていてその形を保っていただけのようだ。


 「腕を袋に入れてください。今、洗いますね。」


 楓花は、ペットボトルの水でアーサーの腕を洗い流した。

 皮膚の汚れが取れ、皮膚の薄そうなピンク色の肌が見えた。すっかりと腫れが引いている。こちらもルーシーと同じで、牙の跡はしっかりと穴として残っていた。


 「すごい…」


 周囲から声が漏れてくる。

 楓花は、アーサーの両腕を洗い流してから、ラテックスグローブを付け替えると万能ワセリンを手に取る。アーサーの両腕にすこしずつおいてからそれぞれ伸ばした。

 ワセリンは馴染んで薄く広がった。


 「夜、目が覚めてパンを食べました。それからお薬も飲みました。すごく体が楽になって眠ってしまったけれど…貴重なお薬をこんなに使ってもらってしまって…」


 ルーシーが、ベッドの上で泣き始めた。

 薬なんて昨日は渡していない。ケントさんが、用意したのかもしれない。


 「大丈夫ですよ。ルーシーさんとアーサーさんが元気になれたらいいの。」

 「フーカさん…うあわぁぁぁん…」


 楓花は、ルーシーの元へ行き、背中を撫でた。そのうちに落ち着いてきたルーシーさんは眠ってしまった。


 「ふふっ…元気になれそうでよかった…」

 

 「アーサーさん、このお水は全部飲んでくださいね。飲み終わったら、湯冷ましを飲むようにしてください。しばらくは、体が弱っているからしっかり火を通したものを口にしてくださいね。ルーシーさんも同じです。」

 「わかった。」

 「また町を離れるので、お薬を置いていきます。手を洗ってから薬を塗ってくださいね。」

 「ありがとうございます。でも…また来てくれますか?」

 「もちろんです。次の時には、薬草の採取を教えてください。」

 「はい、それまでに動けるようになって見せます。」

 「その意気です。では、手をよく洗ってから、この薬を指先に少しとってうすーく塗ってくださいね。ルーシーさんも同じです。」

 

 楓花は、小袋の底に軟膏を絞り出して口を折った。それを2袋用意した。

 あと数回塗るだけで良さそうなのだ。1本置いていくのは…たぶん、よろしくない。


 「こちらがアーサーさん、こちらがルーシーさんです。毎日湯冷ましを用意して、体を拭いてからこの軟膏を塗ってください。夜寝る前だけでいいです。自分の分は、自分で使い切ってくださいね。」

 「はい。必ずそうする。」


 楓花は、部屋を出て1階へと降りた。

 テンさんとハナさんが寄ってきたので、おしゃべりをする。

 2人はまだ十分には戦えないから、採取を頑張っているようだ。

 それならきっと、2人が元気になったら教えてもらえることも多そうと勝手に決めていた。


 「フーカさん、少しいいですか?」

 「はい?」


 ケントさんが、その場で床にひれ伏した。


 「えっちょっと…顔を上げてください。」

 「いえ、こんなにしてもらって申し訳ないと思うけれど、助けてもらえて本当にうれしい。」

 「私も、助けられてよかったです。お二人に、体力があってよかった。」

 「フーカさんの術がなければ助けられなかった。」

 「そんなことは…」

 「大袈裟ではない。あれほどの傷はエリクサーをもっても助からない。あなたの手当が適切だったからだ。」

 「それは…よかったです。それなら、アーサーさんにお礼を請求してもいいのかしら?」

 「当然です。何がいい?俺たち全員あなたのためなら何でもする。奴隷にでもなんにでも…。」

 「奴隷は求めていないわ。私が来た時には、薬草の採取とかその時に知りたいことを教えてもらえますか?あとは、狩りのお願いもするかもしれません。」

 「そんなことは、いつでもする。この家や土地はどうです?」

 「そういうのは、いりません。そうね…来た時に、駐車させてもらえたらうれしいかな。」

 「その程度では、お礼にはならない。」

 「そういうのが、いいです。かしこまったものは、いらないの。私が、こちらに来た時に、庭を貸してほしいし。薬草採取や狩りに、同行してほしいの。」

 「わかった。それなら…それに加えて、楓花さんが外に出る時には、護衛をする。楓花さんの存在が町に広がらないよう噂を抑えるように対応をする。それでどうだろうか?」

 「十分です。あとは、そうですねぇ…皆さんが健やかにいられたらそれでいいです。」


 楓花の何気なく口にした言葉が、本心だった。

 それは、何よりも重要で最優先すべきことだ。

 楓花は、ケントと約束をしてチームハウスを後にした。


 今日は、こちらに来て3日目だ。

 昨日の昼頃に家を出て地球時間ではまだ翌日だ。

 まだまだ時間はある。だけど、わからない事も多すぎるし、いろいろと身につけなくてはならないことと確認した方がいい事も多い。


 魔の森ではなく、もう少し平穏に過ごせる場所で、ゆっくりしたい。

 アートンにいては、天龍の人たちに気を使わせてしまうから、出てきたけれど…どこへ行こうか。

時間はある。

 そうだ、馬車通りの少ない場所へ停めて、ステルスにしていれば目立つこともないし気が付かれない。

 楓花は外に出ずに、少し今までの振り返りと今後を考えることにした。



読んでくださりありがとうございます。

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