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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者:
第2章 イルルジオーネ

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8


 震えている場合じゃない。

 楓花は、警報音を聞きながら、腰の剣に手を添えたものの…抜くことは、できなかった。


 「ぐぁっ…」

 

 くぐもった声を上げて、目前の兵士が倒れた。

 私の後ろには、別の兵士が倒れていた。

 その前では、セイヤさんが剣を抜いていた。

 前に倒れている兵士も、後ろにいる兵士も、車の見守りを頼んだ時の兵士ではなかった。2人共ヘルメットもつけていない。


 「フーカ様、怪我はないか?」

 「なんとか…」

 「焦った…」

 「あの兵士さんはどこ?」

 「ダイはどこだ!」

 「すいません…います…」


 車の下から、兵士さんが出てきた。いくらキャンピングカーで少し車高が高いと言っても、人が入られるほど高かっただろうか…。

 かなりぎりぎりだったようで、ヘルメットは外し頭に擦り傷が出来ていた。


 「無事だったか…」

 「すいません。切りつけられたので逃げ込んでしまいました。」

 「逃げたのでは、警備の意味がないだろう!」

 「はい…や…すいません。」

 「セイヤさん待って、怪我をしているからせめて手当を…」


 セイヤが兵士さんを怒っているので、とりあえず止めた。

 不幸中の幸いで、私は無事で兵士さんも生きていた。

 兵士さんといっても、かなり若そうだ。


 「フーカ様、申しわけない。今度こそしっかりとした者に警戒させる。」

 「はい、お願いします。あなたは一度手当をしましょう。」

 「すいません。ごめんなさい。」

 

 騒ぎを聞いたのか、遠くから兵士らしき団体がやってきた。

 

 「我々は、ヒルストンの見回り兵隊だ。事情を説明せよ。」

 「はい、すみません。私がここで車を守っていたところ…」

 「車?」

 「はい、この魔導車です。」

 「魔導士様が、このようなところに?」

 「お肉を卸しに来ました。」

 「なるほど。」

 「ここにいる人達に見ていた者もいるだろう。聞いて回るといい。」

 「わかりました。」


 兵士たちは、兵士のふりをした犯罪者たちを連れていった。

 彼らは生きているのだろうか?

 甲冑なのだから、滅多なことはないと思いたい。


 「つっ…」

 「ごめんなさい。手当をしましょう。」


 怪我をしてしまった兵士を連れて、買い取り所の中へと入った。

 個室を借りて、甲冑を脱いでもらう。

 まだ手足の細い少年だった。どう見ても小学校高学年か中学生だ。

 大和の子供ほどの幼さはないけれど、体格は細い。

 なるほど…これなら車の下へと潜れるかもしれない。


 「水で洗うから痛いかもしれない。少し我慢してね。」

 「はい…」


 楓花は、バックの中から応急セットを取り出した。それと水のペットボトルだ。ラテックスグローブを付けてから、傷口を見る。頭だから出血が多かったけれど、傷口は大きくはない。傷に水を当てやすいようにこめかみの髪をかき分けた。

 バスタオルを当てて頭から顔にかけてついた

傷をペットボトルの水で洗う。

 洗い流しているだけなのに、傷はやはり消えていく。髪の毛のない傷跡のような物になった。この間も思ったけれど、この世界の人たちの回復力には驚かされる。


 「ん」

 「体の傷も洗ってみようね。」

 「うん…」


 子供らしい返事がほほえましい。

 楓花が、兵士の手足の傷を拭いていくと傷が治っていく。

 セイヤは、ただただ驚いて見ている。

 

 「大丈夫そうですね。」


 楓花が立ち上がる。

 セイヤが、楓花に椅子をすすめた。

 

 「フーカ様、申しわけないのだが…その水でこの傷跡を拭いてもらえますか?」

 「セイヤさんのお顔ですか?傷としては治ってしまっているのに?」

 「ええ、ですが…貴方なら治せたりはしないかと…。」

 「無理だと思いますが…水を掛けるから冷たいですよ?いいですか?」

 「ああ、構わない。」

 「お顔ですからねぇ…横になるといいかな?ソファーにしましょうか」

 

 横になったセイヤさんの顔の近くに膝をついた。

 鼻から口に水が入らないようにタオルを当て、別のタオルを水で湿らせてポンポンと当てていく。

 少し長く当てて傷が消えるように祈った。


 「消えないですね。」

 「そうか…でも、気持ちがいい。」

 「そう?水をそのままかけてみましょう。少し我慢してくださいね。」

 「ん…」

 「少し薄くなったような気もするけれど消えてはいませんね。ご期待に沿えずごめんなさい。」

 「いえ、だめもとでしたから。ありがとうございます。治っても治らなくても、妙にじんわりと気持ちがよかった。」

 「あっちょっと待って、これを少したらしてみます。」

 

 楓花は、高級ポーションを1滴垂らした。

 傷のひきつりがかなり薄れていく。少し見えていた白目が見えなくなった。それだけでも印象はかなり変わった。

 少しは見やすい顔になったかしら?


 「ん…なんだかすごく楽だ。」


 そう言いながら、セイヤさんの両目が開いた。

 右目は傷がひどかったはず…。目はもうだめになっているように見えたけれど…。

 

 「セイヤさん?」

 「え?…ええええ?」

 

 セイヤさんは左目を閉じて手をかざして見ていた。


 「見える…」

 

 傷は残っていて、まだひきつってもいるけれど、会った時よりは薄くなっていた。たとえ片目が見えていても、もうひとつが見えるか見えないかは大きい。

 楓花は、ポーションの瓶をバックに入れた。

 

 「うぉぉぉおおおお!!!」

 

 セイヤさんの雄叫びに、数人が駆け込んできた。

 



読んでくださりありがとうございます。

アイコンタップと合わせて星印を★★★★★~★☆☆☆☆にしていただけると嬉しいです。


明日も、18時と19時30分の2回更新予定です。

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