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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者:
第2章 イルルジオーネ

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 「すいませんね。楓花さん、今計算しているので中で待ってもらえないか?魔導車には見張りの兵をつけておく。」

 「わかりました。よろしくお願いします。」

 「しっかり見張らせる。」


 セイヤさんについていくと、2階にある応接間へ通された。

 

 「そんなに肉が入ってこなかったのですか?」

 

 楓花の問いかけに、セイヤさんが顔を崩した。

 

 「ああ、全然だ。冒険者たちはいるのに、持ち帰らない。いや、帰れないと言った方が正しいか。干し肉がいくらか入ってくるだけで…数年単位でこの状態はきついな。」

 「そんなに?それは、最近ですか?」

 「そうだな。昔はこの辺りにも狼や角ウサギは出ていたが、野原で多少出るくらいだ。それも数が少ないから、狩った者が食べて終わる。だが、数年に1回は大量に出て、町を襲うから、それもまた困る。程よく出てくれるといいのだがね。」

 「まぁ…」

 「だから、町で売られる肉が少なすぎて、農作物しか食べられない。子供が産まれても、細いしなかなか育ちにくい。だから、売ってくれた肉は、産婆たちの家にいる夫人たちには、優先して肉を卸してやりたい。肝臓があるなら、それも頼みたい。」

 「それはそうですね。妊婦さん方には、確かに肝臓はいいですが、1度に食べるのはこのくらいにしてください。急に沢山とるのもよくありません。」

 「そうなのか?わかった。必ず伝える。」


 妊婦にも胎児にも必要な栄養分が豊富だが、ビタミンAは脂溶性だ。一度に大量にとると流産しやすくなる。量の加減は必要だ。


 「失礼します。計算が終わりました。」

 

 職員が1人入ってきて、紙を渡すと下がった。


 「すごいな…オーク肉1537㎏、腱・筋が21㎏、皮が254㎏、心臓5個、肝5個だ。買い取り価格は肉で㎏5000ダル、腱・筋が3000ダル、皮が1500ダル、心臓2万ダル、肝5万ダルでいいだろうか?それからブラックベアーの肉が179㎏、毛皮1枚、心臓1個、肝1個だ。こっちの買い取り価格は肉で㎏1万ダル、毛皮が100万ダル、心臓3万、肝10万ダルでいいだろうか?」

 

 ダルは金額の単位なのだろう。その価値が、よくわからない。まぁ持っていても仕方がないのでなんでもいい。


 「では、それでお願いします。」

 「今、金の用意をする。申し訳ないが少し待ってほしい。」

 「もちろんです。すぐに販売するのですか?」

 「ああ、もちろんだ。町の連中も肉には困っているのでね…これで少しはましになる。」

 「それなら、また狩りをしたら買い取ってもらえますか?他にもお魚とかも釣ろうかなと思っているのですけど…」

 「もちろんだ。ところで…これはどこで仕留めてきたので?こんなに太っていたオークやブラックベアーなんて……、あっ…言えないなら言わなくても…。」

 「いえ、大丈夫ですよ。産地は気になりますよね。魔の森です。」

 「へ?」

 「魔の森です。魔導車だと1日の距離でした。」

 

 セイヤさんは、あっけにとられた顔をしていた。

 町を見てきたけれど、馬車はあるけれど自動車の類は見当たらない。それだと1日での行動距離はわずかだろう。

 車で走ってきたとはいえ、半日がかりだった。

歩きであれば数日かかるだろう。そう考えると確かに動物を手に入れるのは大変なのかもしれない。


 「へぇ…魔の森で狩りを…オークだけでも相当でしたが、ブラックベアーとは…。オーク5頭にブラックベアー1頭ですか?」

 「はい、昨日今日で大変でした。そういえば猪も最初に取りました。」

 「猪?」

 「はい、このくらいの小さな子でした。」

 「その肉もお持ちで?」

 「はい、あります。欲しいですか?」

 「欲しいが、いや…いくら何でも多いから、それは別のところへ。」

 「わかりました。では、そうしますね。」

 

 「失礼します。ギルマス、お金の用意が出来ました。それから肉です。」


 職員がワゴンを運び入れた。

 トレーに布が被せられている。


 「お待たせしました。こちらがブラックベアー肉とオーク肉です。」


 職員がセイヤの前に肉の塊を2つ置いた。

 赤の強い肉と少し黒っぽい肉だ。


 「おぉ、本当にブラックベアーだ!すごい!何年振りに見たのだ?」

 「そうなの?」

 「ああ、俺の顔を抉られて以来だ。あの時は、なんとか治療が間に合って傷も膿まずに済んで助かったが、この傷なら普通は助からん。」

 「それは…大変でしたね。では、これは敵討ちとしてがぶがぶと食べてしまってください!」

 「わははは!そりゃあいいな。面白いお方だ。大変だったが、この上ない幸運さ。片目が見える。手も動くし頭も動く。十分だろ。」

 

 楓花は何と言っていいのかわからなかった。

 この人は、幸いにも出来ることを数える人でよかった。

 違うか、そう思うしかないのだ。

 でも、出来ないことに目を向けて悲しむ人が多い。出来ないことを数えていても、何事も起こせないのだから、出来ることに目を向けられるというのはそれだけで素晴らしいと思う。それは逞しさのひとつかもしれない。


 「そうですね。そうだ、せっかくお近づきになったので、こちらをどうぞ差し上げます。」

 

 楓花は果実グミを1袋渡した。

 

 「これは?」

 「こちらは、果実グミです。みかん味のグミでおいしいですよ。」

 「へぇ…」

 「こうやって開けます。1粒ずつ食べるといいですよ。」

 「どれ…おぉ、果実なのか。んっ…弾力のある実だ…うまぁ…」

 「それならよかったです。」


 楓花がやってみせると、セイヤも同じようにして食べている。

 そうしていると、麻袋が運ばれてきた。


 「おっ金が来たな。一緒に確認をしてくれ。肉170㎏5000ダルで85万ダル、腱・筋が21㎏3000ダルで6万3000ダル、皮が54㎏1500ダルで8万1000ダル、心臓1個3万ダル、肝1個5万ダル…合わせて103万4000ダルだ。大金貨10枚、金貨3枚、大銀貨4枚だ。」

 「はい、確かに受け取りました。お取引ありがとうございます。」

 「これは、登録証だ。基本、このマークのある買い取り所であれば使える。それと、身分証にもなる。失くさないように気を付けて。」

 「わかりました。ありがとうございます。」

 

 渡された身分証は、根付のようなものだった。

 カエデのような絵が描かれている。

 無くさないように、キーホルダーへとつけた。後で、家の鍵類と車やこの世界の物を分けられるようにしておこう。

 

 車へ戻ると、周囲を兵士2人が警戒してくれていた。


 「すいません。ありがとうございます。」

 

 そう声をかけて近づこうとすると「ピーーー!!」と音が鳴った。

 目の前の兵士に、剣を向けられていた。


 「え…」


 一瞬、頭が真っ白になった。

 あっだめだ、背中も無防備になっている。


 背中からも警報音が鳴った。

 即座に後ろを向こうとするけれど、だめだ…足が震えて動けない。




読んでくださりありがとうございます。

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