表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者:
第2章 イルルジオーネ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/61

6


 楓花は、ヒルストンの南門から100mのところに到着した。

 

 楓花はキャンピングカーを停めてキャビンへ移ると、装備を確認した。

 トラブルがあっても、自分を守らなくてはならない。剣を助手席に置き、剣を携えるベルトをウエストポーチの上に取り付けた。

 さらにマントを着た。目立たないようにベージュ色の方だ。



 「ナビ、ステルス解除。」

 『かしこまりました。ステルスを解除します。』

 

 車を走らせて門の前へ行くと、甲冑を着て槍を持った人たちがいた。

 車を見つけた兵士2人が槍を構えてバツ印を作る。

 その脇にいた兵士4人が槍を立てて近づいてきた。

 完全に不審者に対する対応だろう。


 楓花は緊張して、窓を少しずつ開けた。


 「魔導士様ですか、どういった訪問でしょうか?」

 

 一応、丁寧に聞いてくれた。魔導士ってまたか…面倒だし訂正はしない。

 楓花は兵士たちの様子を見ながら窓を開けた。

 

 「お肉を売りに来ました。」

 「肉ですって!?このヒルストンに?」

 「はい、オークとブラックベアーを買ってもらいたくて…」

 「オークにブラックベアー!?わかりました!どうぞ、中へお入りください。まっすぐに走ると、広場の先に冒険者ギルドがあります。最初に出てきた茶色い建物の前に止めてください。」

 「広場の先ですね。ありがとうございます。」


 兵士の見送りを受け、楓花は塀の内側へと入っていった。

 門を入ると、石畳が続いていた。

 アートンとは異なり、白い石を積み上げられた建物が並んでいた。その中に、茶色い石でできた建物が見えた。とても目立つ。


 「あれかな?」

 

 車を停めると、入り口に立っている兵士2人のうちの1人が走ってきた。

 体が細くて薄い。まだ少年らしい。


 「こんにちは。」

 「こんにちは、ヒルストンへ、ようこそ。魔導士様、ご用件をお伺いします。」


 また魔導士?

 なぜ魔導士と呼ばれるのかよくわからない。でも、そうか…マントには身元保証がついていた。そのせいかな?


 「お肉を売りに来ました。初めて来たのですが、買い取りしてもらえますか?」

 「魔導士様、他の冒険者ギルドの登録証などはお持ちでしょうか?」

 「ないです。どうしたらいいでしょう?」

 「では、私が魔導車を見ていますから、先に登録をしてください。」

 「ありがとうございます。では、お願いします。」


 楓花は、キャンピングカーを降りた。ガードは発動しているので、そう問題は起きないはず。

 建物の中に入る。自然光のみの明かりの中で人々は仕事をしているようだ。 

 勝手がわからないので聞いてみるしかない。

 楓花は人の少ないカウンターに向かった。

 近づくと、顔に大きな傷のある男が腕を組んで下を向いて座っていた。

 右目の周辺に大きな傷があり、白目が少し見えているので、片目は見えないのだろう。がっちりとしていて、背は高いけれど身体は細い。


 「すいません。初めて来たのですが、登録をお願いできますか?」

 「ん?」


 担当者が顔を上げて、楓花を見た。上から下まで視線を走らせていたが、一瞬胸元へと視線を止めた気がする。

 

 「魔導士様が、うちに登録ですか?」

 「オークのお肉を買って欲しいのです。その為には登録すると聞いたのですが…。」

 「肉ぅ?まじで?売ってくれるのか?」

 「はい。車に積んできたので…。」

 「すぐに登録手続きをしよう。これに、名前と所属があれば…ああ、ヒシ家だからそれでいい。」

 「え?」

 

 男が、自分の胸元をチョイチョイと突いて見せた。

 楓花は自分を見ると、マントの胸元に菱形の刺繍が入っている。

 なるほど、このマントが身分を保証してくれたようだ。これは遺産として引き継いだだけで、私の物ではないけれど…いいのだろうか?

 受け取った紙を見て、男が声をあげながら楓花の顔と紙を見比べた。


 「え?40ぅぅ!?」

 「ギルマス!ご婦人に失礼です!」


 後ろの女性職員が、注意してくれた。

 ギルマスということはここのトップだったのね。 


 「はい…おばちゃんですみません…」

 「いやいや、大声出してごめん。」

 「いえ…。」

 「俺はセイヤだ。肉を売ってくれる人は、大歓迎だ。」

 

 近くに来た別の職員に、ギルマスが紙を渡して指示を出した。


 「今、登録証を用意する。肉はどのくらいある?ここに持ってこないなら、荷車くらいの量はあるのか?」

 「はい!」

 「はぁ!?」


 冗談のつもりだったの?

 倉庫にある分を考えるとそのくらいにはなると思うけれど…。不安になってくる。いや、ブラックオーク1頭でもアートンでは賑やかだった。きっと大丈夫だ。


 「オーク5頭分とブラックベアーがあります。」

 「まじで?」

 「はい。」

 「すぐに荷車を用意する。どこにある?」

 「正面に車を止めています。道路側に取り出せます。」

 「わかった。すぐに行く。先に行って待っていてくれ。」

 

 車に戻り、兵士に礼を言うと元の位置に戻った。

 セイヤさんが、男数人で荷車を引いてやってきた。


 「待たせた。」

 「いえ、では出しますね。ちょっと重いので板を乗せてもいいですか?」

 「ああ、もちろんだ。」

 「今、取り出しますね。」

 

 楓花が倉庫に入る。倉庫の床面から荷車にかけて、板をかけた。

 

 「では移しますね。」

 「ああ、頼む。」


 楓花がビニール袋を板へと乗せていく。板の上を滑り落ちた肉は荷車へ落ちるのだけれど、途中で人が走っていって追加の荷車を持ってきた。

 結果的に荷車6台分運んだようだ。1台に山積みにするわけではないから台数だけが増えたのだ。

 肉を下ろしているうちに人が集まってきていた。


 「これが最後、皮でこちらが耳、心臓と肝で…す…。」


 楓花が倉庫から降りる。セイヤさんが、目を潤ませていた。


 「女神だ!」

 「ええっ…大袈裟な…」

 

 「すぐに産婆の家へ知らせを出せ。」

 「広場に肉の販売を知らせろ。」


 セイヤさんが、周囲にいる人たちに指示を出した。

 



読んでくださりありがとうございます。

アイコンタップと合わせて星印を★★★★★~★☆☆☆☆にしていただけると嬉しいです。



明日は、18時と19時30分の2回更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ