21
いつもよりは長めです。
どのくらいの長さが適切なのか、いつも悩みます。
移動途中で簡単に読むなら2000文字前後かな?と思ってはいるのですが、今日の話を途中で切るのも少し違う気がして、いつもの2話近い文字数を1話にしました。
「あんなに暖かい場所で眠れて、あんなに豪華な食事まで…」
あれ?違う?
楓花は、ケントの返答に戸惑っていた。
宿代わりだから、暖かいのは当たり前だ。
食事は、豪華ではないと思う。その場で手に入れたウサギ肉にトラウトだから、実際に持ち出しで提供したのは、パンと野菜だけだ。
「えっと、ベッドが小さかったのは申し訳なかったと思うけど…。」
「いや、見合わない。」
「では、今後の参考のためにおいくらぐらいが適正ですか?」
見合わないと言われてしまっては、どのくらいが適切だったかは聞いておかないと。感謝されていると思ったけれど、実は見合わない待遇に怒っていたの?
それなら、今後のために確認しておかないとならない。
「あの部屋であの食事付きで?」
「食事ありとなしと両方聞きたいかも…。」
「そうだな…場所にもよるけれど…」
「ああいった何もない場所だとしたら?」
「それなら、金貨1枚でもいいと思う。食事は大銀貨5枚。」
あれ?
大銀貨の価値はわからないけれど、金貨の方が多いのでは?
それとも銀貨、金貨、大銀貨とか?
「あの…大銀貨の価値って金貨より高いですか?」
「…金貨1枚は大銀貨10枚の価値だ。」
「ええっ?かなり高すぎませんか?」
「高くない。普段3日かかるルーシーの魔力が、たった1晩で完全回復した。あんなに豪華な食事をあの森の中で食べられた。どれも貴重な経験だ。」
「その魔力の回復だけでその宿代になるの?」
「もちろん、それだけで価値があります。3日が1日に短縮できたもの」
「ルーシーさん。そうなのね。ちなみに…一般的に、この町で家を借りたらおいくらぐらいしますか?」
「家賃ですか?」
「そうですね、私たちのチームハウスで金貨2枚です。」
「へぇ…」
一般的な感覚としていうなら、金貨1枚は大和円にすると10万円ほどの価値があった。チームハウスの家賃は、月20万円相当だった。
楓花は、金貨の価値を知らない。
なるほど、チームハウス1晩で金貨2枚なら、何もない森で安心して過ごせて、魔力の回復が早いなら、金貨1枚でも妥当なのね…楓花はそう受け取った。
ちなみに、受け取った肉の代金は、金貨50枚と少しあった。100㎏ほどの肉の代金が、50万円ということは、1㎏辺り5000円の高級肉なのだ。そのことも、楓花を誤解させるのには、十分だった。
金貨1枚1万円くらい?そうすると、大銀貨で1000円?銀貨100円の銅貨10円かな?
串焼き30円ってこと!?
お得だったのね。
一桁違うのだけれど、楓花が気付く要素がどこにもない。
あるとしたら、宿泊費1000円ってバカにしているのか?と考えるところだけれど、キャビンホテルや二段ベッドの1台を借りて寝るようなドミトリーでも平気な楓花だ。それらは、大和でも場所にもよるが 5000円出さずに泊まれる。
キャンピングカーだものと考えて終わりだった。
それを1万円払ってもいいって言ってくれるのは、よほど気に入ってくれたのかな?森の中で怖い思いをしたから尚更そう思ってくれただけね。と思っただけだった。
楓花は、アートンで3日過ごしていた。
屋台や商店街を散策し、町の名物だという刺繍の入った布袋などを購入した。
小さい物で銀貨1枚、大きいショールなどは金貨が必要なようだ。
楓花は、キャンピングカーの1階のベッドで寝泊まりをしていた。
今のところ3階に上がる必要はない。
トイレもシャワーもあり、ソファーセットとベッドがある。
生活スペースとしては、十分だった。
もらった熊肉は大きな塊肉だったので、ケントさんに厚さ5cm長さ15cmほどの板状に切り分けてもらった。それを冷凍してから半解凍にして切ることにした。
そのため、持ってきた小分けの肉を先に食べていた。
そして、楓花は車の説明書を読みこんでいた。
マップに登録することが出来るらしい。それとは別に、空間記録というものもあるようだ。ナビから空間記録の画面を開くと、①大和の自宅(岡野宮)があった。
大和の自宅!?
もしかして、これで家へ帰られる?
多分…大丈夫、帰ることが出来る。
いろいろとわかった事もあるので、挨拶をしてアートンを後にした。
「さてと…空間移動のための記録をしますか。」
フーカは、アートンを出て門番から100mほど壁沿いに離れると、さっそく登録を試した。登録番号は④にした。最初のあの湖をマップから探し出して③に登録する。
「では、試してみますか…」
楓花がボタンを押した。
『かしこまりました。自宅へ空間移動します。そのままお待ちください。』
真っ白になり、気が付くと車庫にいた。
見慣れた景色に脱力した。
「帰れた…よかった…。もうここに帰られないかと…あっ!でも…仕事は大丈夫?」
スマホを開くと、まだ翌日だった。
出かけたのは25日の17時頃だったのに、今は26日の22時だった。
「へ?」
確か、虹湖で1泊したしアートンに3泊したはず。4泊5日は経過している。
それなのに土曜の夜?
運転席をみると、あのボタンたちが消えていた。
運転席からキャビンへ行こうとしたけれど、ドアはない。
車から降りて、キャビンを開けるといつもの狭いキャビンだった。
テーブルに置いていた物は小さな折り畳みテーブルに置かれていた。
「あのベッドはどこ?それにバックも何もないわね…。夢だったかな?」
そう思いつつ、念のために冷蔵庫を開けた。
そこには、ブラックベアーの肉の柵が入った袋が入っていた。
「ブラックベアーの肉…やっぱりあれは夢じゃない…。」
楓花は家へ入り、肉を冷蔵庫へ入れるとトイレの前の本棚の引き出しを開けた。
そう、あのコインは見たことがあった。
引き出しには、あれと同じコインや違う柄のコインが大量に入っていた。
「沼田さんって何者だったの?そしてまだ土曜日…お休みはあと9日もある。」
「ふぅ…」
楓花は、バスルームにいた。
スマホは、防水ケースに入れて持ち込んでいる。
夢みたいな数日だった。
どう考えても4泊はしていた。それなのに、戻ってきたら出発した日の翌日…気を付けて管理しないと、日にちがわからなくなりそう。
「スマホは、向こうで使えるのか確認しなかった。使えるのか、使えるとしたら大和時間で経過するのか確認が必要だよね…」
ここに帰ってくるのに自宅ボタンでワープ出来たから、アートンに行くのもボタン一つかな?
だめだ、お風呂が気持ちよくて、このまま眠ってしまいそう。
楓花は、風呂から上がり、肌のケアをする。
40歳になったからか、元々乾燥肌だからかわからないけれど、お風呂を出てすぐにローションは必須だった。顔に塗り、そのまま首やデコルテに塗ると、手足やボディーと雑に塗りつけた。それから、乾燥しやすい顔と腕や足には、クリームも塗った。
髪は、適当にドライヤーをかけて、ある程度乾かした。完全に乾くまでやらないのは、面倒だからだ。
キッチンへ行き、白湯を飲む。
テレビをつけても、本当に1日しか経過していない。金曜の夜から出て、4日なら1日が3日くらいのスピードの差がある?
でも、それって…私の時間だけが3倍で経過するの?そうだとしたら、あの世界にはいかない方がいいだろう。早く年を取ってしまう。
でも、そうではないなら、休日に遊びに行くのは悪くない。
寝室に戻ると、あっという間に眠ってしまった。
手厚いキャンピングカーだとしても、やはり慣れない場所での生活では疲れがたまっていたようだ。
天龍のメンバーは、楓花と過ごしたこの数日を思った。
若くはない女性だが、町を案内するとなんてことのない物に目を輝かせていた。
見慣れない道具を取り出し、夜になると食事をごちそうしてくれた。
作ってくれる食事は、どれも見たことのない美味しい料理だった。
荒れていない白い肌に、まっすぐな指をしていた。
もしかしたら、あまり外に出たことのない人なのかもしれない。大魔導士になるための訓練ばかりして過ごした人なのかもしれない。お医者様に連れていくようにと言いつつも、綺麗に傷を治してくれた。
いや、そもそも医者というのは王家や高位の貴族のための者で、庶民には関係のない存在だ。
それに連れていけと言うくらいだ。
そういった地位にいる家の人であり、そんな当たり前の事を知らないのだろう。
もしも、そうだったら……もう会えないのかもしれないな…。
読んでくださりありがとうございます。
リアクションと合わせて星印を★★★★★~★☆☆☆☆にしていただけると嬉しいです。




