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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者:
第1章 物語の始まり

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20


 楓花は、ケント達に付いて行きながら専売の意味について考えていた。

 塩ギルドは、立派な造りの建物だった。

 石造りの建物は荘厳だ。1階の壁には装飾も施されていた。


 「フーカさん、ここが塩ギルドだ。」

 「お塩ってどのくらいしますか?」

 「銀貨1枚でこのくらいかな?」

 

 ケントさんは人差し指を立てて見せた。

 それって1㎏?

 単位はどのくらいなのか?㎏なのかガロンなのか…それとも別の何かなのか?

 買ってみればわかるよね?

 それにしても、大銀貨って宿泊料金って言っていたよね?

 肉串1本が銅貨3枚で、宿泊1泊が大銀貨1枚…銀貨でどのくらい買えるのかな?あまり大量でも困る。この世界の塩の品質を知りたいだけなのだ。


 塩ギルドに入ると、いい服を着た人がカウンターの中に立っていた。

 とても品のある立ち姿だ。

 塩ギルドに勤めている人たちは、特権階級なのかもしれない。


 「すいません、お塩をください。」

 「いかほどご用意しましょうか?」


 「いらっしゃいませ」とかの出迎えの言葉は、ないらしい。


 「銀貨1枚分で…」

 「銀貨1枚ですか、入れ物のご用意をしてお待ちください。」


 店員さんは、後ろを向いた。

 入れ物?何かあったかな?

 楓花は、バックの中のインナーバックを見た。


 インナーバックに、ジッパー袋を入れていたはず。

 小さいけれど入るかな?

 ジッパー袋は3枚あるようだ。入りきらなければ3つに分けてもらおう。

 とりあえず、1枚取り出すと、口を開けて上部をひっくり返した。これで安定して口を開いておける。


 店員さんが、天秤を置き、皿に分銅を載せて反対側に塩を乗せ始めた。

 反対側の器は、お茶碗くらいの大きさだった。

 銀貨の価値ってそれほどでもない?

 それとも塩が高い…?塩が高い方が正しい気がする。

 塩の商売だけでこの建物だなんて、暴利すぎる。


 「入れ物はどちらに?」

 「これにお願いします。」

 

 楓花が、袋の口に手を入れて広げて差し出した。

 

 「は?はい!」

 

 楓花の持つ袋を凝視した後、そこにどんぶりの塩を入れてくれた。

 200gあるかな?

 ないような気もする。


 楓花は、ジッパーをプチプチと閉めてから、指先で挟んでスライドした。

 スライダー付の物もいいけれど、これで十分役に立つと思っているので、枚数の多いスライダーのないタイプを好んで使っていた。

 バックに忍ばせてあるのは、少し厚みのあるタイプだ。

 出先で使うなら、薄い物では心もとないことがあるからだ。

 

 「お客様、そちらの袋は一体どういったものでしょうか?」

 「これ?ジッパー袋よ。」

 「お客様、もしお持ちでしたら、銀貨5枚でお譲りいただけませんか?」

 「え?」

 「すみません。安過ぎましたね。大銀貨1枚ではいかがでしょうか?」

 「えっと…」

 

 袋が宿代と同じくらい?

 この袋が?

 目の前の店員さんは真剣で、からかっているわけではないようだ。

 最初の提案の倍というのも、商売人ならそのようなものなのだろうか?

 

 「無理に渡す必要はないですよ。」


 ルーシーさんが、耳打ちしてくる。

 つまり、店員さんの提案はそうおかしくもない?

 もし、もう大和に戻れなかったら、貴重な品になるかもしれない。

 キャンピングカーに数箱積んだ覚えはあるけれど、数の確認はしていない。

 

 「すいません。1枚だけでもいいですか?」

 「もちろんです。このように貴重な品をお譲りいただけるなら、1枚でもありがたいです。」

 「では、1枚と大銀貨1枚の交換ですね。」


 楓花は、1枚だけ大銀貨と交換した。

 店員さんは、大事そうに手に持っている。

 丁寧な所作だった。

 

 「フーカさん、よかったの?」

 「ええ…1枚ならいいかな…」

 「貴重なものなのでは?そのような品は見たことがない。」

 「そう…よいのならいいけど…。」

 

 渡したのはまずかっただろうか?

 やってしまったことは仕方がない。様子をみましょう。

 諦めが早いのは、楓花のいいところだ。たぶん、きっと。

 

 「屋台は楽しいですけど、お塩が高くてびっくりしました。」

 「そうですか?塩は必要なので買います。砂糖が、手に入れられずすいません。」

 「いえ、それは仕方がないけど…みんななくて困らないの?」

 「ええ、砂糖なんて何に使います?」

 

 ルーシーさんに問われて驚いた。

 パンのある世界なら、仕込みに使うと思うけれど使わない?

 砂糖精製が広まる前は、硬いパンしかないのだった?

 イーストの膨らむ工程で砂糖が、消費されると思っていたけれど、違う?

 楓花は、頭の中でいろいろと考え始めた。

 

 「普段ってみなさん何を食べているの?」

 「普段?そうですねぇ…」

 「たいていはパンだな。フーカさんの用意してくれたような白くて柔らかい物ではなくて、もっと硬くて黒くて独特の風味のあるやつ。それと芋か。あとは…野菜と肉を食べる。野菜は大抵スープで煮込んでいて、肉は生の物は少なくて、干した物をスープに入れて煮込む。」

 「そうですか…では、屋台の食事はごちそうですね。」

 「そうだな。」

 「宿というところは、どんな感じですか?大銀貨1枚の宿ってどんな感じ?」

 「ああ、それなら…あれとかだ。」


 ケントさんが指さしたのは、小さめのかわいい宿だった。

 なるほど、あれと同程度と思われたなら納得だった。

 もちろん、比べられるほどの広さもないだろうけれど…。


 「正直、見合わない金額の提案をしたと思っているごめん。」

 「え?そうですよね、やっぱり。」


 やっぱり、寝床しかない部屋であの金額は高いよね。

 




読んでくださりありがとうございます。

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