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楓花は、ケント達に付いて行きながら専売の意味について考えていた。
塩ギルドは、立派な造りの建物だった。
石造りの建物は荘厳だ。1階の壁には装飾も施されていた。
「フーカさん、ここが塩ギルドだ。」
「お塩ってどのくらいしますか?」
「銀貨1枚でこのくらいかな?」
ケントさんは人差し指を立てて見せた。
それって1㎏?
単位はどのくらいなのか?㎏なのかガロンなのか…それとも別の何かなのか?
買ってみればわかるよね?
それにしても、大銀貨って宿泊料金って言っていたよね?
肉串1本が銅貨3枚で、宿泊1泊が大銀貨1枚…銀貨でどのくらい買えるのかな?あまり大量でも困る。この世界の塩の品質を知りたいだけなのだ。
塩ギルドに入ると、いい服を着た人がカウンターの中に立っていた。
とても品のある立ち姿だ。
塩ギルドに勤めている人たちは、特権階級なのかもしれない。
「すいません、お塩をください。」
「いかほどご用意しましょうか?」
「いらっしゃいませ」とかの出迎えの言葉は、ないらしい。
「銀貨1枚分で…」
「銀貨1枚ですか、入れ物のご用意をしてお待ちください。」
店員さんは、後ろを向いた。
入れ物?何かあったかな?
楓花は、バックの中のインナーバックを見た。
インナーバックに、ジッパー袋を入れていたはず。
小さいけれど入るかな?
ジッパー袋は3枚あるようだ。入りきらなければ3つに分けてもらおう。
とりあえず、1枚取り出すと、口を開けて上部をひっくり返した。これで安定して口を開いておける。
店員さんが、天秤を置き、皿に分銅を載せて反対側に塩を乗せ始めた。
反対側の器は、お茶碗くらいの大きさだった。
銀貨の価値ってそれほどでもない?
それとも塩が高い…?塩が高い方が正しい気がする。
塩の商売だけでこの建物だなんて、暴利すぎる。
「入れ物はどちらに?」
「これにお願いします。」
楓花が、袋の口に手を入れて広げて差し出した。
「は?はい!」
楓花の持つ袋を凝視した後、そこにどんぶりの塩を入れてくれた。
200gあるかな?
ないような気もする。
楓花は、ジッパーをプチプチと閉めてから、指先で挟んでスライドした。
スライダー付の物もいいけれど、これで十分役に立つと思っているので、枚数の多いスライダーのないタイプを好んで使っていた。
バックに忍ばせてあるのは、少し厚みのあるタイプだ。
出先で使うなら、薄い物では心もとないことがあるからだ。
「お客様、そちらの袋は一体どういったものでしょうか?」
「これ?ジッパー袋よ。」
「お客様、もしお持ちでしたら、銀貨5枚でお譲りいただけませんか?」
「え?」
「すみません。安過ぎましたね。大銀貨1枚ではいかがでしょうか?」
「えっと…」
袋が宿代と同じくらい?
この袋が?
目の前の店員さんは真剣で、からかっているわけではないようだ。
最初の提案の倍というのも、商売人ならそのようなものなのだろうか?
「無理に渡す必要はないですよ。」
ルーシーさんが、耳打ちしてくる。
つまり、店員さんの提案はそうおかしくもない?
もし、もう大和に戻れなかったら、貴重な品になるかもしれない。
キャンピングカーに数箱積んだ覚えはあるけれど、数の確認はしていない。
「すいません。1枚だけでもいいですか?」
「もちろんです。このように貴重な品をお譲りいただけるなら、1枚でもありがたいです。」
「では、1枚と大銀貨1枚の交換ですね。」
楓花は、1枚だけ大銀貨と交換した。
店員さんは、大事そうに手に持っている。
丁寧な所作だった。
「フーカさん、よかったの?」
「ええ…1枚ならいいかな…」
「貴重なものなのでは?そのような品は見たことがない。」
「そう…よいのならいいけど…。」
渡したのはまずかっただろうか?
やってしまったことは仕方がない。様子をみましょう。
諦めが早いのは、楓花のいいところだ。たぶん、きっと。
「屋台は楽しいですけど、お塩が高くてびっくりしました。」
「そうですか?塩は必要なので買います。砂糖が、手に入れられずすいません。」
「いえ、それは仕方がないけど…みんななくて困らないの?」
「ええ、砂糖なんて何に使います?」
ルーシーさんに問われて驚いた。
パンのある世界なら、仕込みに使うと思うけれど使わない?
砂糖精製が広まる前は、硬いパンしかないのだった?
イーストの膨らむ工程で砂糖が、消費されると思っていたけれど、違う?
楓花は、頭の中でいろいろと考え始めた。
「普段ってみなさん何を食べているの?」
「普段?そうですねぇ…」
「たいていはパンだな。フーカさんの用意してくれたような白くて柔らかい物ではなくて、もっと硬くて黒くて独特の風味のあるやつ。それと芋か。あとは…野菜と肉を食べる。野菜は大抵スープで煮込んでいて、肉は生の物は少なくて、干した物をスープに入れて煮込む。」
「そうですか…では、屋台の食事はごちそうですね。」
「そうだな。」
「宿というところは、どんな感じですか?大銀貨1枚の宿ってどんな感じ?」
「ああ、それなら…あれとかだ。」
ケントさんが指さしたのは、小さめのかわいい宿だった。
なるほど、あれと同程度と思われたなら納得だった。
もちろん、比べられるほどの広さもないだろうけれど…。
「正直、見合わない金額の提案をしたと思っているごめん。」
「え?そうですよね、やっぱり。」
やっぱり、寝床しかない部屋であの金額は高いよね。
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