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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者:
第1章 物語の始まり

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19

 橘楓花は、アートンへ到着したので天龍のチームハウスの庭先に車を停めさせてもらうことになった。


 家を出て10日間の大和縦断旅をするつもりが、なぜか知らない世界を走っていた。

 湖で釣りをしているとウサギがガードにぶつかり死んでしまったので、命を頂こうと血抜きをしていたら、ブラックベアーという大きな熊がやってきた。

 その熊を仕留めてくれたのは天龍の3人だった。チーム5人のうち2人が、大怪我をしていたのだ。

楓花は彼らの応急処置をして、有料で部屋を提供することにした。

 5人にお茶を出し食事を出した。

 知らない世界を知るために5人に町を案内してほしいと頼み、帰りたい彼らと利害が一致したので。一緒にこのアートンへやってきた。

 アートンにある天龍のギルドハウスの庭先を借りて、少し周囲の確認をしようと思った。

 


 到着した翌朝、楓花は町へ出る準備をする。

 目立たないように、ロッカーの中のマントを取り出した。

 これは、ここに来るまでの町の人たちの服装の色合いに近い。これを羽織っていれば、大和の服装は見えにくい。変な目で見られることもないだろう。


 念のために、ショートソードも腰に下げた。

 斜め掛けバックにお金の入ったお財布を入れた。後は、いつも使っているバックからインナーバックを取り出した。ハンカチやティッシュ、ウェットシートなどと140ccのミニボトルも入っている。ミニボトルには先ほど淹れたコーヒーが入っている。

 いつもならそれなりに重いのに、めちゃくちゃ軽い。

 

 「えっ軽い。このバックすごくいいかも…。」


 A3サイズで大きいけれど、物が入っている感じはしない。

 斜め掛けと言っても少し後ろにしてお尻のあたりにしても安定していた。

 日焼け止めを塗り、色付きリップクリームを塗る。

 年齢的には、きちんと化粧をした方がいいのはわかっているけれど、面倒だった。

 夫が亡くなるまでは、毎日化粧をしていたのに、横着な生活をしていると面倒に思ってしまうのだ。

 だから、せめてもとリップクリームだけは、色付きを使っていた。甥っ子には中学生の女子みたいと言われていた。

 その上からマントを着て外に出た。


 「お待たせしました。」

 「…」

 

 ルーシーさんと隣にケントさんが立っていた。

 

 「紅を塗ったのね。綺麗だわ。」

 「そうですか?おばさんですから、少しくらいは手入れしないと…」

 「いやいやいや…」

 「お気遣いありがとう。案内をお願いします。」


 これ以上気を使わせてはまずいと思い、案内をお願いした。

 なぜか、ルーシーさんだけではなく、ケントさんまでついてくる。


 「アートンは、国の中でも小さな町です。でも、人が優しくて過ごしやすいです。」

 「そう、いいところなのね。」

 「はい、ダンジョンなどはありませんが、織物と刺繍が有名です。」

 「へぇ…刺繍…」

 「お好きですか?」

 「見るのはね。自分ではしないです。」

 「でしたら、見てみてください。商店街に行くとお店がたくさんあります。」

 「はい、食べ物はどんな物がありますか?」

 「食べ物ですか?う~ん…フーカさんのお口に合うかどうか…」

 「どういうこと?」

 「パンは、フーカさんが用意してくれたより硬くて、もっと独特の臭いがあります。」

 「匂い?ハードパンも好きですけど…」

 

 石畳の町を歩いていると、広場に出た。

 屋台が立ち並び、いろいろな商品が並んでいる。


 「わぁ…お店がたくさん!」

 「はい、ここが一番賑やかな場所です。串焼きはリンゴの入ったソースで美味しいです。」

 「へぇ…食べてみたい!お二人も食べますよね?」


 そう言って、楓花は行列に並んだ。行列と言っても10人ほどなのですぐに順番が来た。

 

 「お待たせ、何本だい?」

 「3本お願いします。」

 「はいよ。銅貨9枚だ。」

 

 銅貨?

 楓花はお財布を開けると丁度、遺物で小さなコインが見えた。

 これかな?

 銅貨9枚を取り出した。

 

 店員のお兄さんが3本出したので、ルーシーさんとケントさんへ1本ずつ渡した。

 楓花は手にした串にかぶりつく。


 甘酸っぱいソースと肉が合っていておいしい。

 欲を言うならもう少し塩が欲しいけれど、これがここの味なのだろう。


 「美味しいですね。」

 「よかった。」

 

 ケントさんとルーシーさんは安心したように笑って食べ始める。

 食べ終えると、竹の切った物が立っていてそこに捨てていた。

 あれがゴミ箱なのか…。


 屋台には、八百屋さんや肉屋さんもあった。

 肉屋さんには、昨日持ち込んだブラックベアーの肉が積まれていた。


 「あれって…」

 「俺たちが持ち込んだ肉だな。」

 「人がたくさん並んでいるわ。」

 「ブラックベアーの肉は人気がある。うまいからね…」

 「そうなのね?それなのに、毛皮と爪だけを持ち帰ろうとしたの?」

 「ええ、まあ…干し肉にできる分はするつもりでしたけど…出先だと難しい事もね…」

 「それはもったいない…ような…」

 「仕方ないのよ。私たち歩きでしたからね。持てる分を持ち運ぶにも、1人5㎏ずつくらいかな?でも今回は怪我人もいて、それは出来ないはずだったから…」

 「…そうですよね。歩きだと持ち運びは難しいですね。」

 「ええ、そのつもりだったけど…フーカさんのおかげで全部持ち帰ることができたから。大金を手にできました。」

 

 ケントさんが満面の笑みを浮かべた。

 子供のような屈託のない笑顔だ。

 彼らは半分をくれたはずなのに、残ったお金でも大金なのか…。それなら、彼らから受け取ったお金は…。


 「フーカさんのおかげで5人揃って帰ることができて、大金も手にできた。上出来だ。フーカさんは何か悩んでいるようだけど、何か俺たちにできることはありますか?」

 「えっ…ああ…たくさんもらってよかったのかと心配になってしまったわ。」

 「あれは、当然の対価にも足りていない。だから、遠慮なくいつでも、いつまででも庭に魔導車を停めていい。それでも足りないと思うから。」

 「ありがとう。私は場所を借りられるととても助かるわ。」


 なんと言っていいかわからず、お礼を言う。

 ルーシーさんとケントさんは笑みを浮かべているから、合っているはず。

 何より、今の私には居場所がない。

 身分証もない怪しい旅人だ。

 彼らが一緒にいるから不審者扱いされずに済んでいるに過ぎない。


 

 「ルーシーさん、調味料のお店はありますか?」

 「調味料?」

 「お塩とか、お砂糖とか…」

 「塩なら塩ギルドで取り扱っているけど、砂糖ギルドはこの町にはないのよ。」

 「近くだとどこにあっただろうか?」

 「首都ならあるかしら?」

 「領都でもある気がする。」

 

 塩も砂糖も専用ギルドの取り扱い?

 それって専売ってことよね?

 それに、砂糖は首都か領都ってことは…かなりの貴重品扱い…。

 これは、言動と行動に気を付けないとまずいかも…。



読んでくださりありがとうございます。

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