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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者: 夢
第20章 深淵とは何か

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20


 

 ジリアント伯爵たちは、楓花の魔導車に乗りベッドへ座って数分でヒシフォートに到着したと声をかけられた。


 「もう!?」


 騎士たちと顔を見合わせた。

 騎乗で向かった時には数日がかりの距離だ。

 早馬でも1日はかかる。

 

 「フーカ様は、規格外すぎるな。」

 「閣下、あのお方の我々の常識に当てはめるのは…。」

 「そうだな。不敬だな。」

 「それにしても、あのような舞は初めて見たが美しかった。それにあの鈴の音がまたよかった。」

 「はい、あのような舞は初めて拝見しましたが…心が洗われるようでした。」

 

 それから、元帥閣下と聖神殿の神職と聖女の取り扱いと制限について話を詰めた。

 聖水が本物になったこともあるが、それよりも聖水の泉の周辺が変わったこと。

 その理由を問われた時の返答や国王や国へどこまで説明するかを話し合い、周知する方向性も話しあった。

 そして、祈りに作法が必要であり、欲望をぶつけぬよう民に周知する必要もあった。それについては、戻ってから聖職者たちと話す必要はあったが、今は彼らも考える時間が必要だろう。

 聖職者たちは、教皇や枢機卿、聖騎士の半数を失った事に動揺している。聖水がただの水になっていた事実。それが判明した直後に、レベルアップした聖水になるなど予想外の連続で心身ともに疲弊しているだろう。

 

 だが…。

 ジリアント伯爵は、女神が目の前にいるのに何を悩むのかと思っていた。


 楓花が与えてくれる恩恵しか見ていないジリアント伯爵にとって、楓花は人間ではなかった。

 鬼人の目を通すと、楓花は常に薄く発光している。

 聖神殿の中庭では、周囲には妖精未満の光が集まり、水路を掘り、人型の妖精までもを生み出していた。奇跡を起こした神にしか見えなかったのだ。



 

 主神アリフレーゼに、個人的な要求を行うべからず。

 主神の前に立つ時には、心を無にし、安寧のみを祈るべし。喜びと礼を伝えるのは良い。


 寄進の使い道は、半分を神職および関係する孤児院・養護院の生活費となる。

 1/4は、教会施設の維持管理に使い、残り1/4は教育および備蓄とし民のために使う。

 

 

 この2つが聖書の前書きに加わった。

 寄進の使い道を公表することに、枢機卿たちは反対した。

 だが、元帥閣下の「後ろめたいことがないならば公表すべき」との言より、前書きとなった。

 不思議なもので、公表すると民たちからの不満は減ったようだ。

 建物の維持管理と同額が、信徒のために使われると知ったからかもしれない。

 国教である以上は、国に管理される部分はある。

 だが、ある程度の独立性を維持するためにも国の予算にならぬよう、金銭面は聖書に加えた。これにより、聖職者側は敬一郎への警戒の一部を解いた。

 聖騎士たちが動けぬ間、聖教会を護衛してくれたジリアント伯爵が尊敬している人物であり、神への祈りの作法を聞く限り私利私欲で動く人物ではない。

 何よりも、聖水の守護者である妖精:泉様の主でもある。妖精の主は神以外にいるはずがないのだ。






 教皇がいなくなったため、教皇を選び、半減した枢機卿を補充した。

 新しく選ばれた者も以前からいる者も含めて、フーカ様の教えを理解した聖女様が学ぶ会を開き、教えていた。

 

 ジリアント伯爵たちは、聖教会が落ち着くまで警備に当たることになっていた。

 聖騎士たちもいるのだが、あの日の出来事にショックを受けたままの者も少なく無かった。兵士や騎士たちを集め、聖女様から新しい価値観を学び、我々の施す訓練に耐えた中から聖騎士が補充された。

 

 金の管理については、ヒシフォートクラレンスより数字に強い者が派遣された。

 書類の書き方などを事務官たちに教えるようだ。

 聖水の金額についても改められた。



 「閣下、新しい聖水の授与のためのお布施目安ですか?」

 

 ジリアント伯爵が手にした大きなパネルを見た部下が訊ねた。


 「そうだ。」


 *********パネル**********

 第一区画…金貨2枚~

 第二区画…金貨1枚~

 第三区画…大銀貨1枚~

 第四区画…銀貨1枚

 第五区画…小銀貨1枚

******************************


 「区画別ですか?」

 「そうだ。一般的には何の区画かわからないだろうが…」

 「選ばれる方法が、ああなるとは思いませんでした。」

 「聖なる泉に選ばれなければ、ならないのだからな。」

 「泉の周囲のリング状の小川が我々を仕分けたのですからね。」


 あの泉が出来た後、聖職者たちも集まったジリアント伯爵たちも泉を見た。あの日、泉のそばに立っていた。

 一度出て次に泉を見ようとすると、泉近くを第一区域として、外側の第五区画まで立ち入れる者と弾かれる者が出た。



 フーカ様が泉と会っていた場所が第一区画であり、聖女のみが立ち入れた。

 第二区画には、元帥閣下やトリアシード卿、私と枢機卿の一人が立ち入れた。

そこで、第二区画に入ることの出来た枢機卿を教皇とした。

 新しい教皇は、あの日のフーカ様のお言葉を真摯に受け止めた者だ。聖女と共に、神への祈り方を民に伝える術を真剣に考えたことが評価されたのかもしれない。

 第三区画は、枢機卿のほとんどが立ち入ることが出来た。立ち入れなかった枢機卿は、格落ちとし、神父たちの中で第三区画に立ち入れた者を枢機卿とした。

 深淵との戦いに参加したヒシフォートクラレンスやジリアントの騎士たちも立ち入れたのだが、彼らから枢機卿に立候補する者はいなかった。

 第四区画は、聖職者のほとんどが立ち入ることが出来た。神父や修道士・修道女などや聖騎士たちだ。

 第五区画は、泉の一番外側の水路内側である。

 修道士や修道女の見習いたちも立ち入れるため、信仰心があれば立ち入れるようだ。

 

 立ち入れない区画には、光の壁が立ちふさがり進めないのだ。

 妖精が分けているのか、妖精未満のモノたちが進行を防いでいるのかはわからない。



 聖水は汲み上げられた場所と量により、細分化された。

 泉に最も近く、聖女のみが立ち入れる区画。

 教皇以上が立ち入れる区画

 枢機卿、聖女候補たち以上が立ち入れる区画。

 聖職者であれば立ち入れる区画。

 そして、信心深い者であれば立ち入れる区画だ。


 そのため、今までと違い聖女とその候補以外も聖水を汲めるようになった。

 第四区画以上は、それぞれの区画で汲み上げた聖水が教会の授与所で実質的に販売された。

 もちろん、祈祷を求める者には祈祷と聖水が与えられるのは変わらない。

 第五区画の聖水は、入場料を支払うことで汲むことが出来るため、信者たちが汲み上げ販売するようになった。もちろん、それ第四区以上も汲める者ならば販売出来るのだが、それは少数だった。


 


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