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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者: 夢
第20章 深淵とは何か

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18


 聖水の小川は、結果的に聖教会本部を囲むように伸びていき、外周も囲った。

 楓花の祈りに小さな妖精未満のモノたちが答え、強い結界のような物が構築されたのだが、本人は理解していなかった。

 聖水の小川の末端は、分岐して浅い水場となった。そして周囲の川へと流れ落ちていく。

 小川が形成されると、小さな妖精未満のモノたちが集まり、1人の妖精が生み出された。



 その光景をジリアント伯爵たちは茫然と眺めていた。

 楓花もアニメのような様子を見ていた。

 そして、楓花のイメージに答えるように、ローマ風衣装を纏った妖精が形を成した。薄く向こう側が透けて見える。


 「あら、妖精ね。」

 

 その妖精は、薄い布を纏った人型だった。

 耳の形が少々長いことを除けば、人間に見える。

 薄く光を放つ人間などいないが…いや、フーカ様もそうだが…。

 妖精とフーカ様が話していると、妖精が光り実体化した。


 色素の薄い白い肌、淡い金色の髪は長く緩やかにうねっていた。

 紫色の瞳に薄いピンク色の唇をしていて、男性体だった。


 「へぇ…妖精に男性体もいるのね?」

 

 フーカ様が珍しそうに見ている。

 



 その頃、敬一郎たちは会議室で異変を感じた。

 先ほど清めて清浄になった空気だったが、一段と澄んだものになった。

 敬一郎には見えないが、リハルドには薄い光に包まれたのが分かった。

 聖女や枢機卿たちが一斉に立ち上がった。


 「なんだ…これは?」

 「清らかな…洗われるような…。」

 

 聖職者たちが、ふらふらと建物を出ていくのを敬一郎たちは追いかけた。

 建物の周囲を細い川が囲っていく。その川の先は薄っすらと光っていて、進んでいるようだ。


 「閣下、妖精のようなモノのようですが、実態が見えません。」

 「聖なる泉が復活できたのか…。」

 「今日は、ご覧いただくのみだったのでは?」

 「その通りだ。だが、この状況は…。」

 

 泉の周囲は、先ほどまでと違い、細い川が走っていてまっすぐには進めない。

 そして、泉の近くに見たことのない裸体に近い男がいた。

 

 「あいつはなんだ?」

 「閣下、聖なる光を発しています。」

 「光?」

 「はい。」


 聖職者や敬一郎たちの前で、男は楓花へ腰を折り、体を起こすと手を動かした。それに合わせて、周囲の何もない広場だった場所に美しい花が咲いた。


 「これでは歩くところがないわ。お花を踏んじゃいそう。」

 

 楓花さんの声が聞こえてきた。

 それに答えるように、中央に道が出来た。

 美しい小花が咲く中に道があり、幾重にも小川が囲んでいる。


 「これなら歩けるね。」


 男は一礼すると空気に溶けるように消えた。

 楓花さんはジリアント伯爵の部隊に預けたのに、周囲を警戒していないのか?

 敬一郎が慌てて駆け寄った。


 「おひとりですか?」

 「え?ケイさん?ジリアント伯爵たちが守ってくださっていますよ。」


 楓花さんの言葉に周囲を見た。

 ジリアント伯爵や騎士たちが膝をついていた。

 

 「ケイさん…その…。」

 

 ジリアント伯爵たちが立ち上がった。


 「元帥閣下、聖なる泉となり妖精が現れました。」

 「今の男が妖精?楓花さん、呼び出せますか?」

 「ええ…。」


 楓花さんが、苦笑いをした。


 「泉、戻ってきて。」


 泉?そのまま名付けたのか?

 

 空気が揺らぎ、あの男が実態化した。

 それを見て、聖職者たちが膝をついた。

 手を握り合わせ祈り始めた。


 「ご主人様、なんでしょう。」

 「こちらケイさんよ。私の…とてもお世話になっている方なの。覚えておいてね。」

 

 男は、敬一郎を見て頷くと楓花へ一礼して消えた。

 

 「妖精ですか?」

 「そうみたいね。エルと違ってメイド服じゃないけど。」

 「エルがメイド服なのがおかしいのでは?」

 「そうかしら?」

 「そう思いますが…。」

 「ケイさん、聖女様と枢機卿の皆様どうしたの?」

 「これは…」


 聖女が、我々の会話が聞こえたのか、膝をついたまま数歩前へにじり寄った。

 

 「元帥様、先ほどの妖精はこの泉を守ってくださるのでしょうか。」

 

 楓花さんを見ると頷いた。


 「そのようですね。」

 「先ほど、聞こえてしまいましたが。こちらは聖水に戻ったのはお間違いありませんか?」

 「それは違いますね。」


 ジリアント伯爵が口を挟んだ。

 声がいつもより低い。

「以前とは違い、真なる聖水にしていただいたのです。聖教会が守らなかった聖水を聖なるモノに変えてくださったのです。」

 

 その言葉に、聖女と枢機卿たちは地面へとひれ伏した。

 よくわからないが、ジリアント伯爵や騎士たちは、この短時間に楓花さんへの信仰に近い信頼がさらに深まっているようだ。

 ちょっと怖いぞ。

 そのうち狂信的になりそうだ。

 

 聖女と枢機卿たちも、先ほどとは明らかに目つきが違う。

 その目に楓花さんがドン引きしているのが伝わってくるが、申し訳ないが何もしてやれない。

 

 「帰りますか。」

 「そうですね。」


 楓花さんの手を取り、引き寄せようとすると聖女が足元へ手を伸ばしてきた。

 すぐにリハルドたちが、抑え込んだ。


 「お待ちください!!お願いです!女神様、どうかお話を!!」

 

 女神?



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