12
水に落ちた魔石は真っ黒だった。
それが水の中で澄んだものに変わっていく。
そして、水にしゃがみ込み呆然とした人たちも多かった。
もう一度巻き戻し、再生した。
人数を数える。
乱れているので、正確ではないだろうけれど約半数が魔石になったようだ。
「半数ですか…。」
「はい。その通りです。」
「そんなバカな!聖教会は国教です!それが、魔物など…。」
リハルドが震えながら話していた。
敬一郎が椅子に座ったまま見ていた。
楓花は、隣にいるリハルドの背を撫でた。
「まさか、50年ごとの深淵は聖教会の自作自演ですか?そのためにこれほどの犠牲を出し続けていたのですか?」
しばらくして、リハルドが声を絞り出した。
敬一郎は、深呼吸をしてから答えた。
「現状だとそう捉えるのが妥当だろう。」
「そんな…なぜ、なぜです?…なんのために…。」
「目的はわからない。50年ごとに万単位の犠牲を出してきたのは事実だ。今、調査をしている。」
楓花は、同じことを繰り返しているリハルドの背中を撫でていた。
「教会を一度清めますか?」
敬一郎が顔を上げた。
少しの逡巡後、口を開いた。
「そのほうがいいでしょう。楓花さんのご協力を得られるなら、彼らを一か所に集めます。人のいない場所を先に清めていただき、それから彼らを一気に清めれば魔人が誰だったかもわかるでしょう。」
「隠れていた人がいた場合は、そこに魔石が残りますね。」
「ええ、服なども残りますから誰かはある程度分かるはずです。」
「なるほど…。」
納得したものの、楓花は疑問が沸き上がった。
「聖女がいるのよね?」
「ええ。います。彼女は聖水に触れますから、魔人の可能性は低いです。」
「でも…教皇は魔人だったのよね?」
「そうです。」
「10㎝近い魔石でした。」
敬一郎が、キューブを取り出した。
キューブには水が満たされていて、中には深紅の石が入っていた。
「これがそうです。」
「これが?」
「まさか…人の魔石でこのような大きさは…。」
「確かに映像と同じ形状ですね。」
「そうです。」
「深淵の魔石は使い回していたとしたら、3種類あるなら…魔物になるためには150年必要なのかしら?」
「そうかもしれません。今回、もう一つの魔石も回収しました。そちらも清めています。ただ、もう1つが見つかりません。それが出てくるのが50年後なのか100年後なのかはわからないのです。」
「捜索は続けますか?」
「もちろんです。ですが、万が一見つからなかった時にはリハルド頼むぞ。」
「かしこまりました。」
「50年ごとの深淵が、人為的だったなんて…。」
「ええ、それに聖職者が魔人だった。国王を始めとした閣僚たちは頭を抱えています。」
「そうでしょうね。」
「聖職者たちは、集めています。清めをお願い出来ますか?」
「わかりました。今からがいいですよね?」
「出来るならば。」
「それでは、行きましょう。その前にエル汲んだお水を持ってきましょうか。」
「はい、そうさせてください。」
「リハルドさんは?」
「もう出て構わないでしょう。リハルド、一度戻り騎士団の制服に着替えろ。」
「かしこまりました。」
「これから先楓花さんといる時には、別の服装がいいだろうが今回は騎士団として出てくれ。」
「かしこまりました。」
エルが汲んでくれた水を50数個受け取ると、楓花は車を動かし真珠宮へと空間移動した。
騎士団では、リハルドさんを出迎えて誰もが笑顔だった。
そこに敬一郎が、相談役への昇進と密命があると伝えた。
リハルドさんが、普段所属する部隊は今までのグリフォン騎士団ではなく、鬼人や真人を集めた特務隊らしい。
特務隊から各騎士団へは、短期出向させてコミュニケーションを図るらしい。
人間より寿命が長く、丈夫でスキルを持っている彼らは他の騎士たちとは異なる扱いになると言う。
敬一郎さんとリハルドさんを連れて、王城の中庭へ空間移動すると聖教会まで走った。
ガードを展開し、聖水を纏わせると4か所で展開していく。
最後に、聖職者を集めた場所を中心にガードを展開した。
楓花は、聖職者たちには合わずに、敬一郎と時間の約束をしてから、地点登録のみをして泉の家へと帰った。
「ご主人様、お帰りなさいませ。おひとりですか?」
「ええ、2時間後に迎えに行くわ。」
「そうですか…。」
「少し休みます。1時間半たったら起こしてくれる?」
「かしこまりました。」
ガードに聖水を纏わせるのは難しくないけれど、大量に纏わせるのはとても疲れる。
それ以前に、連日心労続きなのもあるだろう。自分事じゃないはずなのに、後悔してばかりで精神的に疲れてしまう。
2時間後、お水を収納した楓花は、敬一郎とリハルドを迎えに向かった。
真珠宮へ送り聖水も渡した。
次からは、イルルジオーネの21日毎、大和時間で毎週金曜日の夕方に当たる時間に真珠宮を訪ねる約束をした。
しばらくの間は、清めが必要なら2時間程度は付き合うと約束をした。
それが、楓花にとって出来る限りの妥協点だった。
それからは、また、毎週金曜の夕方から大和時間の2日分をイルルジオーネで過ごすルーティーンに戻った。
読んでくださりありがとうございます。
リアクションと合わせて星印を★★★★★~★☆☆☆☆にしていただけると嬉しいです。




