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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者: 夢
第20章 深淵とは何か

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6


 聖水が流れ落ち、教皇や聖騎士たちの頭へと掛かった。

 その瞬間、教皇と数人の聖騎士が消え去り、真っ黒な魔石と衣が残った。

 

 「一体何が起きて…。」


 聖騎士たちが、茫然としつつ教皇や聖騎士の残した魔石を拾い上げた。

 その真っ黒な魔石は、黒い靄を放っていた。

 その恐ろしさに慌てた聖騎士の手から落とされた。

 真っ黒な魔石は、足元の聖水の中へ落ちた。


 誰もが事態を把握しようと頭をフル回転させていた。

 だが、目の前の様子が示していることは1つだった。


 「この水は聖水か?」

 

 聖騎士の1人が声を出した。

 

 「そうです。」


 敬一郎の回答に、聖騎士が一度目を向けた。それから、目を瞬かせ床へ視線を戻した。

 

 「まさか、こんなに大量に?それにだとしたら…」

 「切られたわけでもなく、水に入っただけで魔石になるなど…魔物以外はありえない。」

 「魔物が入って魔石になるなら、聖水だろう。」

 

 彼らの答えは消去法から導かれていた。

 彼らの目の前に転がっている魔石からは、どんどんと黒が抜けていた。やがて透明度の高い魔石になった。

 

 「それならば、この大きな石は…本当に深淵の魔石なのか?」

 

 聖騎士たちがそう声を上げ、檻の中の魔石を見上げていた。

 呆然として、次の言葉を出てこないようだ。



 「清めた石は大きさも形も変わる!」

 「そうだ。これはそのままではないか!]

 「清められていないのか?清められているではないか!」

 「教皇猊下はどちらだ?」

 「猊下にこれをご覧いただかねば。」


 力強く言いながら貴族数人が出てきた。

 教皇は目の前で魔石になったというのに、見ていなかったのか信じたくないのか。


 「今目の前で魔石になったのは、教皇と聖騎士であったぞ。」


 国王の言葉に皆口を閉ざした。


 「こちらで清めてみたが形も大きさも変わらぬ。今まで変わってきたことが、おかしかったのではないか?」

 「教皇は魔物であった。聖騎士も複数人魔物であった。皆今目の前で起きたことだ。見ていたであろう。」


 国王が低くよく通る声で疑問を呈した。

 それを受け、閣僚たちのほとんどが礼を取る。

 聖騎士たちも礼を取る。

 祝福に訪れていた貴族たちも、国王へ向き礼を取る。


 「騎士団よ。聖教会を捜索し残りの深淵の魔石を探し出せ。」

 

 国王の号令により、国軍が出立していく。

 国軍で今回の捜索指揮を執っているのは、先日の戦いで鬼人や真人になった騎士だった。 

 翌日のヒシフォートクラレンスやクリトン伯爵の騎士団への授与式は延期となった。


 数日後、地下深い場所から深淵:暴虐の竜の魔石が見つかった。


 「これが、暴虐の竜の魔石か…。」


 国王がフォード卿へ鑑定を求めた。


 「!?」

 

 フォード卿は鑑定をし絶句している。

 それを見た敬一郎は、予想通りかもしれないと背筋を伸ばした。


 「申し上げます。暴虐の竜それから暴虐の白熊…暴虐の…」


 フォード卿が過去に現れた複数の深淵の名を読み上げていく。

 予想通りだ。

 そうなると、深淵の魔石は形状から推測出来た限り3種類ある事になる。

 


 

 そして、深淵の魔石を清めた物と言われた物は、いくつかの魔石を複合させた加工品であり、一部は人工物であった。

 名は付いていたが、それらは何らかのスキルで名を付けられたのだろうと推測された。

 これらの点から、深淵の魔石は3種類を使いまわしていた可能性が高いというのが公式見解となった。ただし、第4・第5の魔石が存在する可能性は残った。


 「此度討伐した深淵の魔石をセカンドと呼ぶ。そして、この暴虐の竜などの魔石をサードと呼ぶこととする。」

 「ファーストの探索は今後も継続する。また、この話はここに留めよ。」

 「聖教会はいかがなさいますか?」

 「聖教会は国教でもある。教義自体に問題があるわけではない。ただし、今回のように人に扮した魔物がいるのは予想外であった。」

 「仰せの通りにございます。」

 

 国王の言葉に、宰相が答えた。

 軍務卿なども次の言葉を待っている。


 「此度の事を理由に国外への接触を禁じよ。表立っては現状通りだが、国の管理下に置く。聖女を初めとした聖職者、聖騎士やその他の者たちに自由は与えぬ。敷地から出ることを禁じよ。」

 「御意。」

 「陛下、ひとつご提案をしてもよろしいでしょうか?」

 「申してみよ。」

 「迎賓館にいる聖騎士たちは、現在ひどく動揺し信仰が根本から揺らいでおります。彼らの協力を取り付け、教会の者たちを清め、敷地全てを捜索します。」

 「清める?その聖水でか?」

 「はい。そのつもりです。」

 「あまり追及するようなことはしたくないが、ヒシフォートに聖女がいるのか?」

 「聖女と認められた者はおりませんが、聖水を手に入れる手段があるとだけ…。無限ではありません。さすがに大量に使い過ぎました。」

 

 敬一郎の言葉に、閣僚の一部が「不敬だ」と声を上げた。

 国王は手を水平にし、下へと降ろした。

 それを見て、閣僚たちが黙った。


 「ここは身内の席ではないか。公ではない。腹を探らずに話し合える場だ。」


 国王の言葉に、閣僚たちが頷いた。

 ハラハラとした気持ちで見ていたクリトン辺境伯やジリアント伯爵は、国王の言葉に胸を撫で下ろした。



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