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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者: 夢
第20章 深淵とは何か

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5


 聖水を受け取った国王は鑑定を使っているのだろう。

 国王の能力はよくわからないが、聖水であることくらいはわかるはずだ。


 「なっ…」

 「お召し上がりください。」

 「召し上が…これを飲めと?」

 「はい。今回戦いに出た者たちは飲みました。」

 「そうか…これを…。」


 国王が聖水を飲み干す。

 先ほどよりは、さっぱりとした表情をした。


 「うむ。素晴らしい。皆にも飲ませたい。」


 敬一郎は、閣僚たちにも聖水を渡すとアイテムバックへ収納した。


 「此度の戦いでの死者は、輸送中の事故や人間同士の諍いによるもののみです。戦いそのものの死者はおりません。」

 「それは…」

 「この聖水とポーションや薬によるものです。」

 「相当使ったということか?」

 「はい、かなり…エリクサーだけでも40本ほど、高級ポーションも千本ほど使いました。中級以下は、万単位です。」


 敬一郎の言葉に、閣僚たちは目を剥いた。

 国王は興奮したように前のめりだ。


 「なんと!?エリクサーをそんなに持っていたのか!?」

 「まあ、今回は持っていました。先代が残したもので、新しく作る目途はたっていません。」

 「それはそうであろう。」


 国王は、そう言いつつも露骨に肩を落としていた。

 新しく作れる事になったら、欲しがるのだろう。


 「此度の戦いは、聖水とポーションに恵まれたお陰で被害を最低限に出来ました。」

 「それを分からぬ者たちは、深淵との闘いなどなかったのではと邪推するのだ。」

 「あの大きさの魔石を見てもそれを言える者は、教会の関係者でしょう。」

 

 閣僚たちが押し黙ったまま、二人の会話を聞いていた。

 敬一郎は思案する様子を見せた後、口角を上げた。


 「陛下、教会の者たちを祝賀会に呼びませんか?」

 「祝賀会に呼ぶ?」

 「ええ、もし魔物の影響があるのなら、聖水を飲ませてみませんか?」

 「聖水を?」

 「はい。この聖水を飲ませてみてもよいのでは?」

 「それならば、祝賀会ではなく貴族が立ち並ぶ授与式がよかろう。」

 「御意」

 

 

 その後、参加した騎士や兵士を慰労するために、盛大な祝賀会が王宮の宮殿第1から第4の大広間で開かれた。

 華やかな盛り上がりの中、ヒシフォートの騎士たちは深淵の魔石を護っていた。

 祝宴の前に聖水が入れ替え、最後の靄が消え去ったことに気が付くのは翌日になってからだった。


 祝賀会を終えた翌日より、3日をかけて授与式が行われた。

 凱旋パレードに集まった者たちは、授与式を終えた者から帰路へ着く。

 2日目の最後、ジリアント伯爵たちへの授与式を終えたタイミングで、迎賓館にいた教皇と聖騎士たちが、授与式会場へと現れた。


 「聖教会の聖水も聖騎士の協力も必要ない深淵など、ただの魔物ではありませんかな?」


 教皇は、国王の臣下ではないので、礼を尽くす必要はない。

 だからと言って、ここまで横柄な態度というのも珍しいものだった。

 

 近衛兵たちが国王の周辺へ集まり、警護体制をとった。

 各閣僚それぞれは、騎士たちが護衛しようと前後に立つ。

 授与式のために集まった多くの貴族たちも居並んでいる。

 緊張感のある中、敬一郎が前へ出ると教皇が顎を上げた。


 「これはこれは元帥殿、いや詐欺師とお呼びしましょうか。国王陛下まで謀るとは、流石ですなぁ。」


 教皇の口は滑らかだった。


 「国王陛下、回収したという深淵の魔石が本物であれば、魔をまき散らしているはず。こちらで確認して差し上げましょう。」

 「教皇殿、迎賓館で過ごされていると思うていたが、何か不備がございましたか?」

 「いえいえ、おもてなしは十分にしていただいておりましたが、皆様が騙されているやもしれぬと思うと落ち着きません。ゆえにまかり越した次第でございます。」

 「そうか、教皇殿も来たのだ。深淵の魔石をここへ運べ。」


 国王が指示をすると、閣僚の一部がぎょっとしていた。

 

 「陛下、恐れながら…進言のお許しをいただけませんか?」

 「申してみよ。」

 「この謁見の間に魔を運び入れては、この場所を穢してしまいます。」

 「その方の心配は分かったが。安心せよ。穢れることはない。」


 それから複数の閣僚が口々にいろいろと言い始めた。

 その騒ぎの中、ヒシフォートの騎士たちが魔石を乗せた荷台を引いて入って来た。


 「なっ!?」


 ほとんどの者たちは絶句していた。

 真っ黒い魔石を想像していたのだろう。

 水の中にマリンブルーの六角柱が連なっているのを見ていた。

 

 それを見た教皇はあっけにとられた後、「これは深淵の魔石ではない。」と言って笑っていたが、段々と声が収まり小刻みに震え始めた。

 

 「まさか…いや…そんな…」


 呆然とした教皇がふらふらと近寄っていく。

 聖騎士たちがそれに合わせて、深淵の魔石へ近寄っていく。

 彼らは魔石しか見ておらず気が付いていないが、彼らの背後には光の壁が立ち上がり取り囲み始めた。

 周囲にいる閣僚も騎士たちも貴族たちも言葉を発することも出来ずに、その光景を眺めていた。


 教皇が魔石に触れようと檻へ触れた瞬間、檻の内側に展開されていたガードが解除された。中の聖水が高めの荷車から流れ出し、彼らを飲み込む。

 教皇や聖騎士たちは、頭から大量の聖水を被った。



読んでくださりありがとうございます。

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