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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者: 夢
第20章 深淵とは何か

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3


 中庭では、敬一郎が国王と重要閣僚を連れて来たのを見た騎士たちが敬礼をしたが、膝をつくことはしない。

 中庭とはいえ外であり、深淵の魔石を狙っている者にいつ攻撃を受けるかわからないからだ。当然、国王もそれを咎める事はなかった。

 国王や重要閣僚は、目を見開いて魔石を見上げていた。


 「これが…深淵:残虐の大蛇の魔石か…。」


 国王の呟きに、閣僚たちは頷くのみだった。

 禍々しい黒く巨大な魔石に圧倒されている様子だ。


 「これを清められるのか?」

 「おそらくは…。」

 「試せ。」

 「仰せのままに。皆さまお下がりください。」


 敬一郎は、国王や閣僚たちが下がったのを確認してから、魔石をすっぽりと包むようにガードを発動させた。

 このガードは、楓花さんから借りた触媒を使って展開している。

 檻の上に上がり、上部の蓋を開ける。

 ガードの一部を消し、10L容器に入っている聖水を注いだ。

 1本を注ぎ、2本目3本目と注いでいく。

 深淵との闘いの後、泉の家へ皆を迎えに行った時にもらい受けた物だ。

 空容器40本を全て聖水で満たしてもらったのだ。

 鬼人や真人となった者たちへ渡したが、残り30本があった。

 球体の直径は320㎝ほどだから、半径は160cmか…球体の体積は4/3πr³だから、17,148L…17本と少し必要か。

 注ぎながら、球体の必要はないと思いついた。この魔石は六角柱の集合体だった。

 楓花さんが肉の下味をつける時には、袋から空気を抜き全体を漬け込みダレに漬かるようにしていた。

あれを真似れば、もう少し少なく出来そうだ。

 ガードの形状を絞ると、聖水の高さも上がってきた。

 闇のように黒かった魔石から黒が消えていく。次第に透き通った青に変化してきた。深部に黒を残したまま変化が止まった。

 満たしている聖水を鑑定すると、水と出ている。


 「聖水が水になったようなので、聖水に入れ替えます。


 その水を元の容器に回収し、マジックで魔石浸漬後と書き込んだ。

 先ほどと同じように聖水を注ぐ。


 「ふむ…まだ完全ではないが…」

 「縮ませんね。」

 「形状も変わっておりません。」


 国王の言葉に続いて、宰相たち閣僚が声を上げた。


 「ふむ…もう少し漬けておく必要はあるだろうが、宮殿に入れるがよい。第7広間あたりで良いだろう。」

 「はっ!仰せのままに。」


 敬一郎は、騎士団へ指示を出し宮殿内へと運び入れさせた。

 第7広間は、王の執務室に近く内内の会議室として使われる第8広間の隣室だった。

 魔石のある室内はヒシフォートの騎士団、外には国軍に参加していた騎士が立った。


 王と閣僚たちは、会議室である第8広間へと再び集まった。

 この部屋へ入ることが出来るのは、王の信任が特に厚い者だけだった。

 会議用の大きな円形の机があり、王の椅子は異なるものの、それ以外の差はなかった。

 王が着座すると宰相を始めとした閣僚たちも席に着いた。

 敬一郎は、王の正面へと座った。

 敬一郎の後ろには、フォード卿が立っていた。

 カテナ候は呼ばれていない。


 「ケイ・イチロー・ヒシ、今回の作戦から教会を排除した説明をしろ。」

 「はい。では、先にフォード卿説明をお願いします。」

 「かしこまりました。」


 フォード卿が背筋を正した。


 「ご説明いたします。あれは深淵:残虐の大蛇の魔石に間違いはございません。」


 そこでフォード卿は深呼吸をした。


 「ですが、前回の深淵:虐悪の大蛇の魔石については、疑念を持っております。私が見た魔石は六角柱11本で構成されておりました。現在、神殿で公開されている深淵:虐悪の大蛇の魔石は12本で構成されております。」


 閣僚たちがざわりとした。


 「私は、当時作戦に参加しておりました。あの戦いの後、神殿で清めてもらう間は奥で過ごしておりました。」

 「穢れを浴びたのか、それで生きているということは…貴殿は真人か?」


 王の視線を受けた宰相がフォード卿へと問いかけた。


 「はい。真人ゆえに助かりました。」

 「神殿の奥での生活はいかがなものであった?」

 「信心深い方が多く、質素に過ごされておりました。」

 「聖水の泉は見たか?」

 「見ておりません。おりませんが、私たちの穢れを祓うために使うと何も残らないとぼやかれました。」

 「何も残らない?」

 「はい。それが、深淵の魔石に使ってもという枕詞があるのかどうかは存じません。」

 「前回の生き残りは、少なく。穢れを浴びた者で生き残ったのは、ここにいるフォード卿ともう2人だけです。」


 敬一郎が補足すると、宰相からさらに問いかけられる。


 「もう2人だと?1人は数年前に亡くなった大魔導士殿だが、まだいたのか?」

 「当家におります。」

 「その者は人間か?」

 「人族ではありますが…。」

 「そうか。」


 二人の会話が切れると国王はフォード卿へ続きを促された。


 「私は、神殿の奥地に迷い込み、魔石を括りつけられた魔物を見ました。」

 「魔石を?」

 「はい。聖騎士たちが来たので、とっさに隠れてみていたのですが…。」

 「それで?」

 「教皇が来て、何かの呪(まじな)いをしていました。」

 「あの時、私が見たのは…深淵:虐悪の大蛇の魔石と小さな蛇でした。後でわかった事ですが、その時には既に深淵:虐悪の大蛇の魔石は清められたと公開されていたようです。」

 「っ…!」

 「そして、深淵:残虐の大蛇の魔石は私の知っている深淵:虐悪の大蛇の魔石と同じ形状をしています。大きさは測っておりませんが、同じように見えました。」

 「そうか…。」


 フォード卿の言葉に誰も動かない。

 敬一郎と2人で馬車に乗った時にこれを相談されたのだ。

 

 「ヒシフォートクラレンスに残っている記録とフォード卿の発言は一致します。過去8回の深淵の魔石の形状についての記録が残っており、いずれも討伐時の形状と清めた後では形状が異なっております。また、魔石の形状は3種類しか確認されておりません。そして毎回少し大きくなっています。」

 

 誰も言葉を発しない。

 妙な静けさが広がっていた。




読んでくださりありがとうございます。

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