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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者: 夢
第20章 深淵とは何か

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2


 「これは…!?」


 天幕に入ると、2人は絶句して動かない。

 魔石は台に乗せてあり、周囲を囲っている。その結果、檻に入れたような状態となっていた。魔石は六角柱の集合体だ。

 獣からとれる魔石は楕円や円など丸みがあるが、魔物から取れる魔石は三角柱や六角柱が多かった。

 

 「見るからに魔物の魔石です。この大きさは…深淵:残虐竜の残した魔石に匹敵しますな。」

 「いや、しかし…清めれば小さくなるでしょう。」

 

 2人に鑑定をしている様子がない。

 今は見た目を見ているだけに過ぎない。

 ここまで運ぶ間に、数人が鑑定レンズで見てきた。

 中でも、クリトン伯の妻は元聖女候補だった。彼女の鑑定では、深淵:残虐の大蛇の魔石であることは確認されている。

  

 一般的には鑑定のためには触れる必要があった。

 最初にフォード卿が、魔石へと手を伸ばした。

 真っ黒い魔石に触れるのは怖いのだろう。指先が震えている。


 「深淵:残虐の大蛇の魔石に間違いありません。魔の霧の排出は止まっているようです。」

 

 フォード卿がカテラ侯へ視線を移した。

 鑑定に疑いを持たれぬためには二重の鑑定が必要だった。


 促されたカテラ侯は、震える手を伸ばした。

 触れているのか?触れていないように見えたが、少しして重々しく声を出した。

 

 「深淵:残虐の大蛇の魔石に間違いない。」


 カテラ侯は魔の霧へは触れなかったが、鑑定士の力量により読めるかどうかもある。

 あえて言及すべきことでもなかった。

 二人が証明書に深淵の名とサインを書き入れた。

 続いて、下の余白へ「魔の霧の排出なし」とフォード卿が書き入れ、サインを入れた。

 それから、同じ物を2部に写した。


 「こちらをお持ちになり、王城まで凱旋なさってください。」

 

 フォード卿から鑑定書を受け取ると、カテラ侯は写しを手にした。


 「では、私は一足先に王城へ報告に上がる。」

 「かしこまりました。では、私は凱旋を共にします。」

 



 王都正門前に集まった騎士団や部隊は、戦いの時とは異なり華麗な礼服に身を包んでいた。

 馬車も馬も華やかな装飾を施されている。


 フォード卿の申し出により、敬一郎の馬車へ同乗させた。

 敬一郎は、元帥の地位にいるため騎乗での入場はしない。

 馬車の中にいるだけだ。

 その後ろには、深淵の魔石を乗せた檻を乗せた馬車が走っている。

 荷台に乗っている魔石は地上3mほどまで見上げる形になっていて、民衆たちの前を通った時には大きな声が上がっていた。

 馬車2台の周囲は、ヒシフォート騎士団の騎馬隊が護りながら進む。

 その後ろにグリフォン騎士団副団長が率いるグリフォン隊が続き、その後ろには騎士団のほか部隊の騎士・兵士が続いた。

 

 さらに後ろには、国軍の2軍が続き、クリトン伯爵と騎士団、ジリアント伯爵と参加した16軍が続いた。

 戦いに参加した騎士・兵士・補給部隊員などは総勢1万5000人を超えていたが、ここに集まったのは半数にも満たない。

 王都から距離のある地域の者たちの多くは、凱旋パレードに出るよりも地元にいることを選んだ。パレードに出なくても褒章が変わるわけではなかった。

 減ったといえど総勢4000人近い人数がいる。その半数が、騎乗しており通り過ぎるだけでもそれなりの時間がかかった。


 馬車の中で、フォード卿から話があった。

 敬一郎は、それを聞いているうちにパレードを終えた。


 王城へ到着すると、敬一郎と騎士団、各軍から数人ずつが謁見の間へと通された。

 国王陛下から労いの言葉と褒章を賜った。

 その間中庭では、グリフォン騎士団とヒシフォート新設の騎士団が、深淵の魔石を守っていた。

 後日、騎士団ごとに報奨が与えられる式が開かれることとなった。




 敬一郎は公式の場を終え、宮殿に用意された部屋に入った。

 軽食を摂ると、すぐに会議室へと向かった。

 間もなく、宰相や軍務卿、財務卿などが集まり、事後処理について話を始めた。


 「国王陛下が間もなくお越しになります。」


 一同は立ち上がり、礼を取り出迎えた。


 「構わぬ。楽にせよ。」

 「はっ」

 「座れと言いたいところだが、教皇と聖騎士たちを迎賓館へ入れてある。」


 国王の言葉に緊張が走った。

 教皇を入れてある!?

 捕縛したわけではないだろうが、監禁状態という事か?

 国王の隣に視線を移すと宰相がにやりと笑った。


 「深淵の魔石を狙っているのでしょうかね?こちらで討伐しても、自分たちの物だとでも主張するのでしょうか。」

 「お前は口が悪すぎる。もう少し言葉を選べ。」


 国王の言葉に宰相は苦笑し周囲を見回した。

 それから敬一郎に視線を合わせて、頷いた。


 「いい機会です。これから、魔石を清めてご覧に入れましょう。」


 敬一郎は立ち上がり、発したその言葉に、国王を始めとした一同が敬一郎を凝視した。


 「この間の尾のようにか?」

 「その通りです。」


 敬一郎たちは、中庭へと移動した。



読んでくださりありがとうございます。

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