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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者: 夢
第20章 深淵とは何か

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1

 

 菱沼 敬一郎は、年末にイルルジオーネでの深淵の決着が着いた件で事後処理に追われていた。

 10月からの3か月の間、弁護士の仕事の空きは全てあちらへ行ってばかりだった。

 先代から、大和の弁護士事務所は人に任せられる体制を引き継いでいたが、新米としては肩身が狭い。

 ここ2週間は、イルルジオーネの事後処理の指示を出しつつ、行ったり来たりしていた。

 

 今までなら、楓花さんがヒシフォートへ顔を出す頃だがその様子がない。

 年始の休みがあるはずだが、忙しいのだろうか?

 この3か月、楓花さんも週に3回も来てくれていた。勤めながらだから、自分と同じで大和ですべきことが溜まっているのだろう。

 そう思いつつも念のために、LIMOでメッセージを送った。

 



 「閣下!深淵の魔石の固定を終えました!」

 「それでは、慎重に運ぶぞ。ヒリアまで飛び、休憩を取る。」

 

 グリフォン隊副団長の声に、敬一郎は固定状況を確認し運搬への号令を出した。

 グリフォン騎士団団長のリハルドは療養中のため、騎士団の指揮は副団長に任せていた。

 今回は、深淵が残した魔石を王都まで運び、王都入口の門から王城まで凱旋パレードをしなくてはならない。

 深淵からは、魔石が2つ見つかっていた。

 刺々しい大きな魔石と30㎝ほどの楕円の魔石だ。

 大きな魔石は、一般的に深淵の魔石と言われているものであったため、下に別の魔物がいた可能性もあった。

 それでも、念のための記録として両方の写真を撮った。

 そのうえで、楕円の魔石は楓花さんが戦利品として持ち帰った。

 楕円の魔石も魔に穢れていたのだ。

 こちらは、楓花さんが清めるだろう。



 1週間をかけて、深淵と戦った騎士団や部隊が王都の門前へ集結した。

 証拠である深淵の魔石も無事に運び終えた。

 縦横2mずつある真っ黒な結晶の存在感は強い。

 この大きさの魔石を体内に抱えていた魔物というだけで、その大きさを想像出来るだろう。

 パレードを始める前、門前へと王から鑑定士が派遣された。

 国で最も優れていると評価されているフォード卿とカテラ候だ。

 

 「遠いところまで、お越しいただきありがとうございます。」

 「深淵の魔石ですからな、この目で確かめられること光栄にございます。」


 フォード卿が挨拶をすると、カテラ侯が口を開いた。


 「魔の残量も確認し、周囲への影響がないことも確認させてもらいますぞ。」

 

 聖教会との繋がりが強いカテラ侯は、鑑定のためというよりは、こちらの落ち度を探しに来たようだ。王国でもヒシフォートクラレンスと同じ程度続いている古い家系でもある。その分関係も複雑だった。


 「まぁ、本当に深淵かも疑わしいですな。」

 「カテラ侯爵様…」


 フォード卿が狼狽えていた。 

 それにしても、3人しかいないとは言え、ここまでストレートに言ってくることに驚いた。敵対しているとは思っていなかったが、これほど当たりが強いと正しく鑑定されるのか、不安になってしまう。


 「ですが、カテラ侯爵様の言い分もわからなくはないのです。深淵との闘いで1年も経たずに決着をつけた事例はございません。」

 「そういうことだ。本当に深淵相手にこの短期間での決着であったならば、貴殿は歴史に名を刻めるだろう。」

 「それは光栄なことにございますね。」


 敬一郎は、嫌みを正面から受け取った。

 カテラ侯にとって敬一郎の反応は、予想外だったようで眉をひそめている。

 鑑定せずとも見ればわかることだ。

 くだらないことに割く時間はなかった。


 「ご案内の前に、お茶をご用意しております。」


 敬一郎は、天幕へと案内した。

 本当なら、彼らに聖水スプレーをかけたいところだが、変に受け取られかねないので止めておいた。

 


 ギルバートが、運んできたワゴンの上で、茶を淹れた。

 カップに注がれると、敬一郎が最初に飲んで見せる。

 来客に毒は入っていないことを証明する意味があった。

 銀製のスプーンも添えてある。

 カテラ侯とフォード卿は、じっと茶を見てから飲み始めた。

 スプーンでひと混ぜするものだが、それをしないのは「鑑定で見定めた」というアピールだろう。

 だが、彼らが普通に飲むということは、彼らの鑑定能力はそこまで高くはないのかもしれない。もしも、使った湯が聖水であると知っていたら、普通に飲めるはずがないのだ。

 

 「此度の深淵は大蛇であったと聞き及んでいる。前回と同じとは…本当か?」

 「その通りでした。」

 「竜であれば、相当に大きい魔石を残しておりましたな。」

 「清めを終えても2mはありましたか…。」

 「どういう意味ですか?」

 「貴殿ともあろう方がご存じないとは。いや…ははっ清めを終えると、魔石は小さくなるのですよ。」

 「ほぉ…それは初耳です。」 

 「縮む前の魔石を凱旋させるのも一興ですな。」

 「魔の拡散はしませんか?」

 「拡散も含めて鑑定をお願いします。では、ご案内しましょう。」


 聖水の茶を飲んでも、彼らに変化はなかった。魔に侵されてはいないのなら一安心だ。

 敬一郎は、2人を連れて魔石を置いている天幕へと案内した。

 


読んでくださりありがとうございます。

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