*閑話* 楓花の友人③ *繊細な方は読まないでください。
楓花は余計な事を言っています。
不快に思う方がいるかもしれません。繊細な方は読まない方がいいかも…。
悪気はありませんが、こればかりは受け取る人次第です。
「ほら、よく見て。優希くんはママ大好きよ。」
「うん、知っている。」
「そうだよね。分かっていると思うけど、あまり気に病まないでよ。」
「うん。楓花さんと話せてよかった。なんだかすっきりした。」
「私も偶にはお役に立てたかな?」
「めちゃくちゃ助かった。やっぱり、家にずっといるのは良くないね。」
「それは、野乃花さんはお外を好きだからだね。私みたいな引きこもりは平気だもの。」
言いながら、最近はそうでもなかったと思い出した。
「また前みたいに遊びに行きたい。」
「そうだね。5人と優希くんとで遊びに出かけよう。」
私自体が夫を亡くしてから、塞ぎこんでいてお出かけに誘われても参加していなかった。
仲がいい5人で年に1、2回お茶をするくらいだった。
それを思うと、あのキャンピングカーでのお出かけは、出かけるきっかけになったのか。
「うん、行こう。」
「あとさ…優希くんのは治るだろうけれど、もし治らない病気だとしても、その子が明るい未来を描けるように見守れるといいよね。」
「治らなくても?」
「うん。野乃花さんだってあるでしょう?自分でどうにも出来ないのに色々と言われたこと。」
「うん…。」
「そういう時に、気にしないで前を向ける考え方とか、寄り添ってくれる友人とか、何て言えばいいかわからないけど、一人で強く生きるのは難しいから、問題が起きても向き合える子になってくれたらいいよね。」
「楓花さん?」
「私は…野乃花さんやみんなとワイワイするのをなんとなく避けて生活していたけど、私が負担にならないように、ゆったりと連絡くれているでしょ。私はそういうのに、とても助けられているから…。野々花さんたちに支えてもらっている。」
「そんな事…」
楓花は、夫が亡くなってから、当たり前の生活をしている友人たちを避けていたのだと気が付いた。連絡をくれても面倒だと思う気持ちが先に来ていた。会えば楽しいけれど、生活の話は必ず出てくる。その時に聞こえる家族の愚痴が私には少し負担だったようだ。
今もそれは変わらないのに、イルルジオーネに行くようになって、少しこちらの自分を客観的にみられるようになったのかも。
「私は、そろそろ帰るね。野乃花さん、また電話でもしてよ。」
「うん、今日はありがとう。」
野乃花は、楓花を見送ってからケーキの箱に気が付いた。
イチゴが沢山乗っている有名店のタルトだ。
せっかく持ってきてくれたのに、泣いていて忘れていた。
一緒に食べようと持ってきてくれたのに…申し訳ない気持ちになるけれど、優希が泣き出した。
乳を拭いて優希に含ませると小さな手で胸を押しながら吸いついて、一生懸命に飲む姿にまた涙が出てくる。
不安になりすぎていたみたいだ。
楓花さんが言う通り、今は手術で治る。
吸いつきにくさはあるのかもしれないけれど、見ていても分からない程度だ。
それなら、あまり不安になることもない。
私に出来ることは、優希が堂々と生きられるように育てよう。楓花さんの言う通り、友達が出来て勉強でもスポーツでもやりたい事を見つけられるほうがいい。生活に大きく支障の出るものではないのだ。
落ち着いた夕方、野乃花は楓花へお礼と感謝のメッセージを送った。
「ただいま」
夫が帰ってきたので「おかえり」と出迎えた。
「あれ?誰か来たのか?」
テーブルには、イチゴタルトを置いたままだ。
友人を呼んだと言ったら怒るだろうか?
「楓花さん。年賀状を見て来てくれた。」
「ああ、あの人か…。遠いだろ?」
「うん、高速を2時間走って来てくれた。子供産んだばかりだから中間地点は無理だからね。」
「野乃花に会いに来るために?高級タルトを持って?」
夫は、優希のところへ行き頬をつついていた。
「そうよ。あと優希にもね。楓花さんったら、優希にふうちゃんって呼んでねって…まだ早いのに。」
「そうか…。他には?」
不安そうに瞳を揺らしているのを見て、野乃花は答えた。
「抱っこして、かわいいって言ってくれた。あと…治るからって…。」
「そうか。今日の夕飯はなに?」
「ハンバーグとサラダと…」
「それは楽しみだ。ハンバーグにケーキとか誕生日みたいだな。シャワー浴びてくる。」
今日も、優希を抱き上げることはしないみたいだ。
首が座ったと言っているのに、ふにゃふにゃで怖いという。
でも、本当にそれだけだろうか?
傷跡を見たくないだけじゃない?
いや、そんな後ろ向きはだめだ。
今だって、楓花さんが優希にどう接したかを気にしていた。
夫も不安なのだ。
見慣れない状態で生まれた子を愛しにくいのは仕方がない。
これから、接しているうちに愛情を持ってくれればいい。
大丈夫。優希は可愛い。
夫もそのうち愛せるようになるはずだ。
楓花は、何も考えずにペットボトルの水を渡していた。
未開封のどこにでも売っているメーカーの品だが、何度もイルルジオーネと行き来した品だった。
野乃花は楓花の手により癒しの水となった水を飲み、優希に乳を与えた。
癒しの水は、野乃花の精神的な不安と焦燥感を癒した。
そして、その乳を飲んだ優希の傷にも効果があった。間接的な摂取だったが、通常より早い速度で傷跡を消していくことになる。
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