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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者: 夢
第19章 楓花の悔恨

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*閑話* 楓花の友人① *繊細な方は読まないでください。

不快に思う方がいるかもしれません。繊細な方は読まない方がいいかも…。



 イルルジオーネでの深淵が決着後、楓花はお正月休みの残り4日分を自宅で過ごすことにした。

 この家で過ごした時間など少ないのだけど、やはり自宅なので落ち着く。

 体は重怠いので、1日はだらだらと過ごす。

 お掃除をしていないのに埃もないのは、キャンピングカーと同じようにクリアかリペアか知らないけれど、きれいになる魔法がかかっているのだろう。


 翌日になるとお出かけしようか考え始めた。

 久しぶりに食事にでも行こうかな?

 家にいても、肉も魚もイルルジオーネ産ばかり食べていた。

 久しぶりに大和の食事をしよう。

 休みはあと3日ある。

 肉や魚を含めた食材も買ってこようか。


 転送されてきた郵便物を見ていると、年賀ハガキが数枚あった。

 夫が亡くなってから、誰にも送っていなかった。

 私が送らなくても、旧友が数人送ってくれていた。

 年下の友人からも届いていた。


 【子供が生まれました。 野乃花】


 そのハガキを見て、慌てて連絡をした。

 そういえば、この家に引っ越しして半年以上の間、毎日バタバタしていて友人とゆっくり話していない。

 妊娠したのは知っていたのに、いつ生まれるのかあまり気にしていなかった。申し訳ないことをしてしまった。

 お祝いは何がいいだろう。

 時間も経っているから、現金のほうがいいかな。

 それと…この月齢なら、そろそろ離乳食かな?

 いつもの離乳食用の調理器具にしようかな。

 家にある道具で十分だけど、専用の物はあれば助かるだろう。

 使い終わったら捨てればいいのだ。


 久しぶりに電話を掛けると何コール目かで応答した。


 「楓花さん!!」

 「野乃花さん、お久しぶり。今お電話大丈夫?」

 「もちろん。連絡くれて嬉しい。」

 「ごめんねー。ちょっとバタバタしていて、落ち着かなくて…。」

 「そうなの?忙しかったならいいよ。落ち込んでいたんじゃないならいいの。」

 「そうなの?ありがとう。そんな事より、出産おめでとう。野乃花さんが元気そうでよかった。」

 「ありがとう。やっぱり楓花さんは楓花さんだ。」

 「え?何?」

 「だって、私の心配をして声をかけてくれる。」


 どういう返し方なの?

 野乃花の返答に戸惑う。

 これは、元気ではなさそうだ。

 赤ちゃんに何かあったのだろうか?それとも野乃花さんの身体に異常事態かな?

 楓花は、次に掛ける言葉を探すけれど見つからない。


 「せっかくだし、顔を見たいね。いつ頃時間ある?私は7日までお休みだから、あと3日あるけど…。」

 「それなら、今日はダメかな?」

 「今日?いいけど、今から出ても着くのは14時とかだよ?いられるのは2時間くらいかな?」

 「それでもいい。来てくれる?」


 その声が妙に不安そうだった。


 「わかった。じゃあ、今から行くからね。お昼は途中で食べて行くから、気にしないでよ。」

 「うん、待っている。気を付けて来てね。」


 取り急ぎご祝儀袋を用意した。

 ベビー用品を買う時間はなかったので、近所の菓子店のケーキを手土産にして向かった。

 高速で飛ばしても2時間の距離だ。

 友人たちで集まる時には、中央の県庁所在地だったけれど、2人で会うときにはどちらかに行く。

 私が結婚前は、彼女の住む場所へ年に数回遊びに行っていた。

 結婚してからは、彼女が来てくれて自宅近くで食事を共にしてきた。

 彼女が結婚して子供が生まれたからには、私が行くのが続くだろう。

 多分、今回の連絡は彼女なりに悩んだはずだ。

 彼女は、私が不妊治療していたことも、子供がダメだったことも知っている。

 年賀状では100日参りらしい写真が載っていたけれど、赤ちゃんの顔はおくるみでくるまれて写っていなかった。

 おめでたい話なのに、気を使わせてしまったようだ。高速を走らせ、国道へ降りて少し走った。

 彼女のマンションの来客スペースへと車を停めて、エントランスから連絡をした。

 この家は、彼女が独身時代に購入した1LDKだった。

 結婚しないつもりだった彼女が、結婚して子供を得るのだから人生はわからない。



 「野乃花さん、おめでとう。」

 「楓花さん、いらっしゃい。最近忙しいみたいだったから、年賀状での連絡にしちゃってごめんね。」


 玄関で挨拶をし、家へ入るとき肘をひっかけてしまった。


 「ひっかけた?見せて。」

 「大丈夫、ちょっとひっかけただけ…」


 見ると、3㎝ほどのひっかき傷線になっていた。

 赤いし、一部には血が滲んではいるけれど、すぐに止まるだろう。

 

 「洗面所お借りできる?洗い流したい。」

 「もちろん、こっちに来て。」 


 腕を洗わせてもらって、ついでに手も洗ってからリビングへ移動した。

 ビジネスホテルのように片付いていた部屋は、ずいぶんと可愛らしい雰囲気になっていた。

 赤ちゃんのいる家だ。

 リビングの一部にはベビーベッドと柔らかい敷物がしいてあった。

 散らかっていないのは相変わらずだ。

 

 「お部屋が可愛くなっているね。」

 「うん、何もないのが好きだけど、赤ちゃんがいては無理だね。それより、連絡が遅くなってごめんね。」

 「ううん。私こそ、前に断ったままでごめんなさい。これお土産のケーキ。」

 「ありがとう。」

 

 楓花は、お土産のケーキの箱を渡すと居住まいを正し、袱紗からご祝儀袋を取り出した。

 

 「これ遅くなったけどお祝い。」

 「ありがとう。気を使わせたね。」

 「そんな事ないよ。お祝い事だよ。私も赤ちゃんにも会いたかったし。」

 

 野乃花さんの手は少し震えていた。

 精神的に不安定な子じゃないはずだけど、どうかしただろうか?



読んでくださりありがとうございます。

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