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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者: 夢
第19章 楓花の悔恨

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11 (気分が沈む方は読まないでください。)

楓花の苦しい自問自答があります。

落ち込みやすい方は飛ばす事をお勧めします。

読まなくても、大筋に影響はありません。

 

 「リハルドさん、果物は美味しいですがお肉もお野菜もどうぞ。」

 

 リハルドさんは、出した物は全て食べてくれる。

 それでも、盛り付けて出さないと果物を食べて終わらせようとする時があった。

 泉の家では同じ食卓を囲むため気になってしまう。


 「リハルドさん、お肉には筋肉を作る栄養がありますし、お野菜も体を動かすのに必要です。果物ばかりではあまりよくありませんよ。」

 「すいません。美味しくてつい…。」

 

 ふと、夫と重なった。

 曖昧に笑い返し、部屋へ籠った。




 夫の場合は、何でも食べすぎていた。体重を増やしすぎないように、お弁当の中身には工夫をしていた。だけど、こってり味が好きな夫には物足りなかったらしい。

 

 「旦那さん、外に食べに行っても、戻ってからお弁当を食べていました。奥さんのお弁当好きみたいです。」

 

 飲みつぶれた夫を迎えに行った時に、そう同僚の方に教わった。

 同僚の方は、平日の深夜0時過ぎに夫を迎えに行った私に「いいこと」として教えてくれたのだと思う。

 けれど、私はそんな事を求めていなかった。

 夫には、お弁当のいらない日は教えてくれるようお願いをしていた。

 どうしたら、結婚以来2年で20㎏も増量した夫の食欲を抑えてあげられるのか、それを考えていたのだ。

 無理をしてまでお弁当を食べて欲しいわけじゃなかった。

 それなのに、二重に…無駄に食べるのなら作らないほうがましだ。

 なんのために、わざわざ手間のかかる料理をしていると思っているのか。

 毎日5時半に起きて、朝食とお弁当を作り、7時に夫を送り出した。

 それを片づけてから自分も出勤していた。

 お弁当作りがないなら6時過ぎにまで眠れた。

 日々、考える料理の種類も減らせた。

 私は無駄な時間と労力を使っていたのだと、あの時はとても脱力したのを覚えている。

 

 でも、そういった理由の喧嘩を何度も行った。

 だけど、ああやって死んでしまうなら何も言わなければ良かったと思う。

 好きなように食べさせても、どうせ病気になる前に死んでいたのだ。

 一緒に長い時間を過ごしたかったから…。

 出来るだけ楽しく過ごしたかったから…。

 病気になって苦しんでいる姿は見たくなかったから…。

 だから、煩い事を言ったのだ。

 言わなければよかった。

 言わない方が、もっと楽しく過ごせたのに…。


 でも、ずっと一緒にいられると思っていたのだ。

 放っておけることでもなかった。

 言うべきことだと思った。

 言わなくてよかったのに。

 言わなければ、もっと楽しく過ごせたのに…。



 それに、あの日…私が行きがけにトイレに入らなければ…。

 出発時間が違ったなら、あの事故に合わなかったかもしれない。

 夫がコンビニコーヒーを頼んだ時に、私も注文していれば…数分ずれたらあの事故には合わなかった。


 ぐるぐると同じところを考えては打ち消した。

 

 考えても仕方のないことだ。

 今更、どうにもならないことだ。

 わかっている。わかっているけれど…。

 一度、思考の海に潜ってしまえば、抜け出せなくなっていく。



 「ご主人様、おはようございます。」


 エルの声で、朝になっているとわかった。

 もうそんな時間か…。

 結局眠れなかった。

 朝食を軽く食べて、午後には狩りに出かける予定だ。

 それまでの数時間、明るい陽射しの中でなら眠ることが出来た。


 そうやって数日を過ごしていた。

 タイマーが鳴ったスマホを見て、日付の確認はした。

 大和時間であと1日ある。

 イルルジオーネの時間で3日だ。

 明日、大和へ戻ればいいだろう。

 それでも夜の時間が残っている。




 「リハルドさん、鑑定してもよろしいでしょうか?」

 「はい。お願いします。」

 

 リハルドが、トレーニングを終えてお風呂から戻って来た。

 そこへ、楓花は声をかけた。

 リハルドはすっかりここの生活に慣れたようで、タオルで髪を拭いていた。

 楓花が声をかけたので、髪を拭くのをやめて起立した。


 「リハルドさん、普通に座ってください。」

 「しかし…。」

 「いいから。」

 

 ソファーに座ってもらい、隣に座った。

 鑑定で見る。


 「いかがですか?」

 「残念だけど、鬼人?のままですね。」

 「そうですか…。」

 「長くお風呂にも浸かってくれているし、もうしばらく様子見しましょう。」

 「わかりました。」

 

 リハルドさんが、気を落としている。

 ギルバートさんの事例を考えるなら、何十年後かに確定するのかもしれない。

 

 

 「エル、明日の朝からまたしばらく離れるね。」

 「明日の朝ですか…。」


 エルにスケジュールを伝えると、いつもとは異なる返答が帰ってきた。

 

 「ご主人様、もう少しここにいることは出来ませんか?」

 「お仕事があるもの、無理よ。家を空けすぎたもの、少し帰らないと…」

 

 エルが、メイド服のエプロンを握るのがやけに鮮明に見えた。


 「もしかして、リハルドさんに困っているの?」

 「いえ、違います。ここにいることに問題はありません。」

 「それなら、なぜ?」

 「ご主人様がお辛そうだから…ここを出たら、余計に辛くなるような気がして…。」

 「大丈夫よ。明日の朝出て…5日後にはまた来るわ。」

 

 翌朝、あまり眠れなかったままベッドから降りた。

 食事をしたら、大和へ戻って…郵便物や荷物を整理して、ごみをまとめて…早めに寝よう。

 スケジュールを立てながら、ダイニングに向かった。


 

 朝食を終えた楓花は、エルとリハルドに挨拶をして、大和の自宅へと戻った。

 自宅の駐車場に空間移動したが、ひどい眩暈におそわれた。

 頭痛と吐き気がひどい。

 車の荷物を下ろすのは後にしよう。

 外の郵便物を回収したら少し寝ようか。


 楓花は、玄関から外へ出ると冬晴れの明るさに目を細めた。

 眩しい。

 眩しすぎて気持ち悪い。

 郵便物を回収し、家へ戻るとソファーへ沈みこんだ。

 


読んでくださりありがとうございます。

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