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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者: 夢
第19章 楓花の悔恨

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9


 楓花は、神殿から人がいなくなるのを待った。

 改めてご神体の玉へ礼を取り、水を捧げた。

 それから、祝詞を奉じ、清めの舞を奉納した。

 神殿の中は、清められたようだ。

 神域も広がったのがわかる。

 神殿から出ると、神谷が立っていた。

 私を見て、深々と頭を下げてきた。

 そんなことをされると、困ってしまう。


 「どこまで広がったかな?」

 「どこだろうな?鳥居くらいあるといいが…。」

 

 二人で並んで鳥居まで歩いた。参拝客はもう帰ったらしく人はまばらだった。

 氏子たちの賑やかな声が聞こえてくる。

 ご機嫌でお酒を飲んでいるのだろう。

 境内の鳥居ともうひとつ先の鳥居の真ん中まででガードが止まっていた。

 これなら、少し強化して実家まで引っ張っていけばそれなりに大きくなるだろう。私の実家は、商店街の外れなので商店街のほとんどはガードで守れるはずだ。


 「楓花、相変わらずすごいな。」

 「そう?まぁ…今年はいつも以上にすごいでしょ?」

 

 私の少し自慢げな発言に、神谷は小さく頷いた。

 

 「振る舞いに出ないか?」

 「それは遠慮する。それより着替えさせて、めっちゃ寒い。」

 「そりゃそうだ。」


 羽織を着ていても、とっても寒い。

 急いで着替えると神谷に挨拶をして神社をあとにした。

 ガードは、ディアマンテと水晶で強化して、聖水を1本分だけかけた。

 それを実家のある区分を越えてすぐ近くの公園まで広げた。町全体は覆えない。それでも町の中心部一体を覆うことは出来た。



 翌朝、7時に起こされた。

 5時間も寝ていないが、お正月から文句を言うのは我慢した。

 歯を磨いて、顔を洗うと着物に着替え、髪を自分で丸く結いあげた。

 昔なら、日本髪を結いに行ったが、今は出来る人がいない。

 自分で丸く丸めて簪で留めた。

 羽織袴の父を先頭に、色無地を着た母と並んで神棚へと新年の挨拶をした。

 着物コートを着て、毛皮のショールも掛けた。

 雪下駄には、毛皮を張った覆いがついている。見た目はいいけれど、全く暖かくない。裸の下駄よりマシなだけだ。北海道には向いていない服装だと思ってしまう。

 本家に行って90を超える祖母に挨拶をし、親戚一同に挨拶をする。

 一通りの挨拶を終えると、「飛行機の時間があるので」と失礼させてもらった。

 両親は宴席へ残った。


 一人で実家に戻り普段着に着替えた。着物は皺にならないように衣紋かけにかけた。

 帰りは誰も見ていないので、スーツケースはコインケースへ収納した。

 大き目の斜め掛けバックだけをかけた。

 航空券はスマホの中だし、必要なものは揃っていた。

 家を出ようとして、達磨が視界に入った。

 そうだ、今年の願いをしていない。

 「今年も1年、家族が安寧に過ごせますように。」

 願いながら達磨の片目に墨を入れた。


 身軽な状態で、家に鍵をかけてバスステーションへと向かった。

 早めに空港に到着すると、お土産屋で買い物をして送ってもらう手配をした。

 飛行機から降りると乗り換えが面倒なので隣町の駅までの都市間バスに乗った。

 駅からバスを乗り換えれば自宅近くまで帰れる。

 

 バスの中で、ぼんやりとお金のやりくりを考えた。

 夫の保険金などで受け取ったお金の半分は、保険会社の確定年金にしてある。

 残ったお金の半分は、10年から15年の長期定期預金にしていた。

 叔父からの「人を亡くして動揺している時に重大な判断はするな」とアドバイスを受けていた。10年経てば、少しは落ち着いているだろうと思ったのだ。

 1/4は短めの定期預金にしていて、残り1/4は個別株になっていた。

 すぐに使える現金は、あと1年で終わる遺族年金と働いて得られる日給月給だけだ。

 敬一郎さんに貰った現金は、イルルジオーネのために使ってしまっていた。

 家賃はかからないので、固定資産税分を毎月積み立てている。

 それでも、自分一人だけならば余裕があるはずだった。

 だけど、イルルジオーネで使う物を買うので、毎月ぎりぎりだった。

 

 イルルジオーネのお金は使いきれないほどに溜まっている。

 だけど、イルルジオーネのお金は使い道があまりなかった。

 本当なら寄付してもいいのだけど、孤児院などは聖教会の併設だった。

 教会には関わりたくないので、そういった場所への寄付は難しかった。


 だからと言って、アートンやヒルストンに卸す品の値を下げれば、猟師や冒険者たちが得られる報酬に影響してしまうだろう。

 私が価格破壊を起こすわけにはいかないのだ。


 天龍とは今まで通りに過ごしたい。

 エカサ近くの村にいるサナとも今まで通りに遊びたい。

 リリーやララとも会いたい。

 だけど…真珠宮へ行くと、ギルバートさんがいる。

 泉の家には、リハルドさんがいる。

 アシュレイ様のところのアッシュはかわいいけれど、真人と鬼人になった騎士と兵士がいる。


 会いたいけれど、真人や鬼人になった人と会うのは怖い。

 今は良くても、いずれ長生きによる影響に気が付き恨まれるだろう。

 どうしよう…。

 でも、リハルドさんは泉の家にいる。

 リハルドさんを避けることは出来ない。




読んでくださりありがとうございます。

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