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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者: 夢
第19章 楓花の悔恨

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この作品は、ファンタジーです。


 楓花は、挨拶もそこそこにして泉の家へ戻った。

 エルには、リハルドさんにジャムは出さないようにお願いした。

 そうして、自宅へ戻った。

 30日の夕方になっていた。



 翌日の大晦日とお正月を実家で過ごした。

 実家に帰っても父のいる前では、お役目の話はしない。

 本家に顔を出し、集まっていた親戚一同でお寺へと向かう。

 子供の頃と同じ過ごし方だった。

 お寺では、檀家の人たちが大勢集まっており、年末の祓いを終えるとありがたい説教を聴いて、達磨を貰って帰宅する。

 達磨はくじ引きだった。大きさはそれぞれだった。

 

 家に達磨を置くと、シャワーを浴びてからしっかりと着込んで神社へ向かう。

 髪を乾かしていても、冬の北海道はとても凍れる。

 夫が亡くなってからは、正月を避けて帰省していた。

 冬に神社に向かうのは久しぶりで、ひどく寒く感じていた。

 厚手のダウンを着て、防寒用のズボンもはいていた。手袋も付けている。当然だが耳当ても毛糸の帽子もかぶっていた。

 それでも露出している頬がつっぱるように痛く、瞳を守るために涙が出てくる。

 歩いているのは町の中心地だった。街中といえども限界集落になる小さな田舎町のため、街灯も少ない。

 両親と一緒に歩く。

 交差点にある気温計は‐18度を示していた。


 「18度か。今日は暖かいな。」

 「暖かくないけどね。」

 「そうか?」

 「まあ、マイナスをつけずに言うの向こうでは通じないって知ってる?」

 「しらん。」

 「だよね…。」


 父とぼそぼそと話しながら歩いた。

 雪道のため、月明りが雪に反射し足元を明るくしていた。

 上を見上げると真っ暗な天の中で満点の星が広がっていた。

 

 神社の近くに行くと、それなりに人が歩いていた。

 神社へ行き、手水場で手を清め、口を清める。

 普段は人気がないけれど、お正月だけは参拝客が並んでいるようだ。

 それでも参拝の順番は10分も待たずにやってきた。

 両親と並んで3人でお参りをした。


 ここの神主は同級生で、先代がなくなって後を継いでいた。

 お参りを終えてお守りの授与所に寄った。

 氏子の人たちが手伝いをしていて、今年も高校生らしき女の子たちが巫女姿になっていた。


 「楓花、おめでとうございます。帰っていたか。」

 

 年始の神主は忙しいだろうに、なぜか出てきた。

 丸みがある体格は、どこかぬいぐるみのような愛らしさがあった。

 夫が亡くなってから喪に服していたから、4年ぶりだろうか。

 

 「神谷、おめでとうございます。久しぶりだね。」


 話しを始めると、両親は先に帰ると言って行ってしまった。

 

 「おじさんたちは相変わらずだな。」

 「まあね。どうかした?」

 「そうだな。頼みがある。」

 

 ここで私に頼むようなことは1つしかないだろう。

 

 「神谷のおねーちゃんは帰っていないの?」

 「ああ、全くだ。お前が巫女舞を奉納して以来、神職による神楽の奉納は出来ていない。」

 「女の子たちがいるでしょう?」

 「いる。祭りの度に奉納しているし、子供たちが獅子舞も奉納してはいる。」

 「そっか…。」

 「衣装なら用意してある。子供たちだけでは力が足りないようなんだ。」

 「それは、準備がいいね。」


 控室を借りて、用意してくれていた白い着物に赤い袴に着替えた。

 巫女の装束一式は、コインケースに入れていた。

 さすがに巫女の衣装が出てきては不自然だろうけれど、舞扇ならばおかしくはないだろう。掛けてきたバックには入るサイズだ。

 舞扇は自分の物にし、念のために帯には小刀も差し込んだ。

 

 神殿は、参拝客からは見えないように扉を閉ざしてある。

 神殿では、神谷が新年の祝詞を奉じていた。

 楓花は、そっと神社側の席へ座った。

 祝詞が終わると、巫女たちの神楽が始まり、獅子舞も奉じられた。


 さて、どうしようか。

 今年の私は清めの巫女だ。

 清めの舞をすることが許されている。

 それとも、いつも通りの神楽を奉じるべきか…。


 「神谷、清めの舞と神楽とどちらがいい?」

 

 決められず、隣にいる神谷へと小声で問いかけた。

 昔、神職に就く神谷にだけ家の事を話したことがあったのだ。

 

 「っ…今年はお役目の年なのか?」

 「そうなの。だけど…ここは私のお役目には入っていない。」

 「ここにそれを奉じられることはそもそもない。知っているだろう?」

 「それなら両方にしようか。」


 神谷が立ち上がった。

 氏子たちへ向かって話し始めた。


 「今から、神楽舞を奉じていただく。それが終わったら、振る舞いを用意しているので、速やかに移動をしてください。では、巫女殿お願いします。」

 

 名を呼ばれなかった。

 この場では、立場が違いすぎて神谷が巫女としては、私の名を呼ぶことは出来ないのだ。

 清め回りで、巫女様と呼ばれていたのと同じ理由だ。

 氏子が奏でる神楽に合わせて、舞を奉納する。

 それだけで、神域が神殿へと広がったようだ。


 周囲にいた、氏子のおじいちゃん方がぼんやりと見ている。

 神楽舞を終えると、神谷がおじいちゃんたちを振る舞いに追い立てて人払いをしてくれた。

 神職であれば、見てはいけないというのが通じるが、一般人には無理なのだ。



読んでくださりありがとうございます。

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