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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者: 夢
第19章 楓花の悔恨

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 「旦那様、フーカ様、自分語りをさせていただいてもよろしいでしょうか?」

 「ああ…」

 「お願いします。」

 

 敬一郎さんは、かなり動揺している?

 楓花は静かに深呼吸をした。


 「私は、公爵家の5男として生まれました。5男となると、爵位を継ぐことも余剰爵位を受ける事も稀でした。そのため、幼き日より王宮に勤めるために侍従教育を受けて育ちました。同時に触りではありますが騎士と同等の体術も学びました。幸いにも斥候の才を認められた事もあり、50年前の深淵との闘いに参加しました。」

 「前回ですね。」

 「はい。私が参加した時には、戦い始めて2年近くが経過しており、終結まで残り数カ月でした。聖騎士は全て倒れた後だったため、参加の前には聖教会で1カ月ほどの清めを受けました。」

 

 清め?内容が気になるけれど、今問うのは違うのだろう。

 あとで聞こう。


 「作戦に参加と言っても、私は斥候ですので深淵の状態を探り、現在地を見守るのが役目でした。」

 「大事なお役目ですね。」

 「ありがとうございます。見守るだけですので、騎士たちからは役立たず扱いもされましたが、深淵の魔を浴び続けながら見守るのは…正直恐怖でした。事前の清めが必要な理由も役目についてから理解出来ました。」

 「清めとは、聖なるモノに触れれば、体内の魔石は育ち魔への耐性が付くと言われていました。魔人化を防ぐためです。」

 「戦いの最中、幾人もの騎士や兵士が魔人となり、部隊へ攻撃しました。当時の人的損失の7割は…おそらくですが魔人によるものです。私以外の斥候は全て魔人となり、処分されています。」

 「!?」

 

 楓花と敬一郎は息を飲んだ。

 ギルバートさんの声は静かだ。静かに思い出しながら話しているようだ。

 

 「先代が最後の最後で参加なさって、深淵を沈黙させてくださいました。生き残った者のほとんどは、作戦終了と同時に自決しました。瞳が赤く染まっており、魔人化するのも時間の問題だったので、仕方のない事でした。」

 「私は、失敗したのです。丁度新しい聖女様が立たれ、祈りと聖水を頂きました。そして先代は、私をこちらへ引き取ってくださったのです。かなり長い間は聖水を頂きました。」

 「聖水を?」


 泉の家の聖水を届けていたのだろう。

 そう考えたなら、私が用意した品と同じだ。

 ギルバートさんには馴染のある品だったに違いない。


 「はい。先代は、聖水の他にもエリクサーや様々な手配をしてくださいましたが、足の傷やいくつかの傷は治りませんでした。私は…全身に深い傷があり、自決しようとしていたのですから、治らない傷があっても仕方がない事だと思います。魔に強く侵されてもいたからか私には効果が異なりました。」

 「つまり、ギルバートさんは聖水を飲むことで森人になったの?」

 

 ギルバートさんは小さく首を振った。


 「一昨年まで私は、“鬼人?”でした。“?”が付くのは、先代は経過途中だろうとおっしゃっていました。僅かですが、魔人になる可能性と背中合わせでした。だからこそ、私は先代の元で暮らしていたのです。そして、今は旦那様の元で仕えさせていただいています。」

 「それって…。」

 「万が一、魔人になってもヒシフォートの騎士団ならば対処出来るからだ。」


 敬一郎さんの言葉が、痛い。

 敬一郎さんがさらに続けた。


 「もっとも、そんな事はすっかり忘れていた。普段は知っての通り瞳もわずかに赤を残していたがよく見なければわからないし、もう変化することもないと思っていた。」 

 「それで鬼人?ですか。それがなぜ森人になったのでしょう?」

 「あのジャムか…。」

 「おそらくはそうだと思います。今、楓花様に見ていただくまで、何者になったかは知りませんでしたので。予想にはなりますが。変化を感じたのはあの時です。」

 「ジャム?」

 

 楓花は問いかけて、ヒールベリーのジャムを作って渡した事を思い出した。


 「昨年いただいたフーカ様のお手によるジャムの効果は素晴らしいものでした。全身の古傷が全て治り、若返ったのです。」

 

 血の気が引いた。

 私のせいだったのか。


 「フーカ様、私は魔人になることに怯えて暮らしていましたが、その恐怖は消え去りました。先代は非常に長生きでした。おそらく旦那様もフーカ様も同じでしょう。私はお二人をこの先もお支え出来る事が嬉しいのです。」

 

 

 あまりの罪深さに楓花は眩暈がしていた。

 ギルバートさんは、生きる意味があるのだとそう言うことで私を慰めようとしている。

 それは、理解していた。

 だけど、それ以上に…胸が痛くなってきた。

 

 「楓花さん、どうしましたか?」

 

 敬一郎の問いかけに、楓花は曖昧な笑みを浮かべた。

 

 「ギルバートさん、辛いお話しをありがとうございました。」

 「とんでもございません。」

 

 楓花は、ギルバートの話の続きを遮った。


 「リハルドさんも変化途中です。もしかしたら、森人になるかもしれないの?」

 「可能性はございます。」

 

 それなら、あのジャムは絶対に食べさせないほうがいいだろう。

 リハルドさんがなったとしても、ギルバートさんがいる。一緒に時を過ごせるから、いくらかはマシかもしれない。でも…二人の年齢差は30歳前後だから、イルルジオーネの人々で言うところの人間の大人になってからの生の長さに等しい。

 それほどの時間を独りで暮らす?

 なんて酷い話だろう。

 リハルドさんは何ひとつ悪いことなどしていない。



読んでくださりありがとうございます。

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