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泉の家へ戻った楓花は、リハルドを家へ招いた。
瞳に赤は残っているが魔はほとんど消えているので、家に入れても大丈夫なのだ。
エルの許可も得ている。
今後は、家の中で療養してもらうことにした。
リハルドを家の中へ案内すると、緊張しているようだったが、個室もある。時間が経てば慣れるだろう。
楓花と敬一郎はもう一度、ヒシフォートへ移動した。
楓花は真珠宮の部屋を借り、アンに手伝ってもらいドレスへと着替えた。
ドレスと言っても大仰なものではなく、失礼にならない程度のものだ。これから断罪されるのだから、ドレスなんてと思ったけれど敬一郎さんからの指示だった。
アンに案内されると、既に皆さんは広間へ集まっていた。
そこには、敬一郎さんや泉の家にいた20人とギルバートさんがいた。
「皆さんの今の状態を鑑定してもよろしいでしょうか?」
敬一郎の問いかけに、ジリアント伯爵が答えた。
「わかりました。元帥閣下とフーカ様ならどうぞご覧ください。その鑑定結果は、ここにとどめてもらえますか?」
「もちろんです。」
敬一郎が応じて、楓花を促した。
念のため20人に簡単に人種だけ見ようと鑑定をかける。
頭の上に人種だけが浮かび上がった。
【真人】【鬼人】【真人】【真人】【真人】【鬼人】【真人】…。
楓花は息をのんだ。
どうしよう…みんな人間じゃなくなっている。
「ケイさん、皆様とても申し訳ないのですが…。」
「楓花さん、何度も言いますが貴方が謝る必要はありません。」
「でも…皆さん、人間ではなくなってしまっています。」
「…え?」
驚くよね。
私のせいだ。
魔人にはならなかったけれど、人間でもない。人ならざる者になっていることに変わりなかった。
「真人と鬼人になってしまっています。やはり、元通りには出来ませんでした。」
楓花は声が震えてしまっていた。
顔を伏せてしまう。
皆の顔をこれ以上見ていられなかった。
人間じゃないなんて、どう謝っても謝り切れない。
「それは誠ですか?」
静かな声で問いかけてきたのは、ジリアント伯爵だった。
自分より明らかに年上で、この世界ではそろそろ引退する年齢だろう。
視線を向けると、名前と年齢も浮かび上がった。
【シャルル・ドール・ジリアント、35歳。鬼人。】
35!?
その割には、老けて見える。どう見ても40代に見えていた。アラフォーには違いないけれど、かなりギャップがあった。
イルルジオーネの人々は年齢高めに見えると思っているが、本当に老けて見える。
私よりも年上に見えるのに、年下だったとは。
貴族だ…爵位を持たない私が何かを言うのも不敬だろう。
ジリアント伯爵を一瞥したケイさんに問いかけられた。
「楓花さん、説明してもらえますか?いや、その前に…。」
敬一郎は、全員へ視線を流してから、楓花を見た。
「皆に紹介しよう。名はもう知っているだろう。この度の戦で、我らに聖水や癒しの日を与えてくれたあの泉の管理者であり、大魔導士の楓花さんだ。ヒシフォートクラレンスの至宝である。」
「おぉ、やはり」
「それでは、楓花さん先ほどの続きの説明をお願いします。」
「はい、ジリアント伯爵様とこちらの方たちは、種族が鬼人になっています。こちらの方たちは真人です。」
ジリアント伯爵とクリトン伯領の騎士数人、国軍の指揮官を含む数人、ヒシフォート領騎士団の数人が鬼人になっていた。
真人も国軍と3領の騎士と兵士ばかりだ。
深淵の至近距離にいたのが、敬一郎さんに近い人たちだったのだろう。
楓花は、覚悟を決め顔を上げて自分の罪深さを告白するように、声を震わせながら嘘偽りなく説明していく。
集まっていた人たちは、黙って聞いていた。
楓花が話し終えて、消えそうな声で「ごめんなさい」と言ったが、その声が彼らに届くことはなかった。
「上位の人類になってしまったのか!」
「俺が鬼人…」
「伝説の鬼人に…」
「真人だなんて…」
がやがやと盛り上がっている様子だ。決して嫌がっている雰囲気ではない。
楓花も敬一郎も唖然として見ていた。
ギルバートさんだけが、いつもと変わらない様子だった。
「ああ、女神よ。私を…我らを次の段階へ導いてくれるとは…。」
ジリアント伯爵のその言葉で空気が一変した。
まるで舞台の上の俳優のように、恍惚とした表情をしている。片膝を立て左手を心臓に当て、右手を伸ばしてきた。
自分に向けられている右手を見て呆然としてしまう。
楓花は思わず後ずさった。
ジリアント伯爵は、左手を後ろへ組み右手を心臓に当て、表情を真面目なものに変えると一度視線を落とし、もう一度見上げて来た。
視線が合ってしまったが、あまりにも真剣な瞳に身動きが取れなくなってしまった。
「私、シャルル・ドール・ジリアントは、フーカ様へ永遠の忠誠を誓う。今この時より、私はフーカ様の剣であり盾となりましょう。」
「フーカ様、右手を差し出していただけますかな。」
ギルバートさんの声に、右手を差し出した。
ジリアント伯爵が、その手を取り指先へキスをする真似をした。
肌へは触れていないと思う。
だけど、真似された瞬間に白い光が飛んだ。
それを皮切りに、全員が同じ誓いを立て始めた。
私は、それを制することも出来ずに、ただ右手を取られていた。
読んでくださりありがとうございます。
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ジリアント伯爵のフルネーム合っていると思いますが、もし違ったら教えてください。




