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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者: 夢
第19章 楓花の悔恨

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3


 楓花はエルとの相談を終えると、彼らに声をかけて降りてもらった。

 21人が梯子から降りてくる。

 誰もが降りて数歩離れて固まった。


「フーカ様、神の国へ案内してくださったのですか?」


 リハルドさんの言葉に一瞬固まった。


 「違いますよ。こちらは泉の家です。」

 「皆さんをお家には入れられないの。ごめんなさいね。」


 私のせいなのにリハルドさんの目は暗く赤いので、少し怖いと思ってしまう。とても申し訳ないと思うけど、恐怖心は消えそうもない。


 「とんでもございません。」

 「この川の水は聖水だから、これを汲んでお風呂にして浸かるといいと思うの。冷たくてよければ、そのまま寝転がってもいいですし。」


 彼らが降りている間に、テントが袋で用意されていた。


 「皆さん、この子はエルです。5m以上近くには近づかないようにお願いします。」

 「5m?わかりました。エル様、私はリハルド・トリドールと申します。我らを受け入れてくださりありがとうございます。」

 「いえ、それはご主人様へ。」


 エルは彼らと話したくないのかもしれない。素っ気ない態度に申し訳なく思った。


 「皆さん、申し訳ないのだけど…しばらくはここで過ごしてください。ここの川は聖水なので浸かってもらいたいです。ただし、ここまででここから上は行かないようにしてください。」

 「ここですか、わかりました。」

 「このテントを使ってもらえたらと…。」


 印が必要だと思い当たり、いつもガードの内側に使っている柵を張っていく。

 張り終えてから、エルを見た。


 「それと、お風呂はどうかなと思って…川の水だと冷たいから長く入れないでしょう?」

 「それは、そうですね…。」


 エルの視線が川から5mほど離れた場所へ動いた。

 私もその視線を追って、見ていると窪みが出来て水が沸き上がった。


 「なにこれ…」

 

 近づいて見た。


 『妖精の聖なる温泉:聖なる泉の主の求めに応じ妖精が掘り当てた温泉。魔を祓い、傷を治す。節々の痛みを緩和する。肌のきめを整える。』

 

 「わぁ!温泉!!すごい効能!」

 「これって、私も入っていいかな?」

 「魔を入れるなら、その前にお入りください。魔が入って直ぐは汚れています。」

 「そうなの?なら今度にするわ。」


 彼らのために作ってくれたのだ。それに本人たちの前でちょっと聞かせたくない言葉だった。

 

 「あ…コホン、皆さんのためのお湯だから私は後でも大丈夫よ。」

 「最初に入ってみますか?皆さんには、泊まる場所の設営もしてもらいますから、まだ入れません。だから、入るならその間にしましょう。」



 「フーカ様、我らはテントを張らせていただいてもよろしいでしょうか?」

 「それはもちろん。申し訳ないけどお願いします。」

 「でしたら、その間にフーカ様は温泉をどうぞ。フーカ様のために造られた温泉です。一番風呂は主のものです。」

 「そういうもの?」

 「そういうものです。」


 魔に侵されて辛いだろうに、リハルドさんは気を使ってくれた。

 ここで断るのも変だし、造ってくれたエルはお風呂の準備を始めている。断るのも野暮だと思い、入らせてもらうことにした。


 エルが衝立や台などを用意してくれ、気が付けば立派な露天風呂が出来ていた。

 お風呂は、優しく輝いていて、その前には川が流れ、奥には木々がある。美しい光景を見ながらお風呂に浸かるのは、なんとも贅沢な時間だった。

 その間だけは、罪悪感から解放されていた。

 もしかしたら、それは聖水の力によるものかもしれない。


 お風呂から上がると、リハルドさんたちのテントも出来上がっていた。

 彼らへお風呂を勧め、一緒に夕食作りをした。

 食事を終えると、魔について書かれた本と聖水やその他補充品を車に乗せ、砦へと戻った。

 



 砦では、敬一郎が指揮を執っていた。

 私のうっかりのせいで、皆さんの予定を狂わせてしまっていた。


 「ケイさん、戻りました。聖水の追加を持ってきています。」

 「ありがとうございます。今受け取ってもいいですか?」

 「ええ、もちろん。」


 聖水を渡し、食事の準備を始めた。

 皆疲れた顔をしていた。

 今回のことで離脱者が多くなってしまい、申し訳なくて仕方がなかった。

 皆が食事を始めた頃、私は第2ガードを強化した。

 少しでも強くなれば、深淵の動きをさらに弱められるかもしれない。


 「お願い、これで深淵を滅して…。」


 聖水も今までのようにコップに数杯ではなく10L一本分近く、纏わせられる限界まで纏わせた。

 不意に周囲が輝き、そして楓花の意識がぷつりと切れた。




読んでくださりありがとうございます。

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