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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者: 夢
第19章 楓花の悔恨

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 楓花は、深淵の血に染まった騎士や兵士たちを見て血の気が引いた。

 元々は、自分が怪我人に駆け寄った隙が原因だった。

 私はガードがあるからと安心していた。

 だから、戦闘中でも怪我人に駆け寄ってしまい、後ろに来た深淵に気が付くのが遅れてしまった。

 私を守るために、ケントさんやアーサーさんが深淵の頭を傷つけた。

 頭部を傷つけてしまえば、魔を帯びた血液を撒き散らす。

 それは最も避けてきたことだった。

 そうならないように、今まで近距離攻撃は極力避け、遠距離攻撃を中心にしてきたのだ。

 ガードの発動中は大人しくなるといっても、攻撃を受ければ身を守るために抵抗するのは当たり前だ。

 深淵が大きく頭を振りかぶれば、魔を帯びた血を撒き散らしてしまう。


 ケントさんとアーサーさんが、深淵の舌を切り落としたのを機と見て、総攻撃が始まってしまった。

 ケントさんやアーサーさんは、ガードの指輪で守られている。

 だけど、他の方たちは違う。

 彼らを守るのは、防具である鎧や兜だけだった。

 傷があれば、そこから魔を吸収してしまう。目や口などの粘膜に付着しても魔を吸収するだろう。今までなら対応できていた。だけど、この量の血を浴びてしまえばどうなるのかわからない。

 

 敬一郎さんから、深淵の血液の恐ろしさは聞いていた。

 だからこそ、深遠の頭が下がるまでは弱らせるつもりだったのだ。

 それなのに、血を浴びながらの乱戦だなんて…こんなの予想していなかった。

 どうしよう、こんなに大量の血を浴びてしまっては、彼らが無事なはずがない。


 深淵を沈黙させるまでは出来なかったが、ある程度の攻撃を終えたところで「撤退」の号令が出た。

 私は、あまりの罪深さに足に力が入らない。

 皆血まみれだった。

 ケントさんやアーサーさんは私へと手を伸ばしてくれたが、血まみれの手を見てひっこめてしまった。

 後方で指揮をしていた敬一郎さんが駆け寄って来てくれた。敬一郎さんの手を借りて、なんとか砦まで戻った。

 怪我人はポーションで治っていたので、一緒に砦まで歩いてもらう。

 怪我が治っても、失った血液が十分に戻っているわけでではない、ふらふらとしていた。


 今回の作戦で血を浴びた人は、ヒシフォートの駐屯地へ向かってもらう。

 ヒシフォートの駐屯地は砦の入り口近くでよかった。

ガードの効果を十分に発揮するための位置取りだった。

楓花は彼らが過ごすスペースを取るため、車を砦の入り口からほんの少し奥へと移した。

 見る限り血を浴びていない怪我人は、救護所へ向かってもらった。救護所では、多めに聖水をかけてもらっている。問題があれば、こちらへ送ってくれるはずだ。


 ヒシフォートの救護所近くでは、第1ガードへいれるために、シールを貼る人を置いた。

 シールを貼る前に、その部位だけ化粧用のパフに聖水をつけて拭いてもらった。

 運ばれてくる人たちは、深淵の血を浴びている。

 もしも魔人になっていたら、ガード内へ入った瞬間に消えてしまうはずだ。

 アシュレイ様の町であれほどの人が消えたのだ、この騎士や兵士の何人が残ってくれるだろうか。


 楓花は不安に駆られながらも、車の蛇口にホースを繋ぎ、用意していたシャワーを取り付けた。

 握ればシャワーが出るタイプの物で、庭の水まきなどに使う物だ。

 それから、衝立を立てて3つの簡易シャワーブースにした。


 「皆さん、防具を取り外して、今からお渡しする袋へ服を入れて、ここに並んでください。中に入ったら、服を脱いでそれも袋へ入れてください。用意したコップの水でうがいをしてください。終わったら順番に頭から水をかけます。」


 集まってきた人たちに声をかけ、兵士の一人に袋係をしてもらう。

 並ばせるのに5人、うがいの水を用意するのに1人、洗い終えた人が使うタオルや着替えを用意するのに1人だ。

 血にまみれているけれど、お互い様でやってもらう。

 汚れていない者には、念のためにゴーグルとマスクを着けてもらった。それから、ガードの指輪もつけてもらう。

 敬一郎がやってきて、木箱を取り出した。


 「これは着替えです。1箱に50セット、300着あるので使ってください。」

 「ありがとうございます。助かります。」

 「どうか皆を頼みます。」


 敬一郎が頭を下げるのを、楓花は申し訳なく思った。

 シャワーブースに人が入ったので、水をザっとかけて洗い流した。

 水をかける役目は、数人に行ったが、シャワーから戻ったアーサーさんとケントさんが来てくれたので交代した。

 洗い清めた人には、聖水を飲んでもらい、強い影響がなければ治療師へと送った。

 治療を終えた人で影響の弱い人たちは、護衛をつけて森の入り口まで降りてもらった。

 森の入り口に到着したら、石鹸を使って体を洗ってもらい、清水にしっかりと浸かって、身を清めてもらう手筈だ。



 楓花は、途中で魔石を補充し、ガードや水が途切れないように気を配った。

 私のせいで、沢山の人が傷つき、魔に穢されてしまった。

 謝って済むことではない。

 申し訳なさ過ぎて、そちらに思考が傾いた途端に足元から崩れ落ちそうだった。

 手が震えていたが、なんとか震えを抑え込み、今出来ることへ向き合った。

 

 魔の影響を強く受けた人は、瞳の赤さで機械的に分けた。そうしないと自分の罪に押し潰されてしまいそうだった。

 外のシャワーでもかなり瞳が赤い人たちには、外2階に入ってもらいシャワーで石鹸を使ってもらった。

 それを終えた人を楓花が治療していく。

 目が赤い人を見るたびに目元が熱くなる。

 慌てて目元を抑えた。

 泣いている場合ではない。

 リハルドさんやヒシフォートの騎士団に何かあれば、敬一郎さんに顔向け出来ない。

 魔の影響を受け始めると流血を抑えるようだ。それでも、深そうな傷を中級癒し水で流し、消毒薬をかけた。軟膏を塗りガーゼで覆って包帯を巻く。


 「楓花さん、消えた者はいないようだ。穢血を浴びてすぐに魔物にはならないようですね。」


 楓花は、敬一郎の言葉にほんの少しだけ気が楽になった。

 

 「よかった…。」


 私に出来る事は、なんだろう?

 体を洗い流し、怪我の治療をした。

 あとは、清めるしかできない。

 聖水はある。

 泉の家の果物であれば、少しは魔を祓ってくれるかもしれない。

 

 もしも魔人になってしまったら、消えてしまうだろう。

 そうなる前に、少しでも清めて防がなくてはならない。

 以前読んだ魔についての記述を信じるしかない。

 


読んでくださりありがとうございます。

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