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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者: 夢
第18章 深淵 【リハルド】

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 「リハルドさん、おひとりですし、この環境に体も慣れたと思うので、お家の方へどうぞ。」

 「お家?」


 皆が魔導車へ乗り込んだので、閣下に切られる覚悟をしていた。

 だが、まだ見捨てられてはいないようだ。

 フーカ様の言葉に希望を持ってしまう。


 「私は3日に1回とか6日に一回とかで来るので、リハルドさんの一人暮らしになってしまいますが…。」

 「そんなこと、居場所をいただけるならありがたいです。」

 「私、皆さんをお送りするので、リハルドさんは家の中でお寛ぎくださいね。」


 エル様の案内で家に入り驚いた。

 見たことのない造りをしていた。

 いや、フーカ様の魔導車の中に似ているというべきだろうか?

 玄関に段差があり、靴を脱ぐことを求められた。

 天幕での生活でも靴を脱ぐ生活だったが、何かこだわりがあるのだろう。

 室内に入ると、すっきりとしていて装飾が一切排除されていた。


 「こちらでお寛ぎください。」

 「ありがとうございます。」


 柔らかい椅子に座っていると、上質な紅茶が出された。

 それにフーカ様が時々お持ちになる菓子まで供されてしまった。


 「エル様、私がここで過ごすのは嫌ではありませんか?」

 「なぜそんな事をお聞きになるのですか?ご主人様からお世話をするよう言われております。少々失礼します。」

 

 エルは一礼すると、玄関へ向かっていく。

 見上げると、部屋の明かりはシャンデリアではなく花の形をしており、発光していた。

 装飾はないに等しいが、明かりまでがこのように美しいのか…。



 「ただいま~」


 フーカ様の声に立ち上がり、お迎えに出なければと思っていると、フーカ様と閣下が部屋へ入ってきた。


 「リハルド、待たせたな。」

 「いえ…。」

 「楓花さんから、話を聞いたほうがいいだろう。」

 「わかりました。」


 居ずまいを正しフーカ様を見た。


 「帰した方たちは、完治しましたが元通りという訳ではありません。」

 「そうなのですか?」

 「ええ、分かりやすいのは目です。魔の黒い靄が紫煙に、聖なる光も見えますよね?」

 「…はい。」


 返事をしたが、喉の奥がひり付く。

 

 「他にもあるのですか?」

 「こちらに来た皆さんは、体内に魔石を持っています。」

 「魔石?それって魔人ですか?」

 「そうと言うべきか、違うと言うべきか…。最初に治った方たちは、人間と真人(まひと)でした。」

 「真人…。」

 「今回治った方たちは、鬼人(おにびと)でした。」

 「鬼人…?」

 「深淵との生き残りの一部は、鬼人となったと記録も残っている。」


 閣下が、フーカ様の言葉を補うように言葉を重ねられた。


 「そうでしたか。具体的に何が違うのでしょう?」

 「寿命が延びるらしい。100年とも150年とも言われている。」

 「それは…すごいですね。それを彼らには?」

 「伝えてある。」

  

 完治すると、新たな人種としての人生があるのか。

 それも真人や鬼人とは、夢がある。

 

 人生50年と言われているが、真人の寿命は100年、鬼人は150年と言われているらしい。今の話で、教会にある聖書にはそう書かれていたのを思い出した。

 

 「リハルドさんはまだ治療中です。種族は確定されていません。」

 「そうですか…。」


 フーカ様の言葉に頷きつつ、閣下を見た。

 

 「しばらくは、ここで過ごさせてもらうといいだろう。」

 「はっ。お役に立てず申し訳ありません。」

 「いや、私の差配ミスだ。お前たちをここまで危険な目に合わせるつもりはなかった。」

 

 「焦っても仕方ありませんし、シャインマスカットをどうぞ。」

 「シャインマスカットですか、はは…。」

 

 閣下は疲れた笑いを浮かべると、ブドウを食べ始めた。

 

 「シャインマスカットというのは?」

 「このブドウの品種です。皮ごと食べられて種がないので食べやすいでしょう?」

 「はい、とても美味しいです。黒い大粒のも美味しいですが、皮をむいて種を取るので、少々面倒ではあります。とはいえ、どちらも贅沢品ですし、甘くておいしい。」

 「そうなのよね。巨峰はおいしいけど、指先が紫になってしまうの。」

 「キョホウというのは、黒い大粒の物のことですか?」

 「はい、そうです。」

 「巨峰も数年前までは、贈答品に使われていましたよ。」

 「今も使われてはいるとは思うのよ?」

 

 フーカ様と閣下はブドウの価値について話し始めたようだ。

 何度食べても不思議なほどに甘い。

 シャインマスカットか…確かに輝いていて、名前の通りだった。


 この家でも、広くはないが上等なベッドのある部屋が用意された。

 朝昼晩と外の風呂に入り、一人で体を鍛え、素振りをした。

 

 数日おきにフーカ様はやってきて、寛いでいらっしゃった。

 いつもの柔和な表情ではなく、時には悩んでいらっしゃる様子もあった。

 お越しになっている時には、邪魔をしないよう出来る限り外や部屋で過ごした。


読んでくださりありがとうございます。

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