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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者: 夢
第18章 深淵 【リハルド】

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 フーカ様がノートとペンを与えた兵士を中心に料理をしていた。

 焼き台で湯を沸かし、スープを作っているようだ。

 野菜は、生のまま聖水で洗い、切っただけで瓶に入った調味料をかける。


 「料理に聖水を使うとか意味が分かりません!」

 「聞いたことないな。」

 「野菜を聖水で洗うなんて…。」

 「それを言うなら、風呂にするのも…」

 

 わははと笑いながら食べているが、これがどれほどありがたいか皆知っている。

 ここにいたら、魔物化はしないだろう。

 何をするにも聖水を使う。

 聖水の湯に浸かることが仕事だと言われたようなものだ。


 天幕の中のベッドへ転がる。

 フーカ様のキャビンほどではないが、寝心地がよかった。


 「隊長、俺たちあの岩場の砦でも6日に一度くらいは、フーカ様の魔導車で寝られたじゃないですか。」

 「そうだな。」

 「あれでかなり助けられたと思っていました。大魔導士様だと…。」

 「ああ。」

 「でも、違いましたね。」

 

 違うといわれても、返す言葉が見つからない。


 「魔人になっていただろう俺たちを、こうやってお膝元まで招いてくださった。聖水の源のようなこの場所で、こうやって過ごせるのは夢のようです。」

 「それは、その通りだ。」

 「明後日になれば、お手伝いが許されるのですよね?」

 「そうだ。そのためにも明日も朝・昼・晩と湯に浸かり、聖水を飲んで穢れを払うぞ。」

 

 翌日も、朝から風呂に浸かり、食事をしては風呂に浸かるという贅沢な時間を過ごした。

 砦と同じ過ごし方だったが、周囲は明るく輝いていて、砦のような陰鬱な様子ではない。その差が、開放感を与えてくれていた。

 昼にはエル様が肉と果物、それに野菜を持って来てくれた。


 「大将、こんな贅沢許されるのでしょうか?」

 「これも魔を払うためだ。有難くいただこう。」

 「こんなことで魔を祓えるのでしょうか?」

 「ひと吹きで表面の魔を祓う聖水をたっぷりと飲んで、浸かっている。きっと祓える。それに…鏡を見るとよい。」

 「鏡?」

 「ああ、鏡を見てみろ。」

 

 兵士の目は、元の目の色に戻りつつあった。

 瞳の中心だけは赤みがかっていたが、ほぼ元通りだった。

 よく見れば、半数ほどの者たちの目がそうなっている。

 すごい効果だ。

 ここまで強い効果があるのか。



 翌日の昼、エル様が食材を持ってやってきた。

 

 「エル様、収穫のお手伝いをします。」

 「わかりました。ではこちらへ。」


 光の屋敷の奥へ回ると、畑と果樹園が広がっていた。

 

 「畑は、今日はこの列を収穫します。それから、果物は実っているもので食べごろであれば、収穫してこの薄い籠へ並べて入れてください。」

 「かしこまりました。」


 リハルドたちは、畑の野菜の収穫を終えると果樹の収穫を始めた。

 どの木も鈴なりになっていた。

 

 「この手で皮が剥けるオレンジ、ここまで成るのか。」

 「グレープフルーツみたいだな。」

 「1本の木で相当収穫出来るな。」

 

 果樹は同じ種類が数本ずつあるようで、あの皮ごと食べられるブドウだけではなく、大粒の黒っぽい葡萄もあった。


 「これは?」

 「こちらは、巨峰という品種です。手で皮を剥く必要はありますが、甘味が強く香りもよいです。」

 「そうでしたか。」

 「果物は、ご主人様が喜んでお召し上がりになります。」

 「これほど収穫してしまっては、フーカ様がいらっしゃるまでもちますか?」

 「はい、こちらで保存を行いますので、ご安心ください。」

 

 保てるならこちらは収穫するのみだ。

 収穫を終えると、好きな物を食材として持って帰るようにと言われたので、調理担当の兵士たちは何を作ろうかと盛り上がっていた。


 森の中では、1年近く味気ない食事が続いていた。

 ここに来てから、豊富な食材を料理出来るのも楽しいのだろう。

 何より、珍しい調味料がある。

 



 ふわりと空気の揺らぎを感じた。

 フーカ様の魔導車がお屋敷の前に止まっていた。



 私たちは車の前に集まり、礼をとる。

 フーカ様が降りてこられた。

 やはり、光り輝いていらっしゃる。

 よく見るとフーカ様は薄い光のべールを纏っていらっしゃった。

 ドレスではなく、男のようなパンツスタイルであっても、お美しかった。

 

 「リハルドさん、皆さんやめてください。普通に接してくれてかまいません。それより、これどうぞ。」

 

 フーカ様は、キャビンから白くカサカサとした袋を取り出し、渡してきた。

 

 「これは?」

 「ここの畑では取れない物よ。入っている袋は食べられないから、この袋に入れてエルへ渡してね。」

 「かしこまりました。ありがたく頂戴します。」

 

 受け取り袋の中身を見て腰を抜かしそうになった。

 きのこだった。

 森でしか取れない貴重な品で、薬の材料でもある。


 「きのこは、体の余計な物を出してくれるから、食べるといいわ。」

 「これは煎じて飲めばよろしいのでしょうか?」

 「煎じる?」

 

 フーカ様は少し考える素振りをなさった。


 「そうではなく、普通にスープに入れたり、バターソテーにしたりするといいよ。」

 「そのまま食べるのですか?」

 「ええ、そうよ。夕食はこれからですか?」

 「はい。」

 「それでは、私も加えてもらえますか?」

 「もちろんです。」

 「夕食は何を予定しているの?」

 「これを使ったパンとスープ、それに木の実ウサギの網焼き、サラダです。」

 「それなら、スープにキノコも加えましょう。」

 

 フーカ様は手際よく、透明な袋からキノコを取り出した。

 下の部分を切り落とし、手で割いていく。

 料理をしていた兵士もそれを真似て、きのこを割いた。フーカ様の指示を受けながら、切り分けていた。

 いつ見ても見事な手捌きだ。



読んでくださりありがとうございます。

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