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「エル様も、我々が出来ることがあればお申し付けください。」
「せっかくですから、2日ほど寛いでから収穫のお手伝いをお願いします。」
「2日も寛ぐ必要は…。」
「2日間は毒だしです。しっかり湯なり川に浸かってください。」
そういう意味か。
今は穢れがひどいのだろう。
申しわけない事を言わせてしまった。
「それは申し訳ない。不躾でした。穢れを払ったのちにお手伝いをさせてください。」
リハルドは、頭を下げた。
「リハルドさん、皆さんもそうですが、結構な量の血を浴びてしまいました。ここでしっかりと癒してください。」
「はい。できる限り水に浸かります。」
「3日後からは、収穫のお手伝いをしてもらいますから、遠慮なく食べてくださいね。」
フーカ様のその言葉はありがたかった。
収穫の手伝いなど、大した仕事ではない。
これほどのことをして頂いた対価にはなるはずもなく、俺たちが楽に過ごせるようにとの気遣いだ。
その日は、フーカ様にロングライターなる火付け棒の使い方を教わり、一緒に料理を作りながら調味料の説明も受けた。
「こちらがお醤油です。かけるだけで美味しくしますが、煮物に使ってもおいしいです。」
「こちらは、こしょう、トウガラシ、チリパウダーにカレーパウダーなどの香辛料です。」
「フーカ様、申し訳ありません。覚えられそうもありません。」
料理担当のつもりらしき兵士が、声を上げるとフーカ様はペンと紙が束になったノートなる本のような物を渡された。
「このペンは、こうやって上を押すと先が出て書けます。使わないときには、もう一度押してください。」
兵士が受け取り押すと「カチ」っと音がしてペン先が出て、もう一度音がしてペン先が引っ込んだ。
ペンとインクとは異なる道具に目をみはったが、フーカ様は説明すると、次に移った。
「こちらはスープの素です。5人分でこのスプーン1杯です。味はつかないのでただのだしです。塩やこしょうで味は調えてくださいね。」
「だしですか?」
「はい、だしです。次にこちらの入れ物は、ドレッシング類です。お野菜にかけるだけでおいしいサラダになります。」
「こちらは、マヨネーズとケチャップです。マヨネーズもケチャップも野菜にも会いますが、肉や魚にも合います。かけるだけでいいですが、ケチャップは煮込んでもおいしいです。」
「これは柔らかい容器ですね。」
「ええ、絞りやすいでしょう。粉以外は開封したら日持ちしないので、2日くらいで食べきってくださいね。」
見慣れない知らない物のオンパレードだった。
糧食を多少料理するといっても、使う調味料は塩と乾燥させた薬草程度だった。
フーカ様は、これほどの種類の調味料を覚え、更に使い分けられているようだ。
さすがに大魔導士様だ。知識量も何もかも違いすぎる。
こういう方だから、深淵へのあの作戦も思いつくのだろう。
おひとりで川へ清草を植えている時には、何を考えているのかと思ったが、その後に閣下へ提案された方法は耳を疑った。
聖水で魔を削るなど、理想ではあるがそれが出来ないから苦労してきた筈なのだ。
今回はそれを実行していた。
「お水は、川の水を使えばいいから、気になるならもっと上まで来てもいいですよ。」
「いえ…聖水ですから…あのお聞きしてもいいでしょうか?」
「はい、なんでしょう?」
「なぜ聖水の川に清草を植えているのですか?」
「植えたら育ったので…清草ではありますが、正しくは聖草になるらしいです。」
「聖草…」
「あの川に植えたら、ただの清草になってしまいましたけどね。」
「聖草は、聖力を持っているのですか?」
「そうなるのかな?」
フーカ様がエル様へ視線を移されると、エル様が頷かれた。
聖水の川に浸し続けている木片か、あれが持ってきてくださる聖木で間違いないのだろう。
「あの木片は聖木なのですね?」
「そうです。」
エルが、フーカ様に声をかけた。
「ご主人様、そろそろお時間です。」
「エル、そんな時間なの?」
「はい。こちらはお任せください。」
フーカ様がこちらへ向き直った。
「それでは皆様、ごゆっくりお過ごしくださいね。」
「私は明日また伺います。」
フーカ様とエルは光の屋敷へ消えていく。
「大将殿、我々はどこにいるでしょう?」
一緒に移動して来た騎士が問いかけてきたが、知るわけがない。
「わからないが…どうやら死ななくていいようだな。」
「天の国へ来たのではありませんか?」
「それなら身体を清めることにはならないから、生きているのだと思う。」
「隊長、意味が…意味が分かりません。ここ、天の国ですよね?こんな煌めいて美しい場所なんて、地上にあるわけがありません。」
「それはどうかわからないが…。」
「妖精が沢山います。こんなに妖精が沢山見えるなんて…。」
「そうだな。それに、妖精が風呂まで作ってくれた。」
「はい、気持ちよかったです。」
「大将殿、川は聖水ですが、我々が入った風呂の湯が合流する下流は清水になっています。」
「清水?君は鑑定持ちか?」
「はい。おっしゃる通りです。湯が沸いた時は聖なる温泉でしたが、我々が入ると清水になります。下から聖水が沸いてくるので、清められていますが…。」
「なんと…。」
「魔を払ってくれているのか…。」
「そのようですね。それにしても…美しい場所です。」
「ああ、本当に…」
落ち着いて見ても美しい景色に代わりはなかった。
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