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梯子を下りたリハルドたちは、あまりの光景に足が止まってしまう。
どうやら神の国に着いたようだ。
先程までいた森とはうって変わった光景だった。
色とりどりの花が咲き、草丈が生えそろっていた。
遠目に木々が見えている。空は青く澄み渡っていて美しい。
なによりも、空との間には金色の薄い膜があり、金色の光が舞っていた。その中に羽を生やした小さな生き物が見えた。
彼らは、フーカ様の周囲を飛び回っていた。
「フーカ様、神の国へ案内してくださったのですか?」
リハルドはつい声に出してしまった。
降りた者たちは誰もが、呆然と見回していた。
苦しむことなく、天国へ連れてきて貰えるとは…フーカ様はどこまでもお優しい。
「違いますよ。こちらは泉の家です。」
フーカ様はフードを外した。
いつもの穏やかな笑顔をしていらっしゃる。
「皆さんをお家には入れられないの。ごめんなさいね。」
家と言われて、奥に光り輝く小さな館があることに気が付いた。
あれは神の家か?
それとも…いづれにせよ聖なる場所なのだろう。
「とんでもございません。」
「この川の水は聖水だから、これを汲んでお風呂にして浸かるといいと思うの。冷たくてよければ、そのまま寝転がってもいいですし。」
フーカ様は、体の正面で手を合わせながら微笑まれた。
無邪気なその提案に理解がついていかない。
これからまだ清める必要があるなら、まだ生きているのか?
ここは神の国ではないのか?
川は煌めいていて、川底には草が茂っているようだ。
あれは清草だろうか?
細長く川へ流れる様子は同じだが、色味が淡い?
いや、きらきらしているからよく見えないのかもしれない。
あの美しい場所に寝転がって身体を清める?
そんなことが許されるのだろうか。
少し離れた位置に耳の長い女性が立っていた。
キラキラと煌めいていて、妖精たちととても似ていた。
視線に気が付いたフーカ様が紹介してくれる。
「皆さん、この子はエルです。5m以上近くには近づかないようにお願いします。」
「5m?わかりました。エル様、私はリハルド・トリドールと申します。我らを受け入れてくださりありがとうございます。」
「いえ、それはご主人様へ。」
エル様の素っ気なさをフーカ様がフォローするように話し始めた。
「皆さん、申し訳ないのだけど…しばらくはここで過ごしてください。ここの川は聖水なので浸かってもらいたいです。ただし、ここまでです。ここから上は行かないようにしてください。」
「ここですか、わかりました。」
「あと、寝床はこのテントを使ってもらえたらと…。」
よく見ると、木片の入った網が杭に結ばれていて、川の流れに漂っていた。
「あれは木片ですか?」
「そうです。作戦に使用している聖木はここで川に浸した物です。」
「川に?」
「そうです。ここで水に浸けた物を持って行っています。それと、お風呂はどうかなと思って…川の水だと冷たいから長く入れないでしょう?」
「それは、そうですね…。」
あの杭に使った物はここで作られていたのか。
そう問いかけようと思ったが、妖精たちが動き出し、川下の近くに小さな池のような物を造り出した。
中に水が沸き上がり煙が上がっている。そこから水路が出来て川へと繋がった。
フーカ様はそこに手を入れて微笑まれた。
「なにこれ…」
フーカ様の目がキラキラと輝いていて、無邪気な様子に目が奪われてしまう。
いつの間にか現れた人型の妖精がにっこりと笑い頷いている。
「わぁ!温泉!!すごい効能!」
「これって、私も入っていいかな?」
「魔を入れるなら、その前にお入りください。魔が入って直ぐは汚れています。」
その言葉に人型の妖精ほほ笑んだ。
フーカ様が、俺たちの存在を思い出したのか無邪気な表情をすっと隠してしまった。
「あ…コホン、皆さんのためのお湯だから私は後でも大丈夫よ。」
人型の妖精は小さく首を振った。
「最初に入ってみますか?皆さんには、泊まる場所の設営もしてもらいますから、まだ入れません。だから、入るならその間にしましょう。」
落ち着いた良く通る声で話している。
この妖精は、フーカ様の何なのだろう?
「皆さんが設営するなら、私も手伝う。」
「ご主人様、力仕事は得意な方たちにお任せしたほうがいいです。ご主人様の力では…」
人型の妖精は、フーカ様を主人と呼んだ。
川が聖水というのなら、近くに聖なる泉があるのだろうが…これほどの川の水が聖水?
いや、これほどの聖水が流れているなら、フーカ様が大きな容器で持ってこられるのも納得だった。
それよりも、妖精がフーカ様を先に湯に入れたいのは、我々が穢す前がいいと思っているからだろう。
「フーカ様、我らはテントを張らせていただいてもよろしいでしょうか?」
「それはもちろん。申し訳ないけどお願いします。」
「でしたら、その間にフーカ様は温泉をどうぞ。フーカ様のために造られた温泉です。一番風呂は主のものです。」
「そういうもの?」
「そういうものです。」
エル様の視線がこちらに向いた。
頭を下げて指示を待つ。
「リハルドさん。では、こちらを組み立ててください。」
エル様に示された場所には、大きな袋が8つあった。
半分は骨組みで、もう半分は覆いだった。
袋から骨組みを取り出すと、全て繋がっているようで重量があった。
「なんだこれ?全部繋がっている?」
「一人1つの脚を持って、広がってください。」
エル様の指示に従い、騎士や兵士たちが動く。
脚が8本あり、様子を伺いながら広がっていくだけで屋根部分まで出来た。
押しただけで揺れて不安定だし、少々背が低い様だが、使えなくはない。
「こちらにある棒を外し、こちらに斜めにかけてください。左右中央にあります。」
筋交いになる棒が骨組みについていた。
留め具を外し、あるべき場所へひっかけると、しっかりとした屋根になった。
「こちらの布を中央に乗せて。屋根組に紐を結びつけてください。」
屋根組の中央に紐を結ぶと、左右に広げ両端を結び付ける。中に兵士が入り内側から間の紐を結んだ。
布が屋根組に乗った状態で固定されている。
「結びましたか?」
「出来ました!」
「では、皆さんで協力して脚を持ち上げてください。手の空いている方は、ここのロックを解除して、脚を延ばしてください。」
リハルドは、言われた通りにボタンを押しながら脚を抜き出した。
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最近のテントの設営楽すぎて驚きます。
子供の頃は、骨組みを押し込んでつなげてテントに通して組み立てました。
あれはあれで楽しかったです。




