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リハルドは、指揮官たちと戦略会議をしていた。
6日から9日置きの「癒しの日」になり4か月が経過していた。
フーカ様が聖木を持って来てくださるので、こちらに届いた聖水は杭には使わなくなった。
その余剰分を水風船という武器にすることが出来ていた。水風船は閣下が用意してくださる品で、聖水と空気を入れて叩きつける武器だ。
「深淵の動きは10㎞程度の移動と少し鈍ってきています。今後についてどうするかです。」
「大将殿、鈍っているといっても、10㎞は移動している。間の木々が倒されているのを集め、多少の妨害には出来ているが、我々にとって大きな移動距離であることに変わりはない。」
「それはそうです。」
リハルドの出した現状に対し、ジリアント伯爵が声を上げると指揮官たちから同意する声が上がった。
「聖木は十分にある。今までのように罠に近づいたら杭を打ち込み、癒しの日にはその場でさらに杭を打ち込む。傷を狙い、水風船を叩きつけるのを継続しても良いと思う。」
「もしくは、仕留めるために大がかりに攻撃する手がないわけではない。」
指揮官たちが顔を見合わせた。
「聖水も聖木も十分にあります。ポーションや薬類も同様です。現状を維持しても問題はありません。今のペースであれば、あと半年以上はかかるように思います。」
「私は、現状維持でよいと思っている。これから半年以上かかったとしても聖水や聖木が今のように補充されるなら、現状の戦い方は大怪我する者も少なく戦える。」
「こちらとしては、食糧が心もとない。精神的にも疲れて来ている。早く決着つけられるならつけたい。」
戦い始めて半年になろうとしている。
毎日地味に相手を削る戦闘続きだ。気が抜けるのも理解出来た。
今の作戦ならば、砦にいる部隊数を2割削っても維持出来るだろう。森の入り口での待機部隊が半分になってもなんとかはなりそうだ。
小規模の軍は2軍で協力関係にしていた。大規模軍1とほぼ同等の人数にしている。
長期戦になり、こういった意見が出ることを閣下は見越していた。リハルドはあらかじめ
「すぐに決着を付けるのは難しい。地道な作戦を繰り返すしかない。だが、息抜きの時間を取るのは必要だろう。閣下からも、現状であるなら3日ずつの休養を取ることは認めていいとのことだ。具体的な人数としては、各軍の6分割の1程度であれば交代で抜けても良い。」
「おぉ!」
一瞬、声が上がり静寂が広がり、それから波のような声が上がった。
リハルドは、その声を手で制した。
「部隊の動きを書き出して提出してくれ。それを見て許可を出す。休養それと、抜けてよいのは3日だけだ。遠方の方々は申し訳ないが、領地へ戻ることは出来ない。連絡員を通して手紙などで知らせ、どこかで待ち合わせると良いだろう。」
「おぉ…。」
「それから、戻ったとしても聖水や聖木など今の戦い方は絶対に話してはならない。これを知られると最悪教会が出てきて粗悪な聖水を押し付けられてしまう。約束を守れそうもない者は、エカサでの滞在にしてもらいたい。もちろん、森の入り口の駐屯地に留まってもよい。」
「編成後を15軍とするなら、一度に帰せるのは各軍150人程度になるだろう。」
「大将殿、本当によろしいのか?現状でも、深淵と戦うのは3日に1回だ。守護壁がない日の攻撃は、杭を飛ばす方式とはいえ、大掛かりに攻撃はできています。1日は入口駐屯地で休養し、1日は砦の警備をしている。戦争中ならば、連日死に物狂いで戦うものだ。今は戦争中ではないが、似たようなものだろう?」
「ジリアント伯爵殿、戦争の場合であるなら一度の出陣は長くて数か月です。今回の休養をとったとしても半年ぶりになるでしょう。決しておかしくはありません。むしろ皆さんよく耐えていると思います。」
「耐えるというよりも、持久戦なだけでそこまで大変ではありませんからね。」
指揮官の一人が声を上げた。
「確かに長期間ここにいますが、元帥閣下の手配や戦略のおかげで、ジリアント伯爵のおっしゃる通り戦いは3日に1回だけです。怪我をすればすぐに離脱出来て、手当もしてもらえる。」
「私も最初に参戦を命じられた時には死ぬ覚悟でしたが、今その覚悟を持って戦っている者はいないと思います。もちろん、私も騎士ですから、覚悟はありますが…それを求められる環境ではないと思っています。」
その本心だろう言葉に他の指揮官たちが頷いた。
「今の戦い方を続ければ、いつか深淵が弱り切りとどめを刺せる日が来ると思えます。」
「それですよね。まさか歴代の先人たちが万の犠牲を払ってきた深淵を相手に、こんな戦い方が出来るとは思いませんでした。」
「元帥閣下が聖水を惜しみなく用意してくださっているおかげです。」
「それを言うなら、ポーションや薬も惜しみなく用意してくださっているおかげです。」
「時折いただけるグズベリーやヒールベリーにも癒されていますよ。」
「それはそうだな。味気のない糧食が続いているからか、あの一粒でやる気になれる。」
指揮官たちが「わはは」と笑っているので、あれが本当に特別な物とは思っていないのだろう。
リハルドは、フーカ様のお陰であると思っていても、それを言うわけにもいかない。
フーカ様を目立たせない。それを厳命されていた。
それから、休養を取る計画が練られ、3日交代で休養を取った。
半数以上の者たちは、帰ることが出来ない。エカサで休む者や領地との中間地点で家族と会う者もいた。それでも、休養を終えた者たちのほとんどはやる気にあふれていた。
休養中は、町でご馳走を食べ、娯楽にいそしんだようだ
リハルドも元帥閣下のご厚意により、エカサで寛ぐことが出来た。
騎士や兵士の一部は、クリトン辺境伯の庭にとどまっていたグリフォンに乗りヒシフォートへ戻った。
長期戦になっているため、一部の兵士や騎士の入れ替えも行われた。
新規に入った者たちは、各部隊に散らせるようにした。
20日程度で全ての者が休養を取るか、離脱し交代人員が入った。
そして、さらに時間が経過していく。
戦い始めて9か月目、「癒しの日」が4日間連続で展開された。
閣下とフーカ様も当然だが滞在している。
その日に大規模作戦を実行した。
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