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3週間後、楓花が出勤の準備をしていると、登山道脇のお宮が話題とローカルニュースで取り上げられていた。
「こちら人気のハイキングコースです。最近、こちらでは脇道にあるお宮を訪れるのが人気になっています。」
「こんにちは、こちらへはよくお越しになりますか?」
「最近になってから、お宮があるのに気が付いて…。」
「そうなんですよ~。」
「何かなさっていますか?」
「手持ちの未開封のお茶とかお菓子をお供えしています。」
「誰もいないお宮ですよね?」
「はい、そうですが、なんだかここにいると落ち着くので休憩がてらお参りを…」
ニュースでは、元気そうなご婦人たちがリュックを背負い、スティックを手に溌剌と答えていた。
「お参りされていない場所なんて、沢山あるのにね…。まぁ、でも…手を合わせる人が増えたら少しはガードももつかな?」
楓花は、なんとも言えない気分でテレビを消して出勤した。
もう少し見ていたら、先日舞を奉じた場所だったと気が付いたかもしれない。だが、急いでいた楓花は見ていなかった。
今日も仕事を終えたら、イルルジオーネで待っている人たちがいる。
今週末には、最後のお勤めだ。今週を乗り越えたらいつもの日常に戻れる。
家にいられる時間は少ないから、片づけてしまおう。
朝食を終えたので、洗い物をすると軽自動車に乗り仕事へ向かった。
12月になり、お役目を終えたので少し楽になった。
平日の3日間の勤務後はイルルジオーネに費やし、土日はお役目に費やしていた。
その土日が自由になったのだ。イルルジオーネで3倍の時間で過ごす事も出来る。
月・水・金は、仕事を終えると泉の家で仮眠し、森の砦で1日を過ごし、泉の家で寝て、仕事へ行く。
火・木は、仕事を終えると買い物や病院へ行き、庭の手入れをした。日が落ちて来たら、家の中を片付け、郵便物や宅急便の整理をした。寝室でそのまま寝ることもあるけれど、半分くらいは泉の家へ移動して1日ゴロゴロと過ごしていた。
泉の家から仕事に向かう時には、エルがお弁当を作ってくれるようになっていた。
だから、感覚的には2日か3日に1回仕事へ向かうようなものだった。
普通ならそう疲れることではない。
それでも自宅にいるのは火・木だけだったので、どうにも疲れていた。肉体的な疲れというよりは、気力的なところの疲れだった。
これはもう、何もしないのが一番だろう。
最初に迎えた週末、久しぶりに自宅でゴロゴロとしていた。
掃除をする気にもならない。
何かをする気になるとも思えなかった。
家にいて、掃除や片付け、もしくは庭の手入れをするならいいけれど、冬場だし正直思ったより荒れていないのですることがない。
ゆっくり過ごそうと思ったのだけど、ゆっくりするだけならエルのところにいたい。
それなら、ここにいるより泉の家で過ごそうか?
その方が3倍ゆっくり過ごせる。今からでも5日にはなる。
それに、エルに甘えることも出来る。
うん、それがいい。
スーパーとケーキ屋さんで買い物をしてから泉の家へ空間移動すると、いつものようにエルが迎えてくれた。
「エル、これケーキね。ケーキ屋さんのだから、スーパーのパックとちょっと違うの。」
にこっと笑い受け取ってくれたので、こちらも嬉しくなる。
「エル、明日少し出かけるけど、5日くらいこっちにいるつもり。」
「はい、かしこまりました。お食事のご希望はありますか?」
「そうねぇ…そうだ!これを渡すね。」
楓花は、古い冊子と料理本を取り出した。
冊子は、自分が小学生の頃の新聞についていた付録だ。
料理本は、祖母も母もまともに料理が出来なかったので、父方の叔母がくれた物だった。
小学生の頃は、これらを見ながら料理をして覚えたのだ。
叔母たちは、料理を覚えて披露する私を面白がっていたようで、料理本は年に数冊ずつ増えていっていた。
面白がったらしい叔母に渡された宮廷料理の本に至っては、材料が揃わないので作れない物もあったが、代替品でなんちゃって料理を作ったこともあった。
何もない田舎では、そういう遊びで気を紛らわせるしかなかった。
母と父は、妹をただ可愛がっていた。
自分の事は、便利に思っていたとは思うけれど、可愛がっていたとは思えない。それでも関心を引きたくて、料理をしていた。
料理を褒めてはくれたけれど、小さい差がいくつもあった。一つ一つは気のせいで済むようなことだ。
だけど、思い出すと今でもチクリと胸が痛くなる。
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