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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者: 夢
第17章 役目

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ファンタジーですのであしからず。


 楓花は、岡野宮の自宅でブラウスにパンツスーツを着ていた。

 いつもなら、帰宅と同時に脱いでしまうが、来客があるので仕方なく通勤服のままだ。

 このところ、仕事終わりにはイルルジオーネに向かっていたので、こうやって家にいること自体が久しぶりだった。

 掃除はしたつもりだけど、埃が俟ったりしていないよね?

 小上がりの上座の棚は、何もない状態にしてある。

 

 

 インターホンに応じると、カメラの向こう側に姿勢のよいスーツ姿の男女が立っていた。

 襟には、所属を示すピンがあり、警察手帳のような折り畳みの名札も開いて見せてくれた。


 「どうぞ、車のままお入りください。」


 楓花は、時計を見る。

 約束通りの時間だった。

 外へ出て受け取りたいけれど、そうもいかない。

 この受け取りは儀礼的な意味合いもある。

 門のロックを外し、自動でスライドすると車が入ってきた。

 車は自宅前に止まり、車から白木の長箱が降ろされた。


 「お届け物に伺いました。」

 「はい。ご丁寧にありがとうございます。どうぞお上がりください。」


 玄関を開け、声をかけた。

 女性1人に男性4人、そのうち2人は箱を持っている。

 田舎へ衣装を届けに来たことをねぎらう言葉はかけない。

 そういう立場にはないからだ。

 

 「拝領の品は小上がりへお願いいたします。」

 

 彼らは、一礼してから小上がりの畳へ上がった。

 小上がりの奥の板の間に、彼らが用意した木製の台が3か所に置かれた。

 その上へ箱が乗せられた。

 彼らが箱を向いたまま後ろ脚で畳から降りると、女性が布を取り出して畳を拭き始めた。

 そのまま下がって畳から降りる。

 

 それを見ながら、楓花は言葉を探した。

 5年に1度くらいしか来ないお役目なので、記憶が頼りだった。

 前回は、婚姻中だったので夫のいない時間に受け取った。

   

 「ソファーにどうぞ。」

 「失礼します。」

 

 一度座り荷物を下ろすと、漆塗りの箱を取り出し、テーブルに置いた。

 

 女性が立ち上がると、男性が女性の顔に半紙に紐の付いたものをかけ、顔を隠した。

 私は合わせて立ち上がり、足元へ膝をついた。

 女性が漆塗りの箱から、手紙を取り出した。

 時代劇で見るような半紙に包まれ上下が折られている。


 「平服なさいませ。」


 女性の声がよく通っていた。


 「尊き方からにございます。橘楓花を清め周りの巫女へ任ずる。年末の払いを任せる。」

 「光栄にございます。ご期待に沿うよう、勤めて参ります。」


 楓花の前で手紙の向きが変えられ、与えられた。

 それを恭しく受け取り、中身を読んだ。

 読み終えると包みへ戻し、頭より上にしたまま立ち上がり、小上がりへと向かう。

 白木の箱の上へ乗せた。

 小上がりを降りるまで、お尻を向けることなく後ろ向きのままだ。



 小上がりを降り、一礼してからロールカーテンを下ろした。

 楓花は、ゆっくりと息を吐いた。

 それから、彼らへ向き直る。

 女性の顔から半紙は外されていた。



 「そのままお寛ぎください。」


 水道の水を沸かし、湯冷ましにとり、急須に茶葉を入れた。

 蓋つきの湯飲みを取り出し、盆へ乗せる。

 茶托を乗せ、用意していた菓子を皿へ乗せた。

 適温まで冷めた湯を急須へ入れ、少し待つ。

 その間、彼らは姿勢よく座って待っていた。


 「お待たせしました。どうぞお召し上がりください。」


 「粗茶です」とは言わない。

 だからと言って、高級なお茶ですとも言わない。

 彼らは、儀礼的な手順で茶を飲み、菓子を食べた。

 一息つくのを待つ間、視線を落として座っていた。

 

 「ご馳走様でした。とても美味しかったです。」

 「ようございました。」


 反射的に返してから、「美味しかった」と言われた事に驚いて顔を上げた。

 祖母は口に出してはいけないと言っていた言葉だ。

 小学生の頃は不思議だったその意味の一部は、16を迎えた時に知った。

 だけど、本当の意味で理解出来た訳ではない。

 口にした本人もはっとした様子で、隣から肘で突かれている。

 

 「緊張しますよね。」

  

 私の言葉に、彼らは曖昧に笑った。

 私より少し若そうな女性。

 壮年の男性は、美形ではないが上手く年を重ね、自信を持っている人独特の空気を醸し出していた。今時の若い娘からイケオジと言われるタイプなのだろう。

 他の2人は敬一郎さんよりも若く朴訥な様子で、社会にあまり揉まれていないようだ。



 「私は、榊と申します。以前、一度ご実家でお会いしております。」

 「そうでしたか。」


 覚えていないとは言えない。

 余計な事は言わずに相槌に留めた。


 「楓花様、お役目は4度目ですか?」

 「そうなりますね。」

 「巫女様のお家は、どちらにお伺いしても澄んでいますが、こちらはなんとも素晴らしいですね。」

 「そうですか?」

 「はい。神域に入った時のような清々しさがあります。」

 「それは…なんといえばいいのかしら?お世辞でも嬉しいですね。」

 「とんでもない。お世辞などではありません。」


 人当たりが良さそうで穏やかな笑顔をしていた。

 人のあしらいも上手なのだろうと思った。

 



読んでくださりありがとうございます。

リアクションと合わせて星印を★★★★★~★☆☆☆☆にしていただけると嬉しいです。

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