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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者: 夢
第16章 深淵 【ジリアント伯爵】

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7

いつもの時間に投稿した分が前日と重複しておりました。

楽しみにしてくださっている方々、大変申し訳ございません。

正しいものに差し替えしました。



 それから2か月、ジリリアント伯爵は対深淵の最前線である森の中にいた。

3日毎に守護壁が展開される日は「癒しの日」と呼ばれている。

 守護壁が展開されると、身体が軽くなるからすぐにわかるのだ。

 癒しの日は、いつもより良く眠れる日であり、小傷であっても治す日でもあった。


 癒しの日は夕方から翌朝までになるのだが、この日は展開されて早々に一度攻撃を行う。夜の内にたっぷりと眠り、朝早くから再び2度目の攻撃を行っていた。

 深淵の動きが鈍っているので、普段よりも杭は深く差し込める確率が高かった。

 3日置きに繰り返された「癒しの日」により、深淵の尾は1m短くなり杭が18本入っていた。そして、塞ぎきっていない杭の傷跡が9か所ある。そこを狙い、聖水を入れた水風船なる武器で攻撃をしていた。塞がらない傷跡には、杭から外れた聖水を含んだ木片が残っているという。

 

 

 

 戦略会議をしていると、不意に重苦しい空気が軽くなった。

 指揮官たちと集まっていると、閣下がテントへ入って来た。

 

 「明日は10時までいる事にした。」

 「それは助かります。」

 「それで次だが、さすがにお疲れのご様子でね。この先は、こちらに来るのは6日毎になりそうだ。それと、天龍は一度帰らせる。」


 6日毎…今までの倍の日数だ。

 辛くないと言えば嘘になるが、この2か月間3日置きに継続的に来てくださっただけでもありがたい事なのだ。


 「それは、当然でございましょう。」


 ジリリアント伯爵が声を上げると、場の視線が集まってしまった。


 「2か月もの間、3日毎にこれほどの守護壁を張り続けてくださったのです。大量の清水も運んでくださいました。水は、入り口の者たちに指示をすれば運べます。6日毎でも十分に助かります。」

 「そう言ってもらえると…聖水は十分に運んできているから、遠慮せずに使って欲しい。」

 「お気遣いありがとうございます。」


 閣下は、珍しく少し視線を彷徨わせた。


 「それから、こちらにいる者たちに差し入れがある。」

 「差し入れですか?」

 「ああ、特別な物なので1粒ずつになってしまうが…。」

 

 閣下が出されたのは、グズベリーだった。森になる実で、季節外れであることをのぞけば珍しいものではない。

どちらかといえば、庶民でも手に入れやすい果物だ。


 「今の季節にグズベリーですか?こちらに来て2か月ですから、果物はありがたいですが…。」

 「そうですね。糧食はどうしても味気ない。違う物も食べたくなっていたところです。」

 「確かに」


 ジリアント伯爵の言葉に、他の指揮官たちも同意を示した。

 普段ここで食べているのは、干し肉と乾燥野菜で作ったスープと堅いパンだ。どこの部隊でも変わらないだろう。

 自領から運んできた干し肉や乾燥野菜、森の入り口の駐屯地で仕込めるパンしかないのだ。食料が運ばれて来た時や森の入り口の駐屯地へ交代で行った時に、少しマシな料理を食べられるくらいだ。

 グズベリーとはいえ果物だ。

 それを口に出来るのはありがたい。

  

 「ええ、まぁ…一粒どうぞ。食べればわかる。」

 「では、失礼して。」


 ジリアント伯爵は、連れている副官が制するのも気にせずに食べた。

 すると、身体に何かが染みわたり、腹から力が湧き出した。

 身体が妙に軽い。

 

 「おぉ!?なんだ!これは…?」

 「まぁ、そのような効果があるので、3日後辺りで皆が1粒ずつ食べるように。この容器に入れてあれば3日くらいはもちましょう。」

 「おぉ…なんと!ありがたい!」

 「そろそろ2か月ですからね。(一度清めた方がいい…。)」


 元帥閣下が何か呟かれたが、聞き取れなかった。

 見慣れない白くて軽い箱に入ったグズベリーを受け取り、駐屯地へ戻った。

 聖水のスプレーに聞いたこともない身体を癒す食べ物。

 考えるまでもなく、聖女様がいらっしゃるに違いない。

 

 そこからは、6日ごとに「癒しの日」となった。

 しばらくすると、9日開く日も出てきたが、その代わりに強力な聖木が届くようになった。

 


 聖木は、10cmほどの木片だったので、杭の側面を削って入れ込む。

 聖水が染み込んでいるらしく、杭に傷をつけて聖水をかけた物よりも効果があるらしい。実際使って見ると、杭が抜けたとしても、その聖木の一部は深淵の傷の中に残り長く効果を発揮しているようだった。聖木を埋め込まれた場所の靄が弱まっていた。

 大物なので、そう急激な変化はない。

 今までは、数十キロを動き回られることがあった。3か月経った今は、弱ってきたのか行動範囲が狭まって来ていた。砦から10㎞程度の距離の間にいるようになっていた。

 

 

 3か月も経っているのに、死者もいない。

 穢血に触れた者は数人いたが、即座に森の入り口へ向かわせた。

 清水を汲み上げ、穢血を洗い流しそれから、川へ入り身を清めさせた。

 聖水を多めに吹きかけ、コップ1杯の聖水を飲ませた。

 聖水をコップ1杯も飲ませる事など、これまで考えた事もなかった。

 豊富な清水に聖水と聖木がある。

 これらのおかげで、まだ魔人になる者はいなかった。


読んでくださりありがとうございます。

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