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先に運ばれていたようだ。見ると手当もされていて安心した。
「こちらの方々の手当は終わりました。このまま明日まで様子を見ます。人手が足りませんので、お世話の方をお連れください。」
「わかった。」
「うあああ!!」
覆われた場所から悲鳴が上がっている。
「あれは?」
「治療中です。ご覧になりますか?」
「ああ。」
布を捲られ、中に入ると腹が抉られ内臓の一部が見えていた。
これは、もう助からない。
それなのに、白い服の者たちが傷を洗っていた。
なぜ彼らを優先して治療しようとしているのだ?
「ハサン、内臓が一部ですが見えているので高級癒し水をかけましょう。」
「はい!」
女の指示で、その者は手にした容器を戻し別の物に変えていた。
この女が上の立場なのか?
白い服の者が容器の水をかけると、傷が塞がっていく。
ポーションでこれほど治るのか!?
白い布をのせ、包帯を巻き始めた。それから、患者の口へ袋を開けて、中身を飲ませていた。
「あれはポーションなのか?」
「あちらは癒し水です。内部から治りを助けます。」
「ポーションと違うのか?」
「ポーションを癒し水で薄めた物です。」
「薄める?」
「他の物と混ぜて、効果を高めます。」
ポーションに混ぜ物をするなど聞いたことがない。
なにより…腹部の怪我は、小さくても致命傷だ。
その場では息があっても、助かる見込みはない。
そのはずだが、癒し水とやらをかけただけで傷が塞がっていくのが見えた。
質問を重ねようとしたが、ゴードーに止められた。
周囲にはいくつかの幕を張られたベッドがあり、白い服の人々が忙しく動いていた。
邪魔をしてはいけない。
ゴードーにその怪我人たちの世話をさせるために戦闘要員ではない者を呼び寄せた。
それから、数人の人員を救護所の手伝いへと回した。
天幕へ戻るため、並んで歩いた。
「領主様、お気づきになりましたか?彼らは重傷者から治療しているようです。」
「重傷者?腹の傷なら普通は助からないから治療など…。」
「先ほどご覧になりましたね?」
「ああ、助からないはずの傷を治していた。だが、あの治るスピードはなんだ?あのような治療は見たことがない。上位の治癒士とてあのようなスピードでは治せない。」
「はい、私も初めて拝見しました。」
「あの女はなんだ?生意気だった。私にあのように意見するなど…。」
「領主様、あのお方のフードにはヒシ家の紋章が入っていました。」
「ヒシ家の?」
改めてよく見た。自分は頭に血が上りすぎていたようだ。
ヒシ家の軍服と同じ色のフードだった。
あのフードは御大と呼ばれていた大魔導士が着ていたものとよく似ていた。
それに紋章が入っているとなると答えはひとつしかない。
「ヒシ家の魔導士か…。しかも黒髪に黒目…。」
「元帥閣下と同じ特徴ですね。」
「そうだな。」
ジリアント伯爵は、貴族名鑑を思い出す。
「確か元帥閣下には妹がいたな…。」
「妹ですか?」
「ああ、社交界に出ていない娘がいたはずだ。私に丁度いい年齢だったが、デビュタントにも出ていなかったから、気になったが会うことはなかった。」
「そうでしたか。領主様と丁度いいなら…」
「今は、33か34才くらいだろう。」
「なるほど…」
先ほど見た女を思い浮かべた。
それくらいの年齢に見えた。
「それでしたら、妹君かもしれませんね。」
頷き、自分の天幕へと入った。
中へ入ると騎士が籠と聖水を持ってやってきた。
「領主様、清水をいただけたので、お体を拭く湯の用意があります。」
「清水を?」
「はい。それから、こちらは大将殿から渡された低級癒し水です。小傷があるなら飲んで治すようにと渡されました。」
「癒し水か…高級だと腹の傷まで治していたが…。」
「腹の傷まで治せるのですか!?」
「これは低級だから、違うと思うぞ?」
「実は…先ほどの戦闘で、一緒に組んでいた者が2人深淵に当たり飛ばされました。大木に叩きつけられ…鎧が壊れ、臓物が見えて…くっ…もう生きては…。」
「行方の分からなかった3人は生きていた。」
「本当ですか?」
「ああ、救護所で寝ている。救護所で、腹の傷を治すのを見たな。うちの者たちの傷口は見ていないが、顔色は悪くなかった。」
「本当に…ああ…」
感情的すぎるが、平民出身の騎士であれば仕方もないか。
だが、それも無理はない。
臓物の傷は治せない。
生きていても、腹から腐るのだ。
だが、先ほど見た限り、本当に治せるような気がしてきていた。
だからこそ、骨折が後回しにされていた。そう思えた。
「湯をお持ちします。」
騎士が下がったので、ゴードーの手を借り、鎧を外した。
深淵は、攻撃に入らなかった3部隊が見張りをしている。
朝方に、次の攻撃予定があるので、それは待機していた部隊に任せる。
人払いをし、届いた湯で体を拭いた。
戦闘後に体を清められるとは、非常に助かる。
体の数か所に傷が出来ていた。
小さなものなので、普段ならそのままにするものだ。
今日は、提案に従い低級癒し水を飲むことにした。
手に取ると、細長い。柔らかい袋のような物に入っていて、ポーションには見えない。低級であっても瓶に入っているのが普通だった。
しかも、この袋よく見ると切り込みがついている。
「ここを切る」と書いていて、随分と分かりやすい。液体が入る袋というのも初めて見た。どうやら袋のまま飲むようだ。
せっかく薬を渡されたので、袋の封を切り、中の液体を飲んだ。
ふわっと体に何かが浸透し、みるみるうちに体中の小傷が治っていく。
これほど効果のあるポーションは使った記憶がなかった。
低級癒し水と言っていたか。
低級ポーションでも銀貨数枚程度はするが、効果を感じることはないはずだ。
小傷でも赤く腫れてくると治癒士に大金を支払い、膿みを抑えてもらう。もしくは、傷を塞いでもらう。
それと比べても…いや、比較にならない。
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