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3日目の探索で、16部隊から編成された4軍は、一定距離に展開し慎重に進んでいた。深いはずの森が明るくなったかと思うと、巨大で周囲の森の木々はなぎ倒されていた。
よく見ると、途中から折れたり、根本から起こされたりして大量の残骸が倒れ、獣の屍も転がっていた。
木々が倒された事で、空が見え太陽神の光が差し込んでいたのだ。
その下で深淵は黒い靄を漂わせ、周囲を靄で覆い始めた。
これはまずい。
ここにいては、魔を吸い込みあっという間に魔人になってしまいそうだ。
その恐怖に足が竦んだ。
そんな中、トリアシード卿が号令を出し率いる軍が深淵に突入した。
一斉攻撃し、大蛇が体を振った。
長い体を振り回してくるので、攻撃をするにも立ち位置を取るのも難しい。
それを避けてまた攻撃する。
数回繰り返し、離脱していた。
深淵が彼らを敵と見做し始めると、トリアシード卿は他の軍に攻撃の指示を飛ばした。次々に攻撃しては、ヘイト先が変わる。そうするとトリアシード卿の軍が攻撃し、またヘイトを得る。
何度目かの攻撃で、突入した軍が深淵の尾に叩かれ、周囲に飛ばされた。うち数人が木に叩きつけられ、ずり落ちていくのが見えた。
遠目でもその衝撃の強さはわかった。内臓が飛び出た者までいるようだ。
それを遠巻きで見ている別軍は、深淵の動きをつぶさに観察し記録していた。
相当に堅い。表皮に傷をつけるのがやっとだった。
「ここまで!撤退する!!」
トリアシード卿の号令で、一時撤退した。
怪我人を連れて行かねばと思ったが、周囲には倒れている者は見当たらなかった。
大怪我を負っていた者たちの姿はなく、後援部隊の者たちが既に運び出したようだ。
ジリアント伯爵たちの部隊は、足がおかしな方向に曲がった者を連れ、砦まで戻った。
岩場のためか、深淵は砦には近づいて来られないようだ。
砦には、清水を運び込んでいたが、飲み水として使う程度しかない。
部隊は、休憩後を取った後は予定通りに森の入り口まで下がらせる。
あの靄をたっぷりと吸い込んだ自覚があった。早く清めねば魔人になってしまう。
トリアシード卿が大将として、聖水をかけるよう指示を出した。
それを受け、ジリアント伯爵は部隊にその指示を伝えた。
「スプレーをかけてみよう。」
聖女の祈りもなく、聖水を撒くだけで本当に効果があるのかと疑問だ。
だが、それは杞憂だった。
教わった通りに出っ張りを引くと霧状の水が降りかかった。
同時に身体を覆っていた重さが晴れていく。
「なんだと!?」
「うわっ」
皆にシュッとひと吹きしていく。
「これ、すごいですね。こんな一回シュッとすると霧になるのもすごいですが、魔が祓われたのがわかります。」
「ああ…本当に…。」
その効果は絶大だった。
たった一度、聖水の霧を浴びるだけで魔が払われた。
聖女の祈りがなくても効果があることが、どこかショックでもあった。
その後、人数の確認をさせた。
「3人足りません!」
「救護所に運ばれたのだろう。怪我人を任せるついでに確認しよう。第1部隊は、休憩後に森を降りて駐屯地で休むとよい。」
砦に入った部隊は、2日目を担当した第2部隊と第3部隊だった。
洞窟を与えられたが、洞窟入口近くに天幕も張った。戦略会議などやり取りが必要になる。それが洞窟内ではいささか都合が悪かった。
昨夜のうちに第1部隊と第3部隊が交代していた。
第3部隊に砦を任せ、第2部隊と共に森の中へ深淵の捜索に出て、戦闘となっていた。
3人は救護所を確認しよう。それと骨折したらしき者も連れていこう。
治療師がどの程度の治療が出来るのかも知りたい。
砦にずっと滞在させるつもりの騎士団長のゴードーを連れ、ヒシフォートクラレンスの騎士団駐屯地の隣を訪ねた。
救護所の天幕にはヒシ家の家紋を簡易にしたような図柄が、赤い十字を掲げていた。
人だかりが出来ていたのですぐに分かった。
中を見ると、並んだ衝立のようなものに寄りかかっている騎士や兵士が大量にいた。
腕には鮮明な色合いの緑色のリボンが結ばれていた。
布で仕切られたもう半分から、うめき声が聞こえてくる。
そちらは、横になっている者や手足が曲がっている者たちがいた。
「ケガ人を連れてきた。これの治療も頼む。」
白い服の者が来て、様子を見はじめた。手首に黄色のリボンを結んだ。
「今、順に治療していますので、こちらの指示に従ってください。貴方は、こちらに座ってお待ちください。」
手当をせずに座って待てだと?
「こんなに苦しんでいるではないか。」
「この方に命の危険は少ないです。今は、赤が優先です。終わり次第黄色の治療を始めます。もし手が空いているのでしたら、手当しやすいよう鎧を脱がせてください。」
「は?」
こいつは何を言っている?
白い服の者を睨みつけていると、フードを来た女がやってきて、私を見るとため息を付いた。
「誰が相手でも同じです。貴方も落ち着きましょう。頭やお腹のケガの治療を優先します。骨折はその後です。」
その女を睨みつけたが、動じる気配がない。
ジリアント伯爵は居たたまれなくなり、視線をずらした。そこに集められている者たちを見たが、確かに怪我人たちは座っている。
うちの者がいないか視線を向けるが、ジリアント所属を示す鎧の者たちの姿が見えない。
まさか、あの場に取り残してしまったのだろうか?
女が連れてきた兵士は、隣のゴードーを上から下へと視線を走らせた。
「こちらへ。」
案内された天幕では、人々が低いベッドへ寝かされていた。
その横には鎧兜が置かれている。
「あちらのお三方は同じ部隊の方ですか?」
奥にあるのは、わが領の鎧兜だった。
ゴードーが駆け寄り、名を呼んだ。
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