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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者: 夢
第16章 深淵 【ジリアント伯爵】

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3



 ジリアント伯爵は、渡された鑑定レンズを翳して目を見開いた。


 エリクサー:封印が施されている。封印を解いたら早めに使い切る事。

 

 本物!?

 思わず息をのんだ。目を瞬かせて、何度見ても結果は変わらない。

 信じられない思いで、元帥閣下を見上げた。

 ありえない。

 国王陛下がこれを揃え、聖水を大量に購入出来るほどの予算を用意したと思えなかった。

 元帥閣下個人の差配ではないのか?

 個人の差配で手配出来るような品ではないが、目の前にある以上は出来たのだ。


 「今回の戦いは、魔人を出さない。命も散らさぬよう努力はする。もちろん、万が一を防げるとは言えない。安心は出来ぬだろうが、全力で戦ってもらいたい。救護所では、下級ポーションや薬類はもちろんだが、中級まで揃えている。大部分の対応は出来るだろう。」

 

 ここまでされては、命を捨ててでも戦いに臨む。

 その覚悟が決まった。


 「では、座ってこちらを向いてもらおう。今回の深淵は大蛇だ。」


 元帥閣下は立ち上がり、前へ出るとマップを貼り付けた台をひっくり返した。

 白い状態にすると、横に立たれた。


 「今からお見せするのは、今回の討伐対象だ。この絵はそう撮れないので他言無用です。」

 「見せる?」


 先ほどから驚きの連続で、もう驚くことはないと思っていた。

 明り取りが閉められ、布を通して明かりは入るが薄暗い。

 指揮官たちが首を傾げている中、白い板に大蛇が映し出された。

 黒い巨体と赤い目が3つ。

 黒い靄を巻き散らしていた。

 絵ではなく、まるで今にも襲ってきそうな動きをしていた。


 「これは…!?」

 「ここの木を見るとサイズ感もわかるだろう。私とリハルド、クリトン伯と騎士団、それから天龍の者たちと森を探っている時に遭遇した。」

 「遭遇!?まさか既に戦ったのですか?」

 

 目の前に動く絵が映っていた。摩訶不思議な状況にもう呆然とするしかなかった。

 その絵の中では、辺境伯の騎士団や元帥閣下が剣や弓で戦っていた。途中、魔法らしき物も見えた。

 剣も弓も、その巨体に届いていない。地面についている胴体や尾の表面を撫でているだけだった。彼らの周囲にも黒い靄が纏わりついていた。

 それでも、最後には尾の先端を僅かに切り落としたようだ。


 さらに、王宮の中庭らしき場所で尾に水をかけながら切り刻んでいた。

 水の当たっていない場所から黒い靄が上がっている。

 切り刻まれているうちに靄が立たなくなっていた。

 恐ろしい、あれではあっという間に魔人が出来上がりそうだ。


 「これと…戦う?」

 

 ジリアント伯爵は、それ以上の言葉を出せない。

 動こうにも、腰が抜けたようで力が入らなかった。

 なんとか周囲へ視線を向けると、後ろの席の者たちは立ち上がり、手をついたまま前のめりで見ていた。

 

 「怖いだろうが、正体は分かっている。訳も分からずに戦う訳ではない。念入りな準備はしているが、力を合わせねば討伐出来ないのは間違いない。長期戦になるだろう。協力して討伐しようではないか!」


 閣下の言葉に、誰も頷けない。

 怖すぎる。予想以上の深淵の姿に竦んでしまう。

 トリアシード卿の声が聞こえてきた。


 「みなさん、お手元をご覧ください。大量の聖水とエリクサーがあります。川には魔を流す清水が流れている。50年ごとに繰り返されてきた深淵との闘いで、ここまで恵まれていた事はありますか?」

 「いや、それは…」

 「今回は、時間はかかるかもしれませんが、勝てるはずです。」

 

 そこからは、トリアシード卿が作戦の細かい説明を始めた。

 最初は探索になる。深淵を見つけて笛を吹くこと。

 それからの作戦などだ。蛇には聞こえないとされる音の鳴る笛を合図に使う。

 

 ここまで来て、撤退するという選択肢はなかった。

 深淵と戦うために、皆ここに集まっているのだ。

 逃げ帰り、国土が失われていくのを見ることは許されないだろう。

 元帥閣下を信じて、その戦略に沿い深淵の捜索を始めた。



 軍の半数は岩場に砦を築き、各部隊の駐屯地とした。

 部隊の総数が700人前後の小規模部隊には、洞窟の中が与えられた。

 外敵の警戒を最低限に出来るので助かるが、普通は重要部隊が使うべきところだ。

 

 ジリアント伯爵の軍は700人を連れて来たが、森の入り口の駐屯地に250人を置いていた。

 騎士46人兵士414人その他240人を連れていた。

 彼らを3つに分け、1部隊騎士15人兵士138人程度だ。そこに、戦闘員ではない者が60人ずつついた。

 3部隊に分けることで、森の入り口の駐屯地へ1部隊、森の中へ2部隊が入る。

 戦闘員でない者は各部隊に付く者、糧食の補充などの後援輸送部隊に就いた。

 各部隊は、森の中で2日過ごし、入り口へ戻って身体を清める事にした。



 森に築く拠点である砦に移動した。

 150人の部隊2部隊は、他の軍と共に森に入り、砦に1部隊を残した。

 後援部隊2隊である120人には、岩場の拠点を築くための準備をさせた。

 拠点では、後援部隊に部隊が使う武器や防具の手入れの手伝いや、食事の準備、洗濯物をしてもらう。騎士や兵士ももちろん確認はするのだが、少しでも休まなくてはならないのだ。

 また、後援部隊には、空の樽を運び、清水を汲んで戻ってくるという重要な役目もあった。


読んでくださりありがとうございます。

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