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祝200話♪
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ジリアント伯爵と呼ばれる男の名は、シャルル・ドーレ・ジリアントだった。
アークライト侯爵家の次男に生まれ、騎士として鍛錬を積み、20歳を過ぎた頃には国軍に騎士として所属していた。
爵位を継ぐ予定の兄に息子が生まれたため、余剰爵位と母が持参した領地の一部を継いでジリアント伯爵となり、国軍の役目を退いた。
与えられたのは、町が1つと村が5つしかない小さな領地だ。
爵位を授けるとふさわしい令嬢を娶り、子を設けた。
領地では、ミレーヌ川と同じ隣国との境にある森から出ている川の水を使っていた。
井戸は掘っていたが、十分な水を賄う量はないため、川の水は重要な資源だった。
小さい領だが領主として、そして元国軍に所属していた騎士として、深淵との闘いに参戦したのだ。
今日は癒しの日、砦に築いた駐屯地でぐっすりと眠ることができた。
眠りから覚め、清水を飲めば体中に力が漲る。
「うまい…。」
「お目覚めですか、食事を持って参ります。」
起き上がったことに気が付いた兵が、穏やかな顔で話している。
ジリアント伯爵は、天幕から一歩出た。明けたばかりの空を見ながら、予想と違う戦いの状況に思いを馳せた。
数か月前、国王陛下からの招集状で、それが魔水になっていたと聞いた時には、血の気が引いた。
ジリアント伯爵は、領地の民へ井戸水を使い、川の水を使わぬように触れを出した。
深淵は、50年に一度現れるとされる厄災だ。
現れる度に大きな被害をもたらされた。
出来ることなら、自分が去ったのちに表れて欲しいと願っていたが、やはり無理だったか。
息子と娘が生まれているから、そこが救いか。
大人になるまで見守れないのが残念だが、こればかりは仕方がない。
せめて子供たちが大人になれるよう、厄災を掃わねばならない。
ジリアント伯爵は、領地と共に育てた僅か700の騎士と兵士を連れ、参戦した。
集合場所の森の入り口には、1万5000を超える者たちが集まっていた。
前方には騎士、兵士と続き後方には荷馬車がひしめいていた。
戦争に準ずる大規模な人数に圧倒されそうだ。
元帥閣下の挨拶と軍を鼓舞する演説を聞きながら、見た目の美しさと反して、気持ちを奮い立たせる言葉の圧に圧倒されていた。
やはり、50近い超えた老年であるだけはあった。
肌は美しく皺がない。繊細で美しい見た目は女性たちからも人気が高く、20代半ばにしか見えない。
だが、恐ろしいことに、自分が軍に所属した時には将軍だったのだ。
社交界に出たばかりのような、線の細い身体付きをしていた。
侯爵家の養子と聞いた時には、下世話な想像をした。
「あの老獪な大魔導士に取り入って得た地位か」と同僚たちが、軽口を叩いていたものだ。
先輩の騎士から「絶対に見た目に騙されるな」と念押しされた。
「どんなに美しく、若く見えても30近いはずだ。絶対に侮るな」と何度も言われた。
その意味が今ならわかる。
あれから17年が経っているのに、見た目は5~6年程度しか経っていないようにしか見えなかった。
ならば、今は47~8才だろう。
もう老齢のはずなのだ。それがどうだ?これからが男の盛りだと言っても不思議ではない。
部下たちに駐屯地の設営を任せると、覚悟を決めて戦略会議に臨んだ。
その場には、聖女も聖騎士もいなかった。
遅れているのか?
「聖騎士が参加しないだと?」
「聖女様が来ない?」
会議室にザワザワとした空気感が広がった。
今代の聖女様は、教会で拝見したが20代の美しい方だった。
美しい声で祓いの呪文を唱えてから、聖水を頭から背中に頂くのだ。
垂らす量の手違いだろう、腰まで流れる程度掛けられるはずのそれは首を超えた程度までしかなかった。
それでも、肩が軽くなり頭痛が消えた。
あの時、確かに魔が祓われた。
深淵との闘いは、深淵の発する魔にいかに侵されずに戦うかが鍵になる。
そのためには、聖女様による清めが不可欠だと伝え聞いていた。
聖騎士は、聖なる武器を使うことで魔を祓うとされている。
彼らは、信仰が異なる物に容赦はないが、同じ神を祀る一神教の国内であれば彼らの危険性は薄い。それなのになぜ呼ばない?
元帥閣下は邪教徒だったのだろうか?
ジリアント伯爵は、領主本人が参加している他の3人へ視線を移した。
クリトン辺境伯は、元帥閣下を信頼しているようで、頷いていた。
他の2人は、現状を呑み込めていない様子だ。
それから、各領を代表する指揮官と国軍の代表2人を見た。
国軍の代表は、元帥閣下の信奉者だ。彼らが意見することは期待出来ない。
この場で、諫める発言が出来るのは年齢から見ても私だけのようだ。
仕方がない、声を上げるしかないか。
「今回、聖女様はお越しにならないと言うのは本当か?聖騎士もいないようだ。今までそのような戦いはなかったはずだ。」
それを聞いた他の代表たちも頷いてくれた。
「今回、教会から聖女と聖騎士の派遣はありません。私の代行として現場で指揮を執る将トリアシードより説明する。」
元帥閣下は、控えていたトリアシード卿へ視線を向けた。
それを受け、今回大将を務めるトリアシード卿が立った。
「リハルド・トリアシードです。実務面について、些末なところからご説明します。」
些末だと!?
最も重要な部分だろう?
聖女や聖騎士のことを些末とはなんと尊大な。
声を上げようとするが、トリアシード卿が言葉を続けた。
「各部隊が駐屯する川には清草を植えてあります。清草より川下は清水となっておりますので、戦闘後は必ず身を清めてください。」
「植えた?」
思わず話の途中に問いかけてしまった。
マナー違反だが、それほどに重大な話だった。
清草は、自然発生するもので貴重な薬草だ。
周囲の魔を吸収して育つとも言われているが、
人の手でどうこう出来るなど聞いたことがなかった。
それを人の手で植えつけて、清水に変えた?
それが本当であれば、元帥閣下はとんでもなく大掛かりな施策を行われたことになる。
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