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ルーシーから見て楓花は、見慣れない髪色と瞳を持つご婦人だった。
ガードは高度な魔法だ。それを展開しているなら相当に高位の魔導士だろう。
おそらく30代と思われる落ち着きがあった。特徴的な見た目なのに該当する大魔導士に心当たりはない。
魔導車の持ち主であり、人の良さそうな顔をしていた。
魔導士はほとんどの場合かなりの偏屈だ。
そして、魔法しか使えない魔術師の事は見下す。
だから、声をかけるのに少しだけ躊躇した。
でも、勇気を出してガード内に入れてほしいと頼んだだけなのに、2人の治療までしてくれた。
フーカさんの持ち物はどれも見慣れない物だったが、大きな瓶を取り出し、傷口にかけた時には驚いた。
「ポーションの大きさには驚いたけど、それ以上に大量にかけるから声も出せなかったわ。」
「それは俺も…あんなに豪快にかける人は初めてみた。」
「うん、あれはすごかった。つい手を伸ばしたけど、固まってしまったよ。」
「お湯を入れながらかけていたのはなんでだろう?」
「さあな?」
「大量にかけるわ、かけたそばから傷口が小さくなるわで…」
「うん、あんな治り方するのは初めてみた。」
「かなりいいポーションだろうな…。」
「それに綺麗な布を当ててくれたし」
「ああ、見慣れない袋から取り出したね。」
「うん…包帯も綺麗だった。2人の顔色もあっという間に赤味がさして安心したもの…」
「この部屋もそうだけど…夢を見ているみたいだ。」
「そうだな」
「そうね」
「俺たちが魔の森で迷ってもう1週間になる。手持ちの食糧ももう少ないから手詰まりだった。2人の怪我はもう絶体絶命だったはずだ。」
「うん…そうだね…」
「それがどうだ?ブラックベアーが手に入り、治療してくれる医者でもある魔導士に出会えた。これは奇跡だ。」
「うん…」
「それに、あのシャワーとかいう物もすごい。温かいお湯で頭も体も洗えたし、洗ったら汚れが綺麗に落ちて臭いもしない。」
「うん、髪もサラサラになったわ。」
「お湯が出たおかげで2人の体も拭けた。」
「うん…」
「私だけかもしれないが…」
「ん?」
「うん?」
「ガードに入ってからも思ったのだが…ここに入ってからさらに癒されている気がする。」
アーサーの言葉に、ルーシーが同調した。
「うん…私、ここに入ってから寝てもいないのに魔力が回復してきた。」
ルーシーの言葉に、ケントとアーサーは目を開いた。
魔術師の魔力は、眠って回復させるか、魔力ポーションを飲むか、魔力草を食べるしかない。残り僅かにしてしまうと全回復には3日かかるといわれている。そのため、魔術師は魔法を使うのに慎重になる。
それが自然に早く回復するのは、ダンジョンの回復の泉の周辺くらいのものだ。
「ここは回復の泉と同じ効果があるのか?」
「そうみたいね。」
「いわれてみると確かに…小さな傷が消えている。」
「そうなの?あら、本当だわ。」
アーサーは今朝枝を引っかけて顔に傷ができていた。それが綺麗に消えていた。
「豪華な料理に、回復の泉の効果か…渡した金では全く足りていないな…。」
「私たちの手持ちっていくらだったの?」
「大金貨1枚と金貨5枚に大銀貨10数枚と銀貨に銅貨だ。」
「それは治療費にもならないわね。」
「そうだろう?」
「宿代も、1人当たり大銀貨1枚でいいなんて言っていたが…」
「ここの設備とこの扱いでそれは格安すぎるわ。」
「きっと、遠慮させないためだろうな…」
「そうね。そうじゃないとおかしいもの。」
「せめて、明日早く起きてブラックベアーを解体して、受け取ってくれるだけの肉を渡そう。俺たちは残りで干し肉を作らないと帰ることもできない。」
「そうね、そうしましょう。寝る前に2人の様子を見て、濡れタオルを当ててやってから私たちも寝ましょう。」
「そうだな」
ルーシーは、寝る前に2人の様子を見に行く。ハナが意識を取り戻していた。
「ハナ、目が覚めたのね。」
「うん…ここどこ?宿?」
「今日は特別に魔導車に泊めてもらえたの。」
「魔導車?」
ハナはぼんやりとしていた。うつ伏せ寝だから、顔は見づらい。近づいてみると、顔色はよかった。ハナが動いたので、背中の傷をかばいつつ、手をついて起き上がるのを見守った。
「座れるなら、湯冷ましを飲める?」
「うん、のど乾いた。」
ハナはごくごくと飲み干してしまう。
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