13
楓花は2階に迎えた客たちに食事を提供する。
「うわぁ…すごい…」
「あと、これはこっちがスープでこっちはお茶のパックです。スープはここから開けてカップに入れてお湯を注いでください。お茶は、カップに入れてお湯を入れたら少しおいて揺らしてください。」
「はぁ…」
「あと、これはサンドイッチです。寝ているお二人の目が覚めたら食べてもらってください。」
「すいません、こんなに用意してくれて助かります。」
「いえ、今から寝ているお二人を診てもいいですか?」
「もちろんです。お願いします。」
楓花は、寝ている2人の体温を測り、熱が出ていることを確認した。
発熱は、体内に入った細菌やウイルスと戦っている証だ。
だけど…脳にはよくない。
楓花はサンドイッチにのせてある保冷剤を外して、頭に当たるように枕と頭の間に差し込んだ。
そうだ自分のバックに解熱剤は入っていたはず。
いや、だめか…この世界の人には強すぎるかもしれないし弱すぎるかもしれない。
物理的な対処療法でどうにかなるようならその方がいいだろう。
いや、でも抗生物質は飲んだ方がいい?
それも合わないと大変なことになるかとあきらめる。
傷口に抗生物質は塗ってしまったけど、それはもうやってしまったから仕方がない。
飲むのとは違うから、強い反応は出にくいはず…たぶん…きっと…少し不安になってきた。
「私に出来る事ある?」
ルーシーさんが聞いてくれた。
「そうですね…今、冷やすものを頭の下へ入れたので熱が続くようなら濡らした布を頭に乗せてください。」
「濡らした布?わかりました。」
「それと…目が覚めたら、白湯を飲んでもらうのと…食べられるようなら食べてもらってください。」
「それは任せて。」
「では、私は戻りますので、明日の朝また来ますね。」
「うん、わかった。ありがとうとても助かります。」
「では、また明日。ゆっくり休んでください。」
挨拶をして、楓花は梯子を下りた。
見送ったルーシーは手を組んで目を閉じた。
祈りを捧げるような素振りだ。
「どうした?」
「もうっ…ケントもアーサーも…」
「そんなことより料理を食べよう。魚料理と肉料理だった。それに籠にパンが入っているらしい。」
「そうね、とりあえず食べよう。」
ルーシーは、先ほどの料理がマジックバックから出てきたのは見ていた。
ケントも見ていたはずだ。
籠に入っていたパンは見たことのない四角い形をしていた。2か所に焼き色があるので、大きな四角い物を4つに切り分けたらしい。
取り皿に魚と肉を取りわけ、パンも手にする。
ここ数日、干し肉だけで過ごしていたのでお腹が空いていた。
頭もぼーっとしていた。
それでも干し肉の残りが少なくて、肉体的にも精神的にも限界だった。今の状況は夢でも見ているみたいだ。
パンを一口食べる。外はカリッとしているのに中はふわふわだった。
「なにこれ、美味しい。」
「サクサクふわふわだな…」
「甘い…」
「これパンだけで食べられるわ。」
「スープはいらないな…というかないな…」
「あっスープあるわ。」
ルーシーは説明されていた細長いスティックを教わった通りに開けて、中の粉をカップに入れてからお湯を注いだ。それだけで金色のスープが出来上がった。
粉にお湯を入れて出来上がったスープ。
ルーシーは恐る恐る口を付けると、信じられないほど深みのある味がしていた。少し濃いのでお湯を足した。
「はぁ!?お湯を入れただけでスープになるのか?」
「そうみたいね。」
「こっちは?」
「もう一つはお茶だって」
「茶ぁ!?さっきのか?」
3人で今作ったスープを見る。
「それを3人で分けよう。」
「そうね。」
「そうだな。」
スープを3人で分けた。
スティックの粉にお湯を注げばいいのなら、またあとで飲みたい。
今は十分な食べ物があるから、スープがなくても構わない。
「スープって言うものは、パンを食べるためにあるだろうに…」
「このパンにはいらないわね。」
「うん、いらない。もったいない。」
「この魚…トラウトだよな?」
「そのようだ。」
「高級魚ね。」
「ここで採れるのだろ?」
「釣れる?」
「いや、俺は無理だ。」
「私も無理だろうな。」
「私も釣れる気がしないわ。」
「トラウトなんて、そう簡単に釣れないだろ?」
「でも、2匹も出してくれている。」
「そうだな…。」
「この肉は、さっき捌いたウサギだな。」
「きれいな焼き目だ…それにとっても塩が効いていておいしい。」
「これコショウも使っているわ。」
「コショウ?まじ?」
「うん、使っている。すごくいい香りで美味しい。」
3人で料理2皿を食べ終えてしまった。
「野菜も新鮮でおいしかったね。」
「見慣れなかったけどね。」
「うん、見慣れない物だったけど苦くなかった。」
「そうね。」
「苦くない野菜ならうまいって思った。」
「私も、これなら食べられる。」
「フーカさん、腕のいい医者なだけでなく、料理の腕もあるのか…」
アーサーがしみじみと言う。それにルーシーが返した。
「でも、お医者様に見てもらってって言っていたね。」
「そうだな。フーカさん以上の腕の医者なんていないだろうに…。」
ルーシーは、得意な魔法であるアイスジャベリンを使ってしまい、魔力は尽きていた。
防御魔法も使えなくはないけれど、ブラックベアーに対抗できるほどではなかった。
ハナとテンが、ブラックベアーにやられたときには焦ったし、もうダメだと思った。けれど、仕留めた時にはこれで美味しい肉が食べられると思ってしまった。
でも、怪我をした2人はかなりの重症で助けられないかもしれない。そう思った時にこのガードに気が付いた。
ガードの内側にいたのは、見慣れない髪色と瞳を持つご婦人だった。
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